優秀な人ほど、仕事が完了できないのかもしれない
最近、仕事が終わっても、深呼吸ができない。胸骨が開かない。
スーパーで夕飯の買い物をしてても、呼吸ができない。どんどん海におぼれていってしまうような感覚で苦しい。
過集中すると呼吸ができなくなるけど、集中する状況でもない。
仕事は結構うまくいっている方で、評価自体もいい方だと思う。
「あの人に任せたら確実に丁寧にやってくれる」が売りになって、任される仕事も増えている。けど、身体は逆の反応をしているようで、どんどん擦れている。
きっと、仕事頑張ってるのに、というか、それなりに仕事できているのに、なんか、どんどんすれて言っている感じがある人、結構いるんじゃないかなと思う。
確実に物事をこなしているのに、その物事・空間・瞬間がスーッと自分を通り抜けてしまって、何も残らない。私が作っているはずの空間なのに、私は透明人間になってしまったような感覚。
仕事が慣れないうちは、長時間労働や難易度の高い案件へのキャッチアップも含めると、土日含めて休みはなく、朝6時~夜3時働いている頃は、確実に疲れていた。そのせいで疲れていると思っていた。
だけど、仕事に慣れてきて、ある意味取捨選択できる状況にあっても、この疲労感?疲弊感は変わらず、むしろ呼吸は浅いまま。
たまたま高校受験に成功してしまった私は、高校以降、本当に優秀な人に恵まれて生きて来れた。自己卑下とかではなく、「もう本当に私ここにいてごめんなさい」と思ってしまうレベルの優秀な人。
彼らに感銘を受けるのは、ただただ学歴や成果のみならず、相手(仕事の受け取り手)のことをメリメリ考えて、その人は、どういう成果物を受け取ると喜ぶかを自動運転で研究してしまう部分。相手のちょっとした発言の8歩くらい先を考えて、本当に行動できちゃう部分。
世間一般の「優秀」の定義は、前者へのフォーカスが強まりがちだが、私はそのハードスキル面の優秀さを、本当に優秀たらしめられるのは、後者の要素がじつは非常に大きいのではと思う。両方の性質が最高レベルだから、私は、ハイブリッド優秀と呼んでいる。
元々ハードスキル面だけで戦おうとしていた私は、毎年現る奇才の新人を見れば見るほど、当時の職場が定義するスキルや能力では自分は限界だと薄々気づき、ハイブリッド優秀を目指す芸風チェンジをした。そこくらいから、徐々に認め始められてきたと同時に、冒頭の苦しさとの共存が始まった。良くも悪くもハイブリッド優秀の人たちの表のキラキラと深層の葛藤が分かるようになってしまった。
相手のことを考えられるハイブリッド優秀は、成果物だけを作っているわけではない。会議設定、資料作成、調査、会議中のふるまい・・すべてに相手への創造や配慮、工夫を載せている。受け手は必ずしも気づかないが、彼らにとては、それも含めて仕事である。
こういう人材は重宝されやすいため、どんどん仕事も増えてしまう。頼られるほど、さらに想像し、工夫し、気を配る、の繰り返し。
作業はいずれ終わる。納品も終わる。会議も終わる。それでも、呼吸がどんどん狭くなっていく。
結局誰でもできる作業という上積みの部分だけが、消費され続けて、それに乗せている工夫や思いを受け取られていないような感じがする。それまで、工夫をこなして自分の爪痕を残すことで、自分が時間の中心にいたのに、それが世に出て”消費”された途端、すべてが私をおいて過ぎ去ってく。なんだろう、胸がキュっとする。そう思った瞬間、また次の仕事が回ってくる。あぁ、息が回復しないまま、次の仕事か、と。
「本当にいつも丁寧に完遂してくれるね、ありがとう」は、嬉しい。ちょっとはだれかのためになれたのかと。でもその瞬間はもう終わり。
その渡したものの裏には、
「この部分は今後別の用途で利用できるように、柔軟にしておこう」
「このロジックはAさんが社内で説明しやすいように、丁寧に書いておこう」
「この俗人的な部分は、しっかりと言語化しておいてあげよう」
「この人は、きっとこの文を読みながら出所確認するだろうから、リンクも全部つけておこう」
「この人は、日本語の要約文の見ならず英語の原文も見るだろうから、日本語の説明と原文の表記を併記して原文も読みやすくしておこう」
という無数の工夫。この工夫の数だけで一つの町ができてしまうくらい。
でも、相手が成果物を受け取った瞬間、その町は消えてしまう。
確かに資料は届いた。でも、町は届かなかった。
この町の物語はいったいどこに消えてしまったんだろう?
そうやって、成果物は提出したが、タスクはクローズされたが、みぞおちあたりの何かが未消化のため、残ってしまう。そのままに、次の仕事が舞い込んでくる。すると、タスクではなく、未完了感が積みあがっていく。
ハイブリッド優秀は、相手のことを深くから想像できる。だから、自分がする仕事隅々に、志向、工夫、思いやりを埋め込む。そしてそれが届いたとき、はじめて仕事が完了する。
でも、もし相手に届くかどうかを仕事の完了条件にしているなら、私たちは永遠に仕事を終えられないかもしれない。
こういう人たちは、どんな時に仕事が完了できるのか。
どんな時に「おおおおおお!終わった!」と言えるようになるんだろう。
どんな時に「150%出し切ったァァ!」と言えるのか。
もっと別の完了条件が必要なんだろうか。
そして、その感覚はどこからやってくるんだろうか。
そもそも、私たちは本当に今の働き方の中で、それを感じられているんだろうか。呼吸を取り戻すことはできるのだろうか。
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