「桑道家抄:理屈っぽい私と、エントロピーな日常の謎」の秘密:桑道家抄 あとがき
本文 約1,500字
コワモテ @kwmtkoo こと私がnoteで書き始めた、日常ミステリーの三部作を、電子書籍としてKindleで出版しました
その際に「あとがき」として書いた内容を、有料記事で公開していたのですが、ちゃっかりし過ぎている気がしてきたので無料にしました
物語の本文もnoteの記事として全文公開していますので、「あとがき」を読んだあとは、ぜひ本編もご覧ください
電子書籍やペーパーバックはシリーズを続けて読めるので、気に入っていただけた方はぜひ買ってね
シリーズの物語
第1章 行方不明の荷物
第2章 思い出の味
第3章 おばけのコマ
オマケも含めて一覧にしたマガジンもあります
Kindle 電子書籍版
あとがき
この物語を書き始めたきっかけは、とてもシンプルでした。
我が家で実際にあった出来事を「日常ミステリー」として書き残せば、いつか私が亡くなったあとでも、家族が楽しく読み返してくれるんじゃないか。そう思ったのです。
書いていて不思議だったのは、物語が必ずしも自分ひとりの力で進んでいない、と感じる瞬間が何度もあったことです。考え込んで筆が止まり、いったん諦めて日常に戻ったときに、ふいに道筋が見える。その感覚は、この三部作を書き終えたあとも続いています。
一作目の『行方不明の荷物』は、ほとんど手探りの状態でした。執筆の過程ではAIとの対話も試みましたが、AIの提案をそのまま採用するよりも、むしろ「それは違う」と感じた瞬間にこそ、自分の中から本当のアイデアが湧いてきたように思います。
二作目の『思い出の味』もまた、同じ感覚の延長線上にありました。
そして三作目の『おばけのコマ』。これは私自身がトランプでボードゲーム「ガイスター」を再現した際の実体験がベースですが、プロットには悩み続けました。しかし、考えるのをやめて普段の生活に戻ったとき、偶然耳にした楽曲が引き金となり、「量子もつれ」のメタファーが一気に見えたのです。その感覚は、そのまま作中でトオルがひらめく場面へと重なりました。
また、ガイスターの再現を単なる「課題」ではなく「謎」へと格上げさせるため、「父が再現方法を知っていた」という設定を加えました。入院中の父と電話をした事実を下敷きにしつつ、会話そのものは創作です。船乗りの父が時化(しけ)をやり過ごす時間や、娯楽としてのゲームなど、事実と想像を織り交ぜることで、それらは思った以上に自然に繋がっていきました。
三部作を書き終えてみると、酸化や量子論といった科学的モチーフが、結果として象徴的な役割を担っていたことに気づきました。そこで一作目『行方不明の荷物』についても、後から「相対論」に見立て直す試みをしました。生活の急激な変化や時間の積み重ねによって、日常では見えなかったズレが顕在化する。その構図は、GPSと相対論の関係に重なって見えたからです。
こうして三部作の構造は明確になりましたが、同時に「整いすぎてしまった」ことで、続編が書きづらくなる不安も生まれました。
そこで目に留まったのが「対称性」という言葉です。三部作の対称性を守るのではなく、どう崩すか。完成した構造をあえて壊していくこと自体が、次の物語になるのではないか。そう考えたとき、視界が開けました。
『桑道家抄』全体を「エントロピー(無秩序の度合い)」と捉え直してみる。三部作が最も整った状態だとすれば、四作目以降はそこから少しずつ散らばっていく。それは、統一理論における「見つからない四つ目の力」を探す旅のようなものかもしれません。これからは構造に縛られず、もっと自由に書いていける。そうした納得に辿り着くことができました。
四作目以降の具体的な構想は、まだありません。それでも、これからも我が家で実際にあった出来事をもとに、日常の小さな謎を物語にしていけたらと思っています。
最後に。
この本を手に取ってくださったあなたへ。
そして、私の「理屈」に付き合ってくれた家族へ。
ありがとう。
コワモテ
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