クジラが先か蛇口が先か 226【優先席】
優先席で眠る泥酔客だけを乗せた列車の扉が閉まる/蛇口ひろこ
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【優先席】
こころにも優先席がひとつある ちょっと座って休んでいけば?/藤田美香
※ひろこさん、次は「ちょっと」でお願いします。
■ひろこさんの短歌
優先席で眠る泥酔客だけを乗せた列車の扉が閉まる/蛇口ひろこ
普通に印象の良くない景、よね。
※個人的な「普通」ですのであしからず。
・酔っ払いが優先席で寝てる、最悪、非常識、見た目も動作も美しくない
・酔っ払い「だけ」が乗っている状況ってどんな?
・最終電車?これから車庫に向かう?
・だとしたら客がまだいるのを確認していない乗務員の怠惰
・車庫に行かないのだとすれば、この景はリアリティに欠けるかも
・いや、相当田舎の電車の可能性ある
・別にリアリティに拘らなくてもいいのか
等々、私の心の声を列記してみたけど、結局のところ、
私には優しさあふれる歌としてぐっときたんよね。
上記のすべての逆説に取れた、というと伝わる?
この「非常識な状況」と「嫌悪感」のどちらもを、「扉が閉まる」ことですべて受け入れている、包容力を感じてしまったのよ。列車そのものの、意思を感じるというか。そうなるとファンタジーなんだけど、もうファンタジーで良くないですか。良いと思う。(自己完結)
それで、泥酔客を乗せてどこに行くんだろうとかね、どこにも行かないんだろうかとかね、泥酔客の見る夢の話、とかね。
そんなことを永遠に考えていられる、とても好きな短歌でした。
私、短歌は31文字の長編小説であれと思っています。
「詩」という形式である以上、31文字で終わったらだめだと思ってる。
31文字で終わると「だから?」「それで?」になっちゃう。それは詩ではない。なんてことをわりと本気で思ってる。
31文字のその先の「景」
31文字に書かれなかった「景」
31文字でそこに描かれた「景」
短歌って一首でそういうことぜんぶできちゃう詩形だと思うんよ。
今回のひろこさんの短歌は、そういう短歌だと感じました。
だから、好き。大好き、この歌。
苦し紛れで、とひろこさんは言ったけど、私はすばらしいと思う。
私もそういう短歌を目指したい。てか、目指してるんだけどねいつも。
難しいんだよね、つい、思いを詰め込みすぎちゃってさ。
【211.布団→212.込→213.メモ→214.生→215.忘→216.日曜→217.隣→218.冷蔵庫→219.人参→220.彩→221.音→222.牡丹→223.座敷→224.仁王立ち→225.泥酔→226.優先席】
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