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彼と迎える誕生日は、いつも静かに雨が降る

今日で30歳になった。今日も昨日の延長で、気分が高まると小躍りし、知ってる曲が流れれば鼻歌がこぼれ、ふと心に浮かんだことがあればnoteに書く。
いつもと変わらない、穏やかな時間を過ごしている。

この穏やかさに拍車を掛けているのは、夜から降り続いている雨だ。リビングの窓から見える隣町の背の高いマンションの天辺は雲に埋もれていて、見上げた空は濃淡のないグレーで染まっている。降り注ぐ雨は十分に質量を持っているのが目に見えて、窓が纏う冷たい空気は布団の温もりを恋しくさせる。春が過ぎたことを忘れてしまいそうな天気につい目が奪われる。今日も雨だ。

他の記事で彼と付き合い始めてからよく雨が降る話をしたことがあるが、ただ書くだけでは説得力がない。折角なら、これを証明できないだろうか。そんなことを思い付いて、気象庁のホームページを開く。

仕事でいつも色んなデータを見ているが、やっぱりデータを見るのは楽しい。当時自分が住んでいた町の、31年間の5/1の降水量をスプレッドシートに書き込む。

気象庁のデータを見ていると、「--」と「0.0」の記載がある。この違いは何かと気になって、注釈を確認する。

--:当現象、または該当現象による量等がない場合。
0.0(mm):該当現象による量はあるが、0.1mmに足りない場合。ただし、降水量の場合は、0.5mmに足りない場合に0.0mmと表示する。

気象庁より

なるほど。それぞれの数字がどの程度の強さを表しているのかわからなかったから、雨の強さの基準を確認する。「雨が降っている」と感じるのは、1mm~らしい。

データ元が定めた定義に厳密に従うのが正だと思う反面、傘を差すか迷うレベルを"降雨"に含めるのはずるい気がする。といっても、どちらかに決める必要もないから、両方基準で見てみることにした。その結果がこちら。

気象庁の定義(0.0mm以上)
体感の定義(1.0mm以上)

やっぱり気象庁の定義はまずい。降水確率84%はさすがに盛りすぎている。

体感の定義を見ると、彼と付き合い始めた2021/5/15以降は5分の4が雨。唯一雨が降らなかった2025年は、彼が太平洋を越えた所に住んでいて一緒に過ごせなかったこと考えると、一緒に誕生日を迎えて雨が降る確率は4分の4。つまり100%だ。
これは証明できたと言っても過言ではないだろう。思い違いじゃなかった、安心した。
それにしても、関東の降水確率が高い。関東に住むと、雨との縁が強まるのだろうか。

気が付けば雨は上がり、隣町の背の高いマンションは夕日を浴びてオレンジがかっていて、見上げた空はほのかに赤い薄水色が広がっている。雨で洗い流された空気は少し湿っていて、窓を開けると心地良い風が吹き込んでくる。雨に濡れた葉は風になびきながら緑を弾き、初夏の報せを思い出させる。

一番好きな天気は雨、かもしれない。

「最寄駅着いた。ケーキ買った?」と彼から連絡が来た。「買ってない」と返事をして、晩ごはんのお米を炊き始める。何のケーキを買ってきてくれるんだろう。誕生日だから、ショートケーキがいいな。

数十分後、彼はケーキと赤い薔薇の花束を持って帰ってきた。

「今年は王道で攻めようと思ってね」

そう言う彼は、チョコレートケーキとレアチーズケーキを選んでいた。

「王道」の解釈が、私とは少し違うみたいだ。

いつもと違うプレゼントに、いつも通り小躍りしている。

雨の余韻が、私たちをそっと包み込んでいる。