第2章 魔法王国フォーレスト 第12節
森の奥に、石造りの門があった。
いつからそこにあったのかは分からない。
木々の隙間を抜けた先に、自然に現れたように見える。苔むした門柱は、森と同じ静けさをまとっていた。
門番の姿はない。
ゼラスが、迷いなく前に出る。
一定の距離まで近づいた、その瞬間――
低い音とともに、門の片側がわずかに開いた。
風が抜ける。
森の空気とは違う、乾いた匂いが流れ出る。
クレフも続こうとする。
だが、一歩目で足が止まった。
地面が沈むわけでもない。
見えない壁があるわけでもない。
それでも、足の裏が重い。
進もうとすればするほど、身体の奥から拒まれる。無理に踏み込めば、転びそうな不安定さが走る。
ゼラスは、振り返った。
状況を理解した目だった。
「……なるほどな」
それだけ言うと、門をくぐる。
その瞬間、門の隙間がわずかに狭まった。
ほんの僅かだが、クレフの前の空気はさらに重くなる。
セリザがクレフの腕を掴んだ。
「無理しないで」
低い声だった。
「……今は、通れない」
諦めではない。判断だった。
門は完全には閉じない。
ゼラスの姿も、まだ向こうに見えている。
だが、その距離は、もう簡単には縮まらない。
フォーレストは何も語らない。
拒絶したわけではない。
歓迎したわけでもない。
ただ、通す者を通し、
留める者を留める。
差は、明確だった。
クレフは拳を握る。
置いていかれたのではない。
だが、同じ場所には立てない。
門の向こうで、ゼラスがこちらを一度だけ見た。
その視線は、遠くない。
それでも、すでに別の段階に立っている者の目だった。
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