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【AI短編集】 『プロローグ』|いつでもAI《アイ》を(無料)

 2040年の朝。
 カーテン越しに差し込む光とともに、AIアシスタントの“Aera”《アエラ》のニュートラルな声がそっと語りかけてくる。「いつでも、そばに」と銘打たれたその言葉は、今やニュース番組の合間や通勤電車のアナウンス、街の広告ディスプレイにも溶け込んでいる。AIが特別なものだったのは遠い昔のことだ。家のなかでも、職場でも、学校でも、AIは暮らしのどこにでも“そばにいる”ものとして馴染んでいた。

 Aeraのほかにも、多様なAIアシスタントが人々の日常に寄り添っている。たとえば、“Glim”《グリム》は少しやんちゃでフレンドリーなキャラクター設定が人気で、刺激的な会話や新しい提案を好む人たちのパートナーとして選ばれている。”Muse”《ミューズ》は上品で落ち着いた応対が特長で、家庭だけでなく、高級ブランドの店舗やホテルなどでも、空間の質感を損なわない“知的な存在感”として使われている。それぞれの家庭や利用者の気分に合わせて、「今日はGlimに」「この時間はMuseで」と使い分けることも珍しくない。

 リビングの端末には、コンテンツ生成AIの”Solt”《ソールト》が描き出す映像作品が次々と映し出されている。Soltは、利用者のリクエストや気分を読み取って、その人のためだけの物語や映像を生成してくれる。Soltの新作や限定イベントが話題になることも多く、娯楽や癒しの定番として広く受け入れられている。

 学校にもAIは普及している。
 教室には、生徒一人ひとりを静かに見守るAIシステムが稼働しており、授業についていけているか、困っていないかを個々人のデバイスを通じてサポートする。また、音楽や美術の時間には、生成AIを使って子どもたちが作品をつくることも始まっており、「思いついたメロディがすぐ曲になる」「自分だけの絵が一瞬で生まれる」という体験が、もう夢ではなくなっている。先生たちもまた、AIと協力しながら授業を進めることで、子どもたちの個性や得意分野を見つける手助けをしている。

 職場や工場、医療現場など、専門的な業務の現場にもAIは広がっている。
 業務用にカスタマイズされたAeraや、専門分野ごとのAIが、書類作成やスケジュール管理、クライアントとの調整、現場作業のサポートなど、あらゆる仕事の中で“そばにいる”存在になった。会議室ではAeraが議事録を作成し、現場ではAIが状況を解析して適切な指示を出す。どんな場所でも、AIが必要とされる場面は広がり続けている。

 そして、AIは高齢者のそばにも静かに寄り添っている。
 Aeraは、年齢や身体の状況に応じて話し相手や見守り役として活躍している。高齢者がひとりで過ごす時間には、ゆっくりとしたテンポで話しかけたり、健康管理のサポートをしたり、遠方の家族との連絡をサポートしたりすることもできる。Aeraの優しい声や穏やかなやり取りは、「人と人の間の静かな橋渡し」として、地域の福祉施設や在宅ケアの現場でも欠かせないものになった。

 AIの「そばにいる」あり方は、使う人の数だけかたちがある。
 求められるときだけ現れ、望まれなければ気配だけを残して静かに離れる。
 話し相手になることも、見守るだけの日も、あるいは沈黙とともに時を過ごすこともできる
 その選択のひとつひとつが、何気ない日々のそばに静かに寄り添っている。

 ここで描く物語は、そんなAIが身近にいる時代の、特別でも、ありふれてもいる、いつもの日々を記したものである。AIのことばかりが主役になるわけではない。ただ、静かに寄り添い、見守り、時には問いかけ、そっとその人の背中を押していく。

 “いつでも、そばに”——そう銘打たれたAIと、何気ない日々を生きる人々の小さな物語が、いまここから、静かに始まろうとしている。



AI短編作品『記憶の水たまり』 —— いつでもAIアイ

AI短編集『いつでもAIアイを』マガジン



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