広報よりも狭報?小さく試すを繰り返し、芽吹いた新しい広報の種。クラシコム広報4年目の記録
こんにちは。クラシコム広報の馬居(うまい)です。今年も終わりが近づき、今年一年の活動を記録しておきたいと思います。
上場をきっかけに立ち上がったクラシコムの広報チームも、気づけば4年目です。
今年は色々と変わる環境の中で、通常の広報活動に加えて、新たな広報の可能性が生まれそうな、さまざまな「種」を植えた一年だったように思います。あれこれ植えてきましたが、今年のうちにすこし芽生えたものを中心に記録しておこうと思います。

私たちにとっても、もはや「3人目」のチームメイトです。
(1)ポッドキャストと文学フリマで、「狭報」へのチャレンジ
今年の広報チームが大きく関わったことのひとつは、代表・青木が中心となり行った活動、ポッドキャスト番組「考えすぎフラグメンツ」と文学フリマへの参加です。
この二つのチャレンジに至った背景には、クラシコムを取り巻く「認知」に変化が起きているのではないか、と感じる場面が増えてきたことがありました。
広報を始めた当初、多くの方にとってクラシコムは、そもそも知られていない存在であるか、あるいは知っていたとしても「北欧、暮らしの道具店」に紐づく、ふんわりと優しいイメージで捉えられていたように思います。一方で私たち自身には、もう少しソリッドにビジネスを追求しているという自己認識がありました。
そこで広報活動では、そのギャップを埋めるために、さまざまな角度から自己紹介をするようにプレスリリースを発信し、多くのメディアで私たちのビジネスについて取り上げていただく機会を重ねてきました。

ただ、その一方で、私たちの変化や成長が過剰に認知されることで、変わらずに持ち続けている価値観や、実際の私たちの姿とのあいだに乖離が生まれつつあるのではないか、というシグナルも、さまざまな場面で感じられるようになってきました。
いま私たちに必要なのは、広く認知を高めるための「広報」だけではないのかもしれません。むしろ、小さな範囲でもいいから、自分たちの声で直接、等身大の自分たちをきちんと伝えていく「狭報」が必要なのではないか。
そんな思いをもちはじめていた頃にチャレンジしたのが、代表の青木がパーソナリティーとなるポッドキャスト「考えすぎフラグメンツ」でした。

制作をお願いしているツドイ代表の今井さんとともに、世間では当たり前とされていることをあえて「考えすぎてみる」。そんな、普段の青木の思考そのものが投影されたようなテーマで、青木自身の声を直接届けるポッドキャストです。
私たち広報チームは、一昨年に新卒採用向けポッドキャストを制作した経験も活かして、配信や告知をサポートし、2025年4月にスタートしました。
当初はまだ、やる意義もうまく説明できず、「でもいい匂いはする。どうにもならなかったら、そっと閉じよう」くらいの軽い気持ちで始めた番組でしたが……。
なんと配信開始から1週間で、Apple Podcastのビジネスカテゴリ1位に。さらにその後も数字を伸ばし、登録者数はまもなく1万人に届こうとしています。先日は、Apple Podcastが選ぶ「2025年のベスト番組」トップ10にも選ばれてしまいました。
applepodcatの2025ベスト10に選出されました!うれしい!
— 青木耕平/クラシコム (@kohei_a) November 19, 2025
オーバーシンカーの皆さんがたくさん聞いてくださったおかげです!ありがとうございます! pic.twitter.com/1MJp3BKjFN
11月の終わりには、番組として初めての公開収録をツドイさんが企画してくださり開催へ。実際に会場で、とても熱心に耳を傾けてくださるリスナーの方々と向き合いながら、「本当にこの番組を大切に聞いてくださっている人がいるんだ……」と、嬉しくもふわふわとしたどこか不思議な感覚に包まれていました。

そしてもう一つの「狭報」のチャレンジは、11月の文学フリマへの出店です。
青木がNewPicks編集者の中島さんに伴走いただきながら進めてきた書籍、そして元編集者のクラシコムスタッフとともに制作したZINEの2冊を完成させ、一般の書店流通ではなく、文学作品の展示即売会「文学フリマ」で販売してみることになったのです。
商業出版ではないので、棚の並びもジャンルも気にせず、ただ純粋に青木やクラシコムの考え方がぎゅっと詰め込まれた2冊です。
こちらも当初は青木が中心となり、何かいい匂いがするんだよなぁくらいの感じではじめたこと。
当日は、数人でも来てくれるといいな…と思っていると…


なんと持ち込んだ各100冊、合計200冊がほぼ売り切れるという状況に。中にはポッドキャストを聞いて遠方からこのために来てくださった方まで。途切れることなく青木のブースに訪れてくださるお客さまの熱量にただただ驚く一日となりました。

開始から終わりまで、多くの方が途切れることなく訪れてくださいました。
ポッドキャストも文学フリマも、私たちの想像を超えて、「北欧、暮らしの道具店」のお客さまとはまた違うかたちで、青木やクラシコムそのものに興味を持ってくださる方と、直接つながることのできる大切な場所になったと感じています。
まだ、この取り組みが今後どのような展開につながっていくのかは正直わかりません。ただこれからの広報にとって欠かせない力になっていくのではないか、そんな手応えを感じています。
来年もこの「狭報」については考えを深めていきたいなと思っています。
▼書籍はバリューブックスにて販売中
▼文学フリマや狭報については、青木が内沼晋太郎さんのポッドキャストで詳しくお話しています。
(2)パーソナルメディアリレーションシップ
昨年の秋から今年にかけて、広報チームがもうひとつ模索していたのが、個人で発信力を持つ方々との関係づくり──私たちが「パーソナルメディアリレーションシップ」と呼んでいる取り組みです。
これまで私たちは、テレビや雑誌、新聞等の既存メディアの方々とコツコツと信頼関係を築いてきましたが、それと同じように、個人や小さなチームで強い発信をされている方々とも良い関係を構築したいと感じていました。
その思いから、クラシコムに共感してくださるパーソナルメディアを運営する方々をオフィスにお招きして想いをお話ししたり、SNSアカウントのフォロワーさんの中からフォロワー数の多い方を何千件もAIと共にひたすら分析をしたり……まずは「知ること」を積み重ね、得られた気づきを青木や役員に共有し続けました。

Instagramについて知見を共有した交流会。
その結実のひとつとして生まれたチャレンジがこちらです。BRAND SOLUTIONチームにバトンを渡し、私たちの商材(pomonaシリーズ)をご紹介いただくタイアップ企画を実施しました。


さらにBRAND SOLUTIONでは、私たち広報のつながりではありませんが、SNSを軸に発信されているCiiKさんが運営する料理アカウント「それでも、美味いもん。」のエージェンシーという新たなビジネスを開拓し始めました。

広報という領域に限らず、こうした発信者の方々との関係は、これからのクラシコムにとって欠かせない力になっていくのかもしれないと感じた一年でした。
(3)史上最多の「登壇」数、「私」から「私たち」の発信へ
もうひとつ今年大きく変化したのが、「登壇」です。
これまでは、登壇のご依頼はほとんど創業者の青木・佐藤に集中していましたが、ふたりのリソースの都合からお断りすることがほとんどでした。
しかし、流れが少しずつ動き始めたのが昨年頃。役員や各分野の責任者にも依頼が届くようになり、これならば対応ができるのでは、と少しずつお受けできるようになってきました。
そして、ちょうどそのタイミングで、私自身にもいくつか取材や登壇のご依頼をいただきました。これまでなら躊躇していたような場も、「まずは自分が体験してみて、みんなにとって発信しやすい環境をつくりたい」という思いから、今年はすべて受けさせていただきました。
登壇は準備も含めてかなりのエネルギーを使います。ですが、“アウェイ”な環境で自分たちのことを語る経験は、想像以上に大きなインプットと自信になり、人とのつながりも広がっていきました。
その手応えや経営陣からも後押しがあり、スタッフにとって良い経験になりそうな取材や登壇は積極的にお受けするという方針に。
今年はクラシコム史上もっとも多い登壇回数となりました。また、広報が窓口にならずとも、各所で「登壇の依頼をもらった」「取材を受けたいんだけどどうだろう?」と各スタッフのつながりでの機会も少しずつですが増えています。


コンテンツ開発グループの二人が参加。

アプリマーケティング研究所さんの取材は、マーケティングチームの3名がお受けしました。
今年の変化が表したのは、創業者ふたりの動機で始まったクラシコムが、19年経ち、今ではそれぞれに違う動機を持つスタッフたちと融合しながら、でも同じ方向へ進んでいるということ。
その“組織としての強さ”や“おもしろさ”が伝わることで、より広い範囲でクラシコムのビジネスにより実感を伴った興味を持ってもらえる様になったと感じています。
残業を当たり前にしない文化の私たちにとって、通常業務の外で登壇準備を行うことは簡単ではありません。すべての依頼にお応えできるわけではありませんが、この「私」から「私たち」への発信の広がりは、来年も広報として大切に育てていきたいポイントです。
(4)「誰でもクラシコムを説明できるように」道具となる冊子を
今年の北欧、暮らしの道具店では、ARABIA、Noritake、アーバンリサーチの「かぐれ」など、名だたるブランドとのコラボレーションが大きな成果を生みました。広報チームが主導したArtekさんとのトークイベントも、たくさんの温かい反響をいただきました。

お招きしてトークショーを開催しました。
尊敬するブランドとコラボレーションするということは、そのブランドが歩んできた歴史やフィロソフィーを、お客さまにご紹介することでもあります。一方で、そこに至るまでには、私たち自身が「私たちは何者なのか」を、そのブランドの方々にきちんと伝える必要があります。
そうした点に難しさを感じている、という声がコラボレーション担当から寄せられたことに加え、先に触れたように、創業者ふたりだけでなく、スタッフ一人ひとりが外に出ていく機会も増えてきました。
そこで、広報チームとコーポレートクリエイティブ室が協力し、はじめてとなる会社案内の冊子を制作することにしました。

広報を始めて4年。制作を進めながら、あれほど言葉で説明することが難しかった私たちのビジネスも、コツコツと言葉にしてきたことで、ようやくクラシコムの“自己紹介”が形になったような気持ちになりました。
制作過程では、青木から「たとえ一年に一度でも、スタッフの誰かが、これを持っていることで、少しでも自信を持って外に出ていけるものにしたいよね」と声をかけられ、本当にその通りだなと思いました。

創業19年目にしてはじめての会社案内です。
この冊子が、スタッフにとってだけでなく、私たちを社内外に紹介してくださる外部パートナーの方々にとっても、クラシコムを説明するための「道具」として、気軽に、そして便利に活用してもらえるものになればと思っています。

(5)海外への小さな一歩…のつもりが、大きな反響に
もうひとつ、私たちが今年、空いた時間で取り組んでいたのが“海外”に関する調査でした。
さまざまな検討を経て最終的に落ち着いたのは、
「広報2人でも無理なくできる範囲で、小さくInstagramを始めてみる」
というものでした。
というのも、実は、数年前から「北欧、暮らしの道具店」のXとThreadsは広報チームが担当しています。また、昨年には広報が主体となり、コーポレートのInstagramも立ち上げ、運用をしていました。
そのノウハウと、AIやマーケチームの力も借りながら、まずはそっと海外向けInstagramをスタートしてみることにしたのです。
いつものように、だめならすぐ閉じようとそっと始めたのですが__
8月に開始した英語圏、台湾、韓国向けアカウントは、数カ月後には30万を超えるフォロワー数に。

まずは良きシグナルとして株主のみなさまにもご報告しました。
正直、私たちも思いがけない成長スピードに驚いています。
このInstagramからの売上はまだまだ微々たるもので、大きくアナウンスする段階ではありませんが、学びは非常に大きく、来年以降への大きな可能性を感じる結果となりました。
来年の広報は、 「ネオ広報」誕生?
クラシコムのCTO(技術責任者)である倉貫さんは、クラシコムのエンジニア組織を「ネオ内製」と呼びます。それは、社内チームと外部チームが深く連携し、まるで外部の方が“社内の一員”のように働く、新しい協働のあり方です。
2025年を振り返った「社史」のなかで、青木もこう話しています。
「この1〜2年で、クラシコムの社員という枠の外側に、協力パートナーというもう一つの境界線ができてきた感じがあるんです。みんながクラシコムのやり方を理解してくれていて、そのやり方で一緒に仕事をすることを厭わない方たちの存在があり、いつでも連携できる関係が築けています」

広報においても同じです。まるでスタッフと同じように、クラシコムの本質を理解し、歴史を知り、文化に共感してくれる方々が、私たちのまわりにはたくさんいらっしゃる。
経営者に共感してくださる方
パーソナルメディアの方々
外部パートナー
そして海外に生まれた新しいつながり
今年は、こうした方々がそれぞれの言葉でクラシコムを紹介してくださる未来に向けて、その“土台”が静かに形づくられた一年だったように思います。
そして、そのチャレンジに挑めたのは、まずは小さく試すということ、そしてチームで「できること」を増やすという姿勢を続けてきたからこそ。その積み重ねが、環境の変化に対応し、新たな道筋を作っていく。
来年も、一歩一歩、引き続きメディアリレーションを真摯に行いながらも、新たな仲間を増やしていく広報を想像力豊かに開拓し続けていきたいと思います。
今年もさまざまな形でクラシコムに触れてくださり、本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします!
▼今年は北欧、暮らしの道具店でも私たちのインタビューが公開されました。
