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第4章 英雄誕生 ― 人魔大戦 ― 第4節 コンビネーション

【砦の北の森】

僕はラクドウさんとマウイを連れて森に到着した。

まだ魔人たちはここまで来ていない。間に合ったようだ。

僕たちは茂みに身を潜めてじっと待つ。

ラクドウ「いいか、奴が来たら不意を突いて『クロスブレイド』を仕掛ける。いいな!」

マウイ「うん!」

クレフ「わかりました」

『クロスブレイド』……とはいうのは、森に着く前に事前に打ち合わせがあったのだ。

【3時間前 岩北部の平原】

ラクドウ「よし! 俺が一案を立ててやろう」

クレフ「策……ですか?」

ラクドウ「そうだ。何もかもお前さんに期待するのは不公平なんでな」

クレフ「はぁ……」

ラクドウ「なんだ? その『俺が策なんて似合わない』って感じの顔は?」

クレフ「い、いえ! そんなことは決してないですよ!」

マウイ「兄ちゃん、それ否定してないよ……」

ラクドウ「まぁいい。策と言うより戦術なんだがな。魔人の体は固いことは知ってるだろう?」

クレフ「はい、普通の攻撃ではビクともしないです」

ラクドウ「だがあらゆる物質は一度受けた衝撃を押し返そうとする反動を起こす直前はかなり脆くなる。そこを狙うんだ」

クレフ「反動を起こす直前って……」

ラクドウ「もちろんそれは一瞬の話だ。だが今のところあの魔人に手傷を負わせる方法は見出せていないし、実証もできていない」

マウイ「なんだ、それじゃダメなんじゃん」

ラクドウ「小僧、話は最後まで聞け。それを実証する方法なんだがな。コンビネーション技を駆使すれば可能と考えている」

クレフ「コンビネーション……ですか?」

ラクドウ「そうだ。その名の通り数人が一体となって繰り出す技だ。その技のうちで初歩的な技が『クロスブレイド』だ」

クレフ「『クロスブレイド』……」

ラクドウ「片方が対象に対して斜めに切り抜けると同時にすかさずもう片方がたすき掛けに斜めに切り抜ける。その名の通りクロスさせるわけだな」

マウイ「へぇ〜、なんかカッコよさそうだね」

ラクドウ「……その顔、もう悟ったようだな」

クレフ「はい……」

ラクドウ「察しの通り、普通なら最初の一撃から1テンポ遅れて炸裂しても成立する技なんだがな。さっきも言った通り一撃目にある反動を起こす瞬間までに二撃目を炸裂しなければならない。少しでもタイミングがずれればただの二段攻撃で終わるし、早すぎれば相打ち、最悪の場合切ってしまう可能性もある。コンビネーション技の最大のリスクだな。それに魔人相手となると弾かれずに切り抜けるように技術も必要となるだろう」

想像通りの話だった。簡単な話ではない。

ラクドウ「聞いての通り、リスクは大きいし訓練も必要だろうがそんな時間もない。無理に勧めないが、これしか手はないと思うぞ」

クレフ「……」

普通なら、採用しない手だろう。

マウイ「クレフ兄ちゃん……」

クレフ「やります! やらせてください!」

ラクドウ「ふっ。いい面構えだ」

ラクドウは僕の肩を叩いた。

ラクドウ「恐らく、俺の方がスピードが遅いから一撃目は俺がやる。お前はそれに合わせてやるんだ」

クレフ「はい!」

ラクドウ「よし、試しにあの木を標的にやってみよう。行くぞ!」

……

【現在 砦の北の森】

結局、試しにやった時はタイミングが合わず全て二段攻撃になり1度も成功しなかった。当然の結果だ。聞いていきなりできる芸当じゃない。時間の都合上、後はぶっつけ本番ってことになったが……

しばらくして北方角から足音が聞こえてきた。重厚感ある足音だ。明らかに普通の人のものじゃない。

ラクドウ「おいでなすったな」

足音が近づくにつれ話し声も聞こえてくる。魔人が話しているのだ。

「しかしよぉ、ほんとにこっちに人間がいるのか? 兄弟? いなかったら無駄骨だぜ」

「そう言うな。暇つぶしに来てるだけだからよ。それにこっちは今まで探索してないからな。人間がいる可能性は高いと思うぞ、兄弟」

二つの人型を確認した。二人とも人間2人分はある身長と大きさ、姿も人と似てるが爪が長いし、肌の色も緑色。間違いなく魔人だ。だが声と口調は人間とそう変わらなかった。その点だけでもこれは普通の魔人と違う。真っすぐ前へ向かっている。会話の内容からしても砦が発見されたわけではないようだ。でも放置しておけば砦の発見は必至だろう。今叩くしかない。

魔人たちは目の前を通り過ぎていく。近くにいるせいか重圧感と似たような感触に捉われた。これが畏怖ということか。

そして僕が向いている反対側から石つぶてが飛んでくる。そしてそれは魔人の顔に直撃した!

「んっ? なんだ?」

「どうした? 兄弟?」

「何かが当たったみたいだ。確かこっちのほうから……」

魔人二人は僕たちと反対方向に向きを変えた。石つぶてはマウイの仕事だ。反対側に気を取られている間に不意を突き『クロスブレイド』を炸裂させる。シンプルだが、3人でできる策はこれしかなかった。でも成功しそうだ。

ラクドウ「いくぞ!」

クレフ「はい!」

ラクドウ「おおおおっ!」

ラクドウさんは大きな雄叫びと共に魔人たちに向かっていく。僕もそれに続いた。

「ん〜? 今度はなんだ?」

「何かいるな、気をつけろ兄弟」

そう聞いた瞬間、石をぶつけた魔人に対してラクドウさんの大剣の一太刀が炸裂した。僕も少し遅れて反対側から切りにかかる。ラクドウさんの剣は少し速度が遅い。このタイミングで良いはずだ。魔人たちは何も対応できていない。後は『クロスブレイド』が決まれば……

――第5節へ続く。

第4章 第4節「コンビネーション」。

ここでは、派手さよりも“理屈”と“覚悟”が描かれています。

魔人は固い。

正面突破は通じない。

だからこそ、信頼とタイミングに全てを賭ける。

ラクドウの現実的な判断。

クレフの迷いと決断。

マウイの役割。

三人でなければ成立しない戦術。

それが「クロスブレイド」。

成功か、失敗か。

答えは次節へ。

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