第2章 魔法王国フォーレスト 第15節 非公式の面会
外門では名を告げるだけで通された。
前庭を抜け、城の正面へ至る。白い石畳の先、内門は開かれている。だが、その前に立つ兵が静かに進路を塞いだ。
「こちらより先は、通達のある者のみとなります」
拒絶ではない。形式だ。
セリザが一歩進み出る。
「急ぎの用件です。取り次ぎを願います」
兵の目が、わずかに揺れる。
「……これは、セリザ様」
一瞬、姿勢が正される。
「ご来訪とは。ですが――通達は承っておりません」
「承知しています」
整った声が落ちる。
「それでも、城に伝える価値はあるはずです」
兵は動かない。
門は開いている。
だが、通らせない。
その均衡を、軽い声が崩した。
「どうしてそんなに規則的なの?」
正面階段の上から声が落ちる。
兵がはっと顔を上げる。
「……っ、クリス様!?」
回廊から姿を現し、階段を軽やかに降りてくる。
「臨機応変って言葉、習わなかった?」
視線が兵たちをなぞる。
「あなたたち」
一拍。
「責任は、私が持ちます。通しなさい」
沈黙。
兵は迷わない。
静かに一歩、脇へ退いた。
クリスは小さく息を吐く。
「……それで」
視線がセリザへ向く。
「お久しぶりね、セリザ姉様」
「その呼び方はおやめくださいと、何度もお伝えしているはずですが?」
「仕方ないじゃない」
肩をすくめる。
「養成学校では、みんなそう呼んでいたでしょう?」
「それは在学中の話です」
「今さら変えられないわ」
にやりと笑う。
「諦めて受け入れたら如何?」
視線が、ゆっくりとクレフに移る。
目が細まる。
「ふうん。あなたが、グランバルトの王子様?」
一拍。
「思ったより、静かね」
クレフは視線を逸らさない。
「うるさい方が、好みか?」
わずかな沈黙。
クリスの口元が上がる。
「……悪くないわ」
踵を返す。
「ついてきて」
ここからが、本当の入国だ。
二人は、その後を追った。
※ここまで読んでくださってありがとうございます。
王子と王女の静かな火花。
この国の“選別”がどう動くのか、続きが気になったらスキで教えていただけると嬉しいです。
