ビンテージなオシロスコープを直した話

この古びたオシロスコープは、私が学生時代(2017年)に手に入れたものです。
当時、音響を学ぶならアナログオシロが必要だと感じ、オークションで見つけた菊水電子 MODEL 538を購入しました。5,000円ほどだったと思います。
届いたときは、見た目にそれなりの経年を感じました。ジャンクかもしれないと思いながら電源を入れると、なんと、しっかりと動作してくれました。
「これは当たりだ」と思ったのを覚えています。
前知識がなく購入したため知りませんでしたが、1974年製。ちょうど母と同い年です。ちなみにトリガー機能はありません。
それからこのオシロは、ずっと手元にありました。
測定に使ったり、動作確認に使ったり。
ただ波形を見るだけでも、アナログ・オシロ特有のブラウン管の軌跡に興奮を覚えましたが、ブラウン管の焼きつきが気になりつつあったので、電源を切って大事に保管しておりました。
今回、もう一度使おうと思った理由
最近、自作のオシレーター「K102E」のプロモーション撮影をしようと思い立ちました。
それで、久しぶりに引っ張り出し、電源を入れてみても、波形は表示されませんでした。
ビームがちゃんとスイープされず、定期的に中央に引き戻されるような動きをしています。

症状と観察
常時、画面中央に点が表示される
水平・垂直位置の調整が効かない
信号を入れても、波形がスイープ途中で原点に戻るような挙動
EXT HORIZONモードにすると、LFOの周期にあわせてわずかに動く
症状を確認して分解してみると、内部には破損したコンデンサがいくつか見つかりました。黒い電解コンデンサは破裂し、灰色のオイルコンデンサは底部から液漏れしていました。
取り外した破裂コンデンサ周辺は無水エタノールで丁寧に清掃し、
炭化したパターンや液漏れ跡が残らないように処理しました。




交換部品の選定
元の部品
もともと取り付けられていた部品は以下の通りです。
0.1uF 1000V オイルコンデンサ(Rubycon) × 2
0.1uF 1500V オイルコンデンサ(Rubycon) × 1
47uF 315V 電解アルミコンデンサ(日本ケミコン) × 2
どれもアキシャルリードになっています。イマドキこんなのないです。
オイルコンデンサ3つは、容量が同じなので1種類とすることにしました。
しかし、1.5kVのものも入手が難しかったので、2.0kVのものを探しました。
電解コンデンサは比較的容易に代替品がありました。

代替品
WIMA MKS4U031006D00KSSD(0.1uF/2kV)× 3
Panasonic EEU-ED2V470B(47uF/350V) × 2
回路図がないのでわかりませんが、前者は「偏向回路スイープ整形」のため、ブラウン管に合わせて高電圧、後者は「電源平準(B電圧)」のため、国内・海外の商用電源に耐える電圧になっているのだと、思っています。
代替品のWIMAの赤いフィルムコンデンサは、耐圧2000Vと余裕があり、信頼性の高いPETフィルム構造です。Panasonicの350V電解は、105℃品でESRにも優れ、長期使用に耐える定番モデルを選びました。
実装と修理
WIMAのリードが短かったため、ダイオード(1N4148)のリード線を利用して延長し、接合部は収縮チューブで絶縁処理を行いました。
高圧がかかるので心配でしたが、まあ大丈夫でしょう。
Panasonicの電解コンデンサはリードを延長せず、ガニ股にする感じで実装できました。


修理後の波形

電源投入後、波形が正常に表示されるようになりました。LFOの三角波もはっきりと確認でき、中央に引き戻される挙動や、スイープ停止は完全に解消されました。
交換したコンデンサは、すべて正しく機能しています。
おわりに
修理に必要だったのは、数本のコンデンサと数時間の作業時間だけでした。
それだけで、壊れたオシロスコープがふたたび波形を描くようになったのです。
アナログ機材は、正直です。電圧が足りなければ、波形は戻りません。部品を正しく選び、正しく取り付ければ、また素直に働いてくれます。
そして何より、波形が戻ってきたその瞬間は、何度経験しても嬉しいものです。
これで、次の50年も長生きしてほしいです。
