2026年 ゴルディロックス経済の到来と破壊的イノベーションのビッグアイデア:(ARK Invest:2025年12月)[前編]
キャシー・ウッド氏率いるARKインベストの月次のアップデート・ウェビナー「Fund mARKet」のコンテンツを紹介します。今回は、2026年に向けたマクロ経済の見通しと破壊的イノベーションの主要動向について、同社のエキスパート・チームが各々の領域に対し、包括的な説明を行っています。
AIバブル懸念を一蹴。AI投資の健全性とマクロ経済の転換点であることを示し、無人ロボタクシーから宇宙データセンター構想、またマルチオミクス分野の動向まで、破壊的イノベーションの現在と将来見通しを整理して紹介しています。以下がそのパートですが、長文となるため、(1)~(4)を前編とし、(5)~(7)を後編とし、2つに分けて投稿します。ご参考下さい。
尚、ARKのオリジナル・コンテンツは、2025年12月11日に録画され、12月18日に配信公開されたものです。
[前編]
(1)マクロ経済動向と雇用市場の変遷
経済は「ローリング・リセッション」から安定期へ移行中
(2)AIへの投資とバブル懸念
AI関連の設備投資のバブル懸念とAI実業収益の爆発的成長
(3)米中AI覇権争いとハードウェアの制約
DeepSeek等の中国勢の台頭と推論コストの低下。競争力の分水嶺
(4)エネルギー供給と次世代原子力
爆発的な電力需要と規制緩和、そして宇宙データセンターという解決策
[後編]
(5)自動運転(Tesla)のブレイクスルー
ロボタクシーの商用化とスケーラビリティ。Waymo等の競合との差別化
(6)マルチオミクス(ゲノム編集・診断)の再評価
長らく低迷していたゲノム関連銘柄のAIとゲノム編集の融合による将来
(7)SpaceXと宇宙データセンターの可能性
地上のインフラ制約を打破する宇宙データセンター構想という新発想
[後編はこちらから]
1. ラウンド・テーブル[前編]
[ダン・ホワイト]
ARKでアソシエイト・ポートフォリオ・マネージャーを務めていますダン・ホワイトです。本日の司会を担当させていただきます。このウェビナーは2025年12月11日に事前録画されたものです。
それでは、ARKの最高経営責任者兼最高投資責任者であるキャシー・ウッドに代わります。キャシー、お願いします。

(1)マクロ経済動向と雇用市場の変遷
[キャシー・ウッド]
マクロ経済や市場について詳細に解説している「In The Know」をお聞きいただいている方はご存知かと思いますが、私たちは、経済がローリング・リセッションからより安定した状態へと順調に移行したと考えています。現在、失業率は上昇を続けています。中でも最も懸念される統計は、大学を卒業したばかりの学部生の失業率が10パーセントを超えていることです。最新のデータがある9月の1ヶ月間で、この数値は9.3パーセントから10.2パーセントへと上昇しました。最近の卒業生の方々は、夏の終わりまでには採用されるだろうと考えていたはずです。仕事を見つけるまでに平均で25週間を要しているという現状は、非常に厳しいニュースです。これが現在の失業期間の平均となっています。私たちは、そのような状況にある方々に対し、ぜひ積極的に仕事を探していただきたいと思っています。テクノロジーは最終的に雇用を生み出すものです。

多くの方がこの問題をAIのせいにしていますが、エントリーレベルの仕事に関しては、確かにその側面もあるかもしれません。しかし、私たちは、そのような立場にいる方々こそ、今この瞬間を捉えてAIについてできる限り学び、バイブ・コードの手法を習得し、あるいは自らビジネスを立ち上げることをお勧めしています。AIを活用すれば、私が2014年にARKを設立した当時よりも、起業はずっと容易になっているからです。当時は何から手をつければよいか分かりませんでしたが、今はチャットGPTやグロックが道を示してくれます。ですから、ぜひ挑戦してください。インフレについては、現在、連邦準備制度理事会にとって最大の懸念事項となっているようです。それにもかかわらず、再び利下げが行われました。失業状況を考慮すると、今後も利下げは継続されると私たちは考えています。失業率は遅行指標であり、雇用が決定的に好転するまでには1年ほどかかることもあります。
しかし、今回はそれほど時間はかからないと信じています。私たちは最終的に、生産性の向上に裏打ちされた好景気へと向かっていると考えています。来年の後半、ちょうど中間選挙の時期までには、それが好景気として実感できるようになるでしょう。生産性は非常に強力なインフレ抑制力となるため、インフレが問題になることはないと考えています。原油価格は下落しており、人口流出の影響で家賃も下がっています。市場の下位層は大きな打撃を受けていますが、その影響は来年にかけて消費者物価指数に反映される見通しです。そのため、来年は一種のゴルディロックスのような年になると考えています。市場もそれを理解し始めています。
今年は、関税を巡る混乱や政府閉鎖、そしてトランプ大統領が指名したマイロン氏が加わった後の連邦準備制度理事会によるタカ派的な発言など、非常に困難な局面を二度も乗り越えてきました。マイロン氏の存在が、他のメンバーを異なる方向へと向かわせたのだと考えています。2026年に向けては、多くの希望があります。その一部はすでに市場に織り込まれていますが、私たちの予測が正しければ、成長はより力強いものになり、重要なことに、インフレ率は関税の影響を考慮しても現在よりずっと低くなるでしょう。原油や家賃の下落が続けば、ある時点でインフレ率はゼロ、あるいはマイナスにまで低下する可能性があると考えています。それではダンさん、お返しします。
[ダン・ホワイト]
キャシー、ありがとうございます。
それでは質疑応答に入ります。クライアントや販売パートナーの皆様、そしてARKのXやInstagramのアカウントにお寄せいただいた質問をご紹介します。
キャシー、最初の質問です。あなたは2026年に向けてゴルディロックス的な見通しを示されましたが、これに対する懸念についての質問です。来年、財政面および金融面で最大の懸念材料となるリスクは何でしょうか。
[キャシー・ウッド]
金融政策からお話しします。もし連邦準備制度、つまりFRBが、経済成長はインフレを招くと考える人々で占められ、内部で多くの意見対立が起きるようであれば、それは課題になると考えています。来年、ケビン・ハセット氏かウォラー理事のどちらかが指揮を執ることになれば、大きな問題にはならないと考えていますが、投票権を持つメンバーが反対に回り、市場に大きな不確実性をもたらす懸念はあります。ハワード・ラトニック氏をはじめとする現政権の方々が、最近もテレビ番組などで、経済成長はインフレを招くものではなく、実際にはその逆であると述べているのを耳にします。1980年代や90年代には、実質GDP成長率が加速する一方で、インフレ率は一貫して低下しておりました。新型コロナウイルスに伴う供給ショックや、ある程度の関税の影響が経済システムを通り抜け、あらゆる混乱の先へと進むにつれて、私たちは再びそのような光景を目にすることになると考えています。
財政政策については、もしトランプ政権が、インフレ率や金利の低下を伴う力強い成長環境を享受できない場合、トランプ大統領は予想よりも早く、政治的な影響力を失ってしまうかもしれません。つまり、税制政策の面で苦境に立たされる可能性があるということです。私たちは、法人税の実効税率を10パーセントに引き下げることや、チップ、残業代、社会保障の大部分を非課税とし、地方税の控除枠を2倍に広げ、さらに育児減税を導入するといった、個人が今年多額の還付を受けられるような税制政策を非常に好ましく感じています。しかし、もし経済が低迷すれば、中間選挙を前に大きな不安が広がることになるでしょう。その結果、本来必要のない一時的な支出策が次々と講じられるような、不安定な状況を招く恐れがあります。私たちは、経済成長によって赤字を解消していくことが真に必要であると考えており、現政権はまさにそれを実現するための政策を打ち出していると信じています。しかし、万が一私たちの見通しが誤っていた場合、財政赤字は債券市場にとって大きな問題となるはずです。
(2)AIへの投資とバブル懸念
[ダン・ホワイト]
ありがとうございます。マクロ経済からテクノロジーの話題に移ります。フランク、次の質問はあなたにお願いします。これは最も多い質問で、1時間あっても足りないくらいですが、AIの設備投資、売上、そしてバリュエーションについて、チームの最新の考えを聞かせてください。
[フランク・ダウニング]
はい。それは非常に重要で、素晴らしいご質問だと思います。現在、私たちがどのように状況を捉えているか、その全体像をお話しさせていただきます。10月に発表されたコートゥー社の市場更新レポートのデータをいくつか引用してお話ししますが、これは現在の状況を非常によく表しているものです。新年には、私たちの『Big Ideas』レポートでこれらの最新の数字を更新して公開する予定ですが、まずは現在の市場の見解についてお伝えします。

市場で懸念の声が上がっていることは十分に承知しています。国内総生産、つまりGDPに対する設備投資の割合を見ると、90年代後半のドットコム・ブーム時と同様の水準に達しています。現在の予測では投資額はさらに上昇する見込みで、主要なハイパースケーラー各社による来年の投資額は、アナリストの予測に基づくと、合計で5,000億ドルを超える見通しです。
しかし、ここで重要なのは、当時と似ている点を確認した上で、何が異なっているのかを見極めることです。設備投資の資金源に注目してください。営業活動によるキャッシュフローに対する設備投資の割合を見ると、1999年から2001年にかけてのS&P500企業は、ピーク時で75パーセントに達していました。これに対し、現在は46パーセントに留まっています。現在、莫大な設備投資を行っているマグニフィセント・シックスのような企業は、90年代後半のドットコム時代に比べて、キャッシュフローを生み出す力が格段に強いのです。また、市場がこの機会をどのように評価しているか、つまりマルチプルを確認することも重要です。ナスダック100指数の企業は、2000年のピーク時には決算利益に対する株価の倍率、つまり株価収益率が89倍に達していましたが、現在は28倍です。ですから、2000年代前後のようなバブルの状態には程遠いと言えます。市場がバブルを非常に警戒していることで、評価額が当時のような投機的なピークまで暴騰するのを防いでいるようにも感じられます。公開市場以外に目を向けると、私たちのARKベンチャーファンドを通じ、公開・未公開を問わずAIの導入が進んでいる分野に注目しています。AIネイティブ企業の売上の伸びには、本当に目を見張るものがあります。企業や消費者が、日常生活や日々の業務を革新する新しいAIサービスに対して、これほどまでの対価を支払う意欲があるという事実は、非常に驚くべきことです。
いくつか例を挙げると、OpenAIは消費者向けに特化しつつ法人向けも展開していますが、今年の年末までに年換算の売上が200億ドルに達すると推定されています。これは2023年の20億ドルから、わずか2年で10倍に成長したことになります。200億ドルという売上規模は、上場しているソフトウェア企業の中でも最大級の事業に匹敵します。さらに彼らは、今後数年で1,000億ドル以上の売上を目指しています。一方で、Anthropicはさらに急速に成長しており、年初の10億ドルから年末には年換算で90億ドルの売上に達する見込みです。10億ドル規模のビジネスを1年で10倍近くに成長させるというのは、極めて稀で素晴らしいことです。OpenAIは消費者側に、Anthropicは汎用的な法人向けに強みがあると言えるでしょう。また、特定の業界や職務に特化した企業にも新たな兆しが見られます。特にプログラミング支援の分野は際立っており、CursorやReplitといった企業が非常に速いスピードで成長しています。例えばCursorは、前年比で10倍以上の成長を遂げ、売上は10億ドルを超えると推定されています。Replitも1億5,000万ドルを超えています。私たちのベンチャーファンドのポートフォリオには、今お話ししたOpenAI、Anthropic、Replitの3社が含まれており、非常に誇らしく思っています。
[キャシー・ウッド]
投資家の皆さんがAIバブルを非常に懸念されていることについて、少し補足させてください。この業界で経験豊富な投資家ほど、かつてのテクノロジー・テレコムバブルを経験しており、二度と同じ罠にはまりたくないと警戒しています。しかし、当時のバブルを経験した方こそ、現在がいかに状況が異なるかを理解すべきです。アルティメーター社のブラッド・ガーストナー氏は、当時と今の違いを次のように説明しています。当時はブロードバンドや、後に「ダークファイバー」と呼ばれることになる設備に多額の資金が投じられましたが、それらが実際に活用されるまでには10年以上の歳月を要しました。対照的に、現在はGPUが不足しており、生産されたすべてのGPUがすぐに使用されています。一部で買い溜めが行われている可能性はありますが、技術の進歩が非常に速いため、次々と新しい技術が登場する中で買い溜めをすること自体に合理性がありません。これも、当時と現在の大きな違いの一つです。

[ダン・ホワイト]
キャシー、ありがとうございます。皆が恐れ、バブルを懸念しているときこそ、市場が過信しているときよりも安心して投資できるというお話は、以前から伺っています。
それではAIについて、よりグローバルな視点でお聞きします。ジョセフ、アメリカと中国のAI競争について、最新の考えを教えてください。
(3)米中AI覇権争いとハードウェアの制約
[ヨゼフ・ソヤ]
私からお答えします。中国は昨年、DeepSeek R1のリリースなどで大きな動きを見せました。オープンウェイトの低コストモデルという分野で、大きな勢いを見せています。中国の最先端モデルの純粋な性能は、欧米の主要企業のモデルに比べて約6か月遅れていますが、性能としては十分なレベルに達しています。実際に、専門的なインデックスにおいて、上位10個のオープンウェイトモデルのうち8個を中国勢が占めています。また今年8月までに、オープンルーターのプラットフォームにおけるAPIトークンの推論シェアも30パーセントを超えました。

しかし、中国が現在のペースで新しいモデルをリリースし続けるためには、現在アクセスできる以上の計算資源が必要です。トランジスタの総数で見ると、TSMCは中国の主要な半導体工場の約38倍の生産能力を持っていると推定されます。中国国内で生産されるチップは、依然としてNVIDIAに性能と効率の両面で劣っています。さらに、生産されたチップを実際に使用する際にも困難が生じていると報告されています。例えば、Huaweiのチップの影響で、DeepSeek R2モデルの学習とリリースに遅れが生じているようです。その結果、欧米のモデルが、中国が築いた低コスト市場のシェアを奪い返す可能性があります。
実際、xAIやグーグルのモデルが、今年中国モデルに奪われたシェアをすでに取り戻し始めています。中国が2025年も存在感を維持するためには、NVIDIAのチップへのアクセスを大幅に増やすか、国内のハードウェア基盤を大幅に強化する必要があります。それができれば低コスト分野での競争力を維持できますが、そうでなければ再び欧米のモデルに押されることになるでしょう。
[ダン・ホワイト]
ジョセフ、ありがとうございました。
次にAIの電力供給について伺います。ダニエル、あなたは原子力発電について多くの調査を行っていますね。ARK社も原子力関連の企業をいくつか保有していますが、送電や配電を担う公益事業の側面をどのように見ていますか。
(4)エネルギー供給と次世代原子力
[ダニエル・マグワイア]
良い質問ですね。一般的に公益事業は歴史的に優れたビジネスですが、送電や配電の分野は非常に規制が厳しく、収益率に上限が設けられています。そのため、革新的な動きが起こりにくい傾向にあります。対照的に、発電の分野、特に原子力や太陽光、バッテリーには非常に注目しています。これらはライトの法則に従って、累積生産量が倍増するごとにコストが一定の割合で低下しています。

原子力は1970年代に規制の壁に阻まれましたが、現在は環境が完全に変わりました。今年の大統領令による規制緩和や、AIハイパースケーラーからの24時間365日の電力需要、さらに小型モジュール炉の登場といった追い風があります。これらが組み合わさることで、原子力のコスト低下が再び加速する大きな可能性があります。
最後に、AIやデータセンターの時代において、GPUへの電力供給競争が激化していますが、私たちは「ビハインド・ザ・メーター」と呼ばれる、既存の送電網に接続しない分散型エネルギーの導入が進むと考えています。これは、送電網への接続に5年ほどかかるという深刻な待機時間の問題を回避するためです。一部のハイパースケーラーは非常に独創的な手法を検討しており、最近ニュースになった軌道上のデータセンターなどもその一例です。これらは従来の電力会社のサービスに依存しません。このように、送電や配電に関わる企業には、プラスとマイナスの両面があると考えています。
[ダン・ホワイト]
ダニエル、詳しく説明していただきありがとうございます。
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
ARK Fundsより
(Original Published date : 2025/12/18 EST)
御礼
最後までお読み頂きまして誠に有難うございます。
役に立ちましたら、スキ、フォロー頂けると大変喜び、モチベーションにもつながりますので、是非よろしくお願いいたします。
だうじょん
免責事項
本執筆内容は、執筆者個人の備忘録を情報提供のみを目的として公開するものであり、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。また、本執筆によって提供される情報は、個々の読者の方々にとって適切であるとは限らず、またその真実性、完全性、正確性、いかなる特定の目的への適時性について保証されるものではありません。 投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、読者の皆様ご自身の判断と責任で投資なされるようお願い申し上げます。
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