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葉山の泥敷地浸透ランドスケープデザイン(その②緑溝、湧水、貯留池、駐車場・広場仕上げ、施工後半)

前回その①では緑溝の掘削を進める中で粘土層の塊が出てきてしまったことを書きました。残土処分場は、通常の土壌と粘土が混じったものは受け入れないので、分ける必要があります。ユンボで粘土だけをすき取りながら、ダンプトラックの荷台に入れていきます。職人さんは慣れたもので、今回は上手く分別して搬出作業を進めることができました。

粘土塊を分別して搬送

粘土の問題が解決したので、大穴と緑溝の作業を再開します。
大穴はまず穴底に焼き杭を打ち込み、縦方向の浸透を強化します。そして、穴に石やコンクリートガラを立てながら充填し、稲藁、落ち葉等の有機物と炭をすき込みながら、多孔質で有機物に富んだ貯留層をつくります。これにより微生物の生息、活動による土壌改善、浸透能の向上を狙います。

石やガラを立てながら大穴を充填していく

緑溝は、排水性を良くするために、溝底に有孔トレンチ管を敷きます。ここにも大穴と同様に、焼き杭を打ち込み、石、ガラを稲藁や落ち葉と共にすき込み、浸透する構造をつくります。有孔管はあくまでも豪雨時のオーバーフロー用で、できるだけその場所場所で浸透させていくことを狙います。このような緑溝を敷地の斜面下に巡らせ、敷地からの水勾配も緑溝側へ付け、雨水排水の骨格をつくります。

緑溝に有孔トレンチ管を巡らせる
有孔トレンチ管の上に、ガラ、石を詰めていく

これで大穴と敷地を巡る緑溝というメインの排水系統ができてきました。さて、問題は湧水をどのように処理するかです。湧水を埋めることはしたくないし、地中で管につなげるのも状況が分からなくなるし、風情がない。そこで湧水が貯まる池をつくり、一旦池に湧水を貯めてから、オーバーフローを緑溝に流すという構造にしました。平常時は湧水の綺麗な水が貯まり、大雨時に水位が上昇すると有孔トレンチ管にオーバーフローが流れ込み、敷地に溢れることなく排水させるという作戦です。

湧水を貯めてからオーバーフローを溝に流す

湧水部の施工の後に豪雨があったのですが、狙い通りに一定水位まで湧水が溜まり、残りは排水され、敷地の泥々はだいぶと緩和された状況になっていました。

湧水を貯め、オーバーフローを排水させる

それでも敷地の中に部分的に水たまりができやすい場所や、泥々が引きにくい場所が残ったので、その部分には竪穴を掘り、またメインの排水幹線に近い場所はつなげて支線として排水する方針とし、地面に掘る場所のマークを入れていきます。

水たまり、泥々が残る場所の排水を強化するため、新たに掘る場所をマークする

ここにも大穴と同様の処置を行い、焼き杭、石、ガラを入れて行きます。地面にパッチワークをしたアースワークのようなかわいい感じになりました。が、これはあくまでも下地なので、上に石を入れた仕上がり時には見えなくなります。

支線、竪穴を充填した状態

さて、この駐車場兼広場の仕上げですが、車両が通行、停車できることを前提に、耐荷重に耐えられることと、自然風の仕上がりにしたかったので、グリ石と砕石が混じり合う仕様としました。グリ石だけや、グリ石が多めだと車両通行可能な平滑な面をつくりにくかったので、砕石を多めにし、グリ石がポイントに現れるような比率にしました。また、緑溝はグリ石だけの仕上げとし、蛇のような一本の流れを貫通させることを意図しました。

グリ石、砕石の仕上げ材を導入する

表面が仕上がった状態は以下の写真のようになりました。車両の通行に問題ない平場が確保でき、グリ石がいい感じにアクセントとして効いているようです。緑溝は、グリ石によってカバーされ枯山水のような流れとして大穴まで続いています。個人的には緑溝と広場のグリ石のグラデーションと対比がいい感じに収まっていると思います。

手前の緑溝と奥の駐車場兼広場の仕上げ
駐車場兼広場の仕上げ
広場と一時貯留池窪地の境界部
大穴へ続く緑溝

表面の仕上げまで施工した後の5月1日に葉山で累積雨量72mm、最大時間雨量15mmの豪雨がありました。直後にどうなったことかと心配しながら現場を見に行きましたが、まったく水たまりや泥々の状況がなく、上の写真と同様の表面状態を維持し、きれいに水がはけている状態でした。時間70mmぐらいの台風の場合はまだわかりませんが、ある程度の豪雨ならうまく敷地の水はけ改善が実現できていることが確認されました。

メインの部分の仕上げは終えましたが、重要な部分の仕上げが残っています。湧水部と斜面下の一時貯留部です。湧水部に関しては駐車場兼広場に面していますので、車両がバックしても識別できるようにある程度立ち上げて縁を切る必要があります。ここは石積みで囲うことにしました。

湧水部の仕上げ

湧水部の池底は泥が堆積している状態で、そのままでも良かったのですが、湧水が出た時に水位変化が分かるように飛び石を置いてみました。もともとここに生えていたシダがいい味を出してくれています。

湧水部と緑溝、広場の状況

奥の斜面下の一時貯留池(リテンション・ポンド)は、掘削したそのままの状態だと豪雨時に壁面の土壌流出があることが分かったので、ここも石積でカバーすることにしました。

一時貯留池は、掘削した壁面の土壌流出がある状態だった
掘削壁面を石積でカバーした状態

斜面下のラウンド状地形を石積でカバーしたことにより、斜面地形と広場との一体感と安定感が出たように思います。子供が上り下りして遊んでも大丈夫なようにがっちりと組んでいます。筆者も石積み施工を行いましたが、両腕で抱え込むような大きさの石を手作業で組んでいったので、なかなか疲労困憊しましたが、イメージ通りの「地形に馴染む自然風」になったので良かったと思います。

地形に馴染む貯留池の石積
貯留池と緑溝の境界部。池からのオーバーフローが右側のぐり石緑溝に流入する

このようにして、泥敷地への挑戦は概ね終了し、雨の後は泥湿地にようになっていた敷地は、人や車両が利用、活用しやすいドライな空間に変容しました。一方で、湧水を水面として残し、緑溝のみずみちのラインや広場の石の粒子の集合体、一時貯留池などが雨水の動きを感じさせる、「レイン・コンシャス」なデザインになったのかと思います。
斜面からの表面流出と湧水をならべく敷地の各地点で浸透させることを狙いつつも、敷地全体が一つの連続した排水系統として機能させることを目指したことが雨水ランドスケープデザインのポイントと考えます。

敷地のエントランスから

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