第2章 魔法王国フォーレスト 第16節 絶対命令
石の回廊は、外よりも温度が低かった。
音が吸い込まれる。
足音さえ、遠慮がちに響く。
クリスは迷いなく奥へ進む。
その背中を、セリザが半歩の距離で追う。
クレフは二人の間に置かれる形になった。
やがて、重厚な扉が見える。
飾りは控えめ。
だが、その前に立つ兵の気配だけが違う。
動かない。
揺れない。
クリスが足を止めた。
兵の一人が、静かに告げる。
「申し訳ございません。現在、謁見はお取り次ぎできません」
「……理由は?」
「女王陛下の絶対命令です」
空気が、わずかに張る。
先ほどの内門とは違う。
これは形式ではない。
命令だ。
セリザが問う。
「女王は中に?」
「はい。ですが、どなたも通すなと」
どなたも。
言葉が落ちる。
クリスは一瞬だけ視線を伏せ、すぐに扉を見る。
驚きはない。
セリザが低く言った。
「……私達と同じ扱い、ですか」
兵は答えない。
だが否定もしない。
沈黙が肯定になる。
クリスの口元がわずかに上がる。
「察しがいいわね、姉様」
セリザは反応しない。
「母上は今、大事な客人と話してるの」
軽い声音。
だが、わずかな緊張が混じる。
「だから今日は無理。順番が違うだけ」
拒絶ではない。
ただ、今ではない。
クレフは閉ざされた扉を見る。
城は静かだ。
外門も、内門も、ここも。
追い返されているわけではない。
だが、踏み込ませない距離がある。
フォーレストは閉じない。
だが、すべてを同時には開かない。
クリスが踵を返す。
「場所を変えるわ。こっち」
三人は扉から距離を取る。
閉ざされたままの謁見の間は、何も語らない。
だが、その沈黙こそが答えだった。
ここからが、本当の入国だ。
——第17節へ続く。
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