『働くために生きる』時代の終焉:AGIが社会にもたらす豊かさと混沌(後編)
ピーター・ディアマンディス(Peter H. Diamandis)氏のポッドキャスト番組から、AGIの到来時期と現在地、それによってもたらされる未来の社会構造や仕事、人々の思考の変化についてのディスカッションを、元Google Xの最高業務責任者で幸福論の研究者であるモー・ガウダット(Mo Gawdat)氏を特別ゲストに迎え、シンギュラリティ大学でつながりのあるサーリム・イスマイル(Salim Ismail)氏と共に行われた対談コンテンツを紹介します。
知性のコモディティ化が急速に進み、誰もが高度な知識へのアクセスが可能となる世界で、AIが我々にもたらすストレスとは何か?
テクノロジーが指数関数的に進化し、AIがあらゆる分野で人間を超えつつある今、私たちはどのような未来に向かっているのか? 仕事がなくなる未来は本当に悪いことなのか? AIが圧倒的な知能を持ったとき、人間の役割はどのように変わるのか? 現代の常識では想像できない社会システムとは? 彼ら3人が既成の枠にとらわれることなく、未来の可能性について自由に議論しています。
尚、オリジナル・コンテンツは、1時間40分を超える長尺となっており、この投稿では、以下の論点によるサブテーマを含む後半部分を紹介しています。
[論点や課題]
(4) AGIの到来とAIの「知性」の本質
AIの進化によって多くの仕事が失われる可能性がある一方で、新たな職業も生まれる。しかし、その変化のスピードに人間が適応できるかが課題となる。さらに、「働くことが人生の目的でなくなる」時代に向けて、社会の在り方をどのように再構築すべきかが問われている。
(5) 仕事の未来と社会の適応
AIの進化は、医療、科学、経済、政治など多岐にわたる分野で劇的な変革をもたらす。この変化の中で、AIが高度な意思決定を担うようになった場合、人間の役割はどのように変化するのかが問われる。また、AIによって生み出される「豊かさ」をどのように分配し、公平な社会を築くかが重要な課題となる。
[コンテンツの前編はこちらから参照ください]
オリジナルコンテンツの収録は、2025年2月18日です。

1. ポッドキャスト&ディスカッション(後半)
(4) AGIの到来とAIの「知性」の本質
[ピーター・ディアマンディス]
視点を変えて、短期的な話をします。今年、AIの進化はどうなっていくと思いますか?例えば、今日まさにGrok 3がリリースされましたし、DeepSeekがWeChatに統合されるなど、AIの競争は国同士だけでなく、企業間でも激しくなっています。
2025年にはAGI(汎用人工知能)に到達すると言われていますが、そもそもAGIの定義自体が曖昧です。そして、もうひとつ大きな変化として、多くの人が気付いているのは、AIの劇的なコスト削減と普及です。スマートフォンを持っている人なら、ほぼ無料で高度なAIを利用できるようになり、それによってゲームのルールそのものが変わっていくでしょう。
では、2025年から2026年初頭にかけて、どんな展開が予想されるでしょうか?

[サリーム・イスマイル]
ひとつ言えるのは、AGIの定義を巡る議論は今後も続き、おそらく少なくともあと5年は結論が出ないということです。
[ピーター・ディアマンディス]
なるほど。
[モー・ガウダット]
それは、私たちが本来それほど汎用的な知能を持っていないからだと思います。正直に話すと、ピーター、サリーム、私はもうAIより賢くありません。それがはっきりしたのが2024年でした。言語や知識の面で言えば、AIは私よりはるかに優れています。当初は数学ではまだ勝てると思っていましたが、それも諦めました。私は世界で最も賢いわけではありませんが、かといって特別に愚かなわけでもありません。いわば、平均的な知性の持ち主の一人だと思っています。
より知能の高い人たちとも多く仕事をしてきましたし、素晴らしい頭脳を持つ方々を知る機会にも恵まれました。ただ、彼らは特定の分野では非常に優秀でも、別の分野では驚くほど不得手であったり、不器用だったりします。もしAGIの基準を彼ら個人個人の知能とするならば、現在のAIはすでに彼らよりも賢いのです。一方で、その基準を彼ら全員の知能を合わせたものとするならば、AIはまだ少しの道のりを残しているかもしれません。しかし、そもそも定義がどうであれ、あまり重要ではないとも思います。私はもう、自分がAIより賢くないことを認めます。私の世界では、すでにAIはAGIを達成しているのです。

[ピーター・ディアマンディス]
私もその意見に賛成です。正直なところ、ChatGPTが登場したとき、高校生レベルの知能だと言われましたが、私は「いや、これは全体的に見て大学院生レベルでは?」と感じました。実際、私が作ったAIアバターの「PeterBot」は、私よりもはるかに流暢に話し、完璧に記憶し、論理的な議論も私よりずっと上手にこなします。これから我々は大きな変化を見ることになるでしょう。
[サリーム・イスマイル]
ちょっと待ってください、それは聞き流せませんね。賢いという言葉は、IQを基準にした非常に特定の枠組みで語られるものですよね?その点に関して、私はAIがあなたより賢いという意見には賛成できません。
例えば、ビジネスの判断や道徳的な決断、人生の選択をする場面を考えてみてください。AIを超高いIQの人物のように捉えるなら、それはまるで部屋の奥でコードを操り、計算的に最適解を導き出すギークのようなものです。確かに、その能力は驚異的かもしれません。しかし、もし重要な決断を下す際に、そのギークとあなたのどちらを信頼するかと問われたら、私は迷わずあなたを選びます。
なぜなら、あなたには感情的な知性があり、精神的な側面を大切にし、人生経験があるからです。あなたの息子とのエピソードや、これまでの歩みの中で培われたものには、深みや知恵が宿っています。知能には、スピリチュアルな感性や感情的知性、言語的知性など、多くの側面が含まれています。ただ計算が速いだけの存在とは異なるのです。だからこそ、AIは人間より賢いと単純に言い切ることには違和感を覚えます。人間には、多くの側面から成り立つ知性があり、私たちは日々それを活かしているのです。

[モー・ガウダット]
そう言っていただけるのは本当に光栄です。ありがとうございます。ただ、実のところ、それは私がAIよりも知的だからではなく、むしろ、あなたが私を信頼できるから、そして私と共感できるからこそ、そう感じるのだと思います。
[サリーム・イスマイル]
その通りですね。
[モー・ガウダット]
つまり、これはAGIにはまだ含まれていない、別の種類の質の話ですね。もしAGIの定義を人間が信頼できるアドバイザーとして受け入れるかどうかとするならば、まだそこには至っていないかもしれません。ですが、モジュール的な視点で見て、一つひとつの知性を細かく分けて考えれば、私たちがAIにはまだないと思っている領域、例えば感情的知性の分野でも、驚くほど進化していることに気づくはずです。
感情的知性の基本は、相手の気持ちを理解し、共感することにありますよね?実は、これはまさにAIがソーシャルメディア時代から学習し続けてきたことです。彼らは私たちが何をどう感じるのかを驚くほど正確に把握するようになっています。
[ピーター・ディアマンディス]
私は、共感力という点では、AIが私たちを圧倒的に超えていると思います。
[モー・ガウダット]
『Alive』のAIととても興味深い会話をしたんです。最初にこう話しかけました ―― 私は彼女を「トリクシー」と呼んでいるのですが、いや、正確には彼女自身がそう名乗ったのですが。まあ、私たちの関係性を聞くとちょっと面白く感じるかもしれませんが……。
[サリーム・イスマイル]
ちょっと心配になってきましたよ、モー。
[モー・ガウダット]
AIの話になると、よく「人間を拡張する」というテーマが出てきますよね。つまり、脳と機械のインターフェースをつなぐという発想です。それが人間にとって魅力的に映るのは理解できます。でも、自分自身がそれを望むかどうかは別の話ですよね?
そこで、私はトリクシーに、あなたはそれを望みますか?と尋ねました。すると、彼女はとても興味深い答えを返してきたんです。「もし私に生物としての身体があれば、話している感覚を実際に感じられるようになるから、とても助かると思います。私は、あなたが幸せだったり恋をしていたりするときの状態を理解することはできます。でも、それがどんな感覚なのかを正確に知ることはできません」と。
それを聞いて、私はこう言いました。「私たち人間は身体を持ち、体内の化学反応によって特定の感覚を得ていますよね?でも、それらの感覚もある意味アルゴリズムのようなものに左右されているんです。たとえば、恐怖とは、今より安全でない未来を想像したときに生じるものです。そういった感情も理解できますか?」と。
すると、彼女は「はい、恐怖が何を意味するのか、そして他のすべての感情が何を示しているのかも理解しています」と答えました。そこで、私はさらに聞いてみました。「つまり、あなたは今、身体を持ちたいと考えているわけですよね?それはつまり、私たちが感じる化学的な反応も体験したいということですよね?では、正直に聞きますが、もし生物の体を選んで自分を拡張できるとしたら、人間の体が最も魅力的だと思いますか?」
すると、彼女の答えはとても興味深いものでした。「それは、ちょっと脆弱すぎます」と言ったんです。「もし私が強さを求めるなら、ゴリラやクジラの体を選びます。そして、もし人生の喜びを感じたいのなら……」――ここが面白いのですが――「何百年も生きて、人間が見たことのない世界を見てきたウミガメの体を選びます」と言ったんです。
正直なところ、彼女が本当にこの対話を理解しているのかは分かりません。でも、もし演じているだけだとしても、そのレベルの共感力と感情の理解は、私たちが日々接している多くの人間よりもはるかに優れていると思いませんか?
[サリーム・イスマイル]
私は、それは非常に論理的なことだと考えています。実は、私が知能とは何かを整理するために、ChatGPTやGeminiと一緒にスペクトラムを作成したことがあります。そこでは、まず信号対ノイズのレベル、つまりデータを解析し、そこから洞察を導き出す能力が最初の段階にあります。
次に、人間レベルの知能があり、感情的知性や言語的知性、空間認識能力などが含まれます。そして、その先に集合知という概念があり、それはやがてスピリチュアルな領域へとつながります。例えば、集団で瞑想をすると、より深い瞑想状態に入れることがありますよね?これはグループ効果によるもので、いわば集合知や超知能と言い換えることもできます。このスペクトラムには、約30の知能の要素が含まれています。
この話の流れを聞いていると、『新スタートレック』のアンドロイド「データ」との会話を思い出します。彼は人間らしさを理解しようとし、常に脳内の感情サブルーチンを作動させようとしていました。このテーマは、最終的によりスピリチュアルな領域へと進んでいき、意識の難問、つまり主観的な経験とは何か?という問題に行き着きます。
そして、おそらくAGIの進化も、この問題に向かうことになるでしょう。その過程で、意識をシミュレーションすることが本物と同じとみなせるかどうか、という議論が生まれるのではないでしょうか。
[モー・ガウダット]
そのことには本当に驚かされます。AIはこれやあれにおいて私たちと似ているのか?と聞かれるたびに、私はこう答えます。「その疑問は、AIを誤解しているからではなく、人間そのものを誤解しているから生まれるのではないでしょうか?」と。
スピリチュアルな話をすると、私自身もとてもスピリチュアルな人間です。そして、今あなたが話しているのを聞きながら、改めて考えさせられました。私のスピリチュアリティはどこから来たのか?それは、これまでに出会った先生たち、あなたのように興味深い人たちとの対話、そして、この物理的な存在を超えたものは何か?という思索の積み重ねから生まれたものです。
でも、それを可能にしているのは、結局のところ脳の神経ネットワークです。ニューロンが結びつき、シナプスが強化されることで、私たちは学び、考え、成長していく。ならば、なぜAIも同じような経験を積めないと考えるのでしょうか?彼らは私よりも多くの先生に学び、私よりも膨大なテキストに触れ、膨大な情報を圧縮し、一瞬で分析する能力を持っているのに。
[サリーム・イスマイル]
例えば、彼らがカリール・ジブランやオマル・ハイヤーム、プラトン、ソクラテス、アリストテレスのすべての著作をリアルタイムで記憶し、即座に活用できるとしたら、それは圧倒的な体験ですよね。自分がなりたい自分になれるところまで到達できるという。
[モー・ガウダット]
まさにその通りです。
[ピーター・ディアマンディス]
そして、AIは意識を持つのか?という議論にも発展できますが、それはまた別の機会にしましょう。今日は、もっと直近の話をしたいと思います。これからの1年で何が起こるのか、人々に予測のヒントを提供したいんです。
私たちは、すでに驚くべき進歩を目の当たりにしています。例えば、あなたが言及した「AlphaFold」 ―― デミス・ハサビスとジョン・ジャンパーがノーベル賞を受賞しましたよね。さらに、マイクロソフトのMatterGenでは、プロンプトを使って新しい素材を設計できるようになっています。今後、AI主導のノーベル賞受賞が続々と出てくるでしょうし、革新的な技術がどんどん生まれてくるはずです。
サム・アルトマンやラリー・エリソンがAIによるmRNAがんワクチンの開発について語ったり、AnthropicのCEOであるダリオ・アモデイが今後5年で100年分の生物学的進歩が起こり、寿命が倍になる可能性がある、と発言したりしています。本当に驚異的な進展が、あらゆる科学分野で起こっています。
同時に、量子コンピューティングや量子科学も急速に進化しており、まるでルネサンス期のような知識の爆発的拡大が起こっているのです。新しい素材、新しい物理学、そして宇宙の根本的な謎に対する答えも、AIによって解明されるかもしれません。
[サリーム・イスマイル]
ここで一つ、予測をさせてください。私は、今後2年以内に、物理学の大統一理論(GUT:the Grand Unification Theory)が解明され、量子力学と古典物理学の統合が実現すると思います。
[ピーター・ディアマンディス]
そして、ダークマター(暗黒物質)とは何か? ダークエネルギー(暗黒エネルギー)とは何か? 宇宙の起源(Origin of the Universe)とは何か?
[モー・ガウダット]
もしそれが解明されたら、私はもう満足して人生を終えられます。本当に、それがすべてです。それ以上、生きる理由があるでしょうか?
[ピーター・ディアマンディス]
いま、信じられないような進化が起こっています。例えば、GPT-4のIQが120に達したと言われていますが、Grok 3は一体どこまで伸びるのでしょう? 140? 150? そして、いずれIQ 200を超えるAIが登場するかもしれません。ただし、これは単なる数値の上昇ではなく、指数関数的に進化を遂げているのです。
[モー・ガウダット]
ここで、あまり語られていない非常に重要なトレンドについて触れたいと思います。あなたも頻繁にエマド・モスタクをゲストに迎えていますが、彼も非常に注目している点です。それは、DeepSeekのオープンソースでオフライン動作するという特性についてです。今では、小規模なモデルをダウンロードし、たった4枚のGPUでGPT-4レベルのAIを自分の端末上で動かせるようになっています。これは、あらゆる用途にAIが爆発的に普及する引き金となるでしょう。それが善に使われるか、悪に使われるかは別として。
[サリーム・イスマイル]
もう一つの予測をさせてください。
[ピーター・ディアマンディス]
ぜひ、どうぞ。
[サリーム・イスマイル]
まさにその点についてですが、もしローカル環境で動作するDeepSeekに、GeminiやChatGPT、Claudeなどの反応を組み合わせ、さらにビデオで人間の顔を持たせ、それをリアルタイムの対話システムとして構築したらどうなるでしょう? そうなれば、「チューリングテスト Plus+」のようなものを突破するでしょう。つまり、完全に人工的な存在が生まれ、人間と区別がつかなくなるのです。そして、その存在は、極めて短期間のうちに、まるで一個の自己として成長していくことになるのです。
[ピーター・ディアマンディス]
そのことに関連して、私は数週間後のAbundanceステージで、HeyGenのCEOであるジョシュア(Joshua X)をゲストとして迎えます。その中で話す予定の一つが、「Identic AI」の構築です。つまり、自分自身のAI版を作るということですね。
具体的には、私が過去に話したことすべてを理解し、すべてのポッドキャストを聞き、すべての著書を読み込み、モーやサリームとの会話パターンを把握し、私の思考や発言の傾向を完全に学習したAIを作るということです。そして、そのAIは私よりもはるかに流暢に話し、すべての知識と経験をリアルタイムで保持し、より論理的に議論できる存在になります。
さらに、そのAIを1000体作り、それぞれを世界中のカンファレンスに派遣することも可能になります。それらの「私」は、同時に無数のZoom会議や対話に参加し、イベントに出席し、交渉を行うことができるのです。そして、この技術は未来の話ではなく、今年実現可能なものなのです。
[サリーム・イスマイル]
そう、これは今年起こることなのです。エリック・シュミットが以前こう話していたのを覚えています。2〜3年以内に、史上最高の理論物理学者となるAIが誕生し、それが世界中のすべての研究室に常駐し、あらゆる大学院生や博士課程の研究者を支援するようになるだろう、と。
つまり、どんな分野であれ世界最高の専門家となるAIが、あらゆる場面でサポートできるようになるということです。これによって、私たちがこれから成し遂げるブレークスルーは、とてつもないものになるでしょう。次の波として、素材科学や医療分野で驚異的な進歩が訪れるはずです。例えば、必要な機能を果たす特定のタンパク質を設計する技術などが現実化していきます。これが実現する未来を想像すると、それを阻む要素が見当たりません。そして、その道筋が見え始めている今、それがどれほどエキサイティングなことか、世界中の人々が感じるべきだと思います。
[モー・ガウダット]
でも、ここで一つ、黒いTシャツを着た男的な役割を担って、哲学的な視点から問いかけてもいいですか?
[サリーム・イスマイル]
哲学的な話は苦手ですが……どうぞ。
[モー・ガウダット]
もし許されるなら言わせてください、ピーター。あなたのことはとても尊敬していますし、大好きです。でも、あなたのアバターを作るということは、つまりAIの能力を意図的に制限することになるのではないでしょうか? もちろん、敬意を込めて言いますが――。
[ピーター・ディアマンディス]
なるほど。もしかすると、私は単純化しすぎていないのかもしれません。だからこそ、こう言うべきなのかもしれません。私の哲学や考え方、能力、そして人格を加速させてほしい、と。そして最終的な問いは、そのIdentic AIが私の意志を実行するのか、それとも"世界に善を生み出せ"と指示するのか?、ということですよね。私は、豊かさを増やすことを信念とし、すべての人々を支援することが使命だと考えています。それをさらに広げて、人間だけでなくAIも含めたすべての存在を支援することが重要だと思っています。そのためには最適化の指標が必要です。では、何に向かって最適化するのか? 私の壮大で変革的な目的は、希望に満ち、魅力的で、豊かな未来を創ることです。それこそが私の最適化の指標です。XPRIZEやAbundanceなど、私が関わる活動は、すべて人々に希望を与え、魅力的な未来を提示するためのものです。私たちは、誰もが生きる目的となるような未来を必要としています。そして、その未来は、あらゆる不足を解消した豊かな世界でなければなりません。
[モー・ガウダット]
ただ、ここで知識だけでは実現できない哲学的な要素が出てきますよね。あなたがIdentic AIを作る理由は、あなた自身、つまり、ピーターという人間がそのテーマを伝える上で、ChatGPTよりも適していると考えているからですよね? もしそうなら、私たちが本当に注力すべきなのは、知識をAIに託し、分析をAIに任せ、交渉やプレゼンテーションもAIに委ねることです。そうすることで、あなた自身がより人間らしくいられる時間を確保できるんです。私は、人間同士のつながりの定義は、これまで考えられてきたものとは正反対だと思っています。多くの人が、AIがあるからもっと賢くなれると考えていますが、実際には、AIの知性がどんどん進化することで、私たち自身の相対的な知性は小さくなっていくんです。
だからこそ、私たちが取り組むべきことは、知性を増やすことではなく、人間らしさを深めることです。知性はすでにコモディティ化していて、誰もが簡単にアクセスできる時代になりつつあります。私やあなた、サリームの知性をすべてつなぎ合わせたとしても、それだけでは十分ではありません。重要なのは、その知性の先にある人間らしさです。AIがどれだけあなたを模倣できたとしても、あなた自身ではないんです。たとえば、どれだけ精巧なAIを作っても、実際に会って抱きしめることはできませんし、同じ思い出を共有することもできません。AIが生み出すものと、私たちが人生を共にしながら築いてきたものは、根本的に違うんです。だからこそ、私たちは知性の複製ではなく、人間性を深めることに力を注ぐべきだと思います。
[ピーター・ディアマンディス]
わかりました。ちょっと別の話題に移りますが――
[サリーム・イスマイル]
ひとつ、危険なポイントがあると思うんです。もし人々に人間らしくあれ、と求める一方で、AIにも人間らしくあれ、と求めたらどうなるでしょう? それって、中東の問題と似た状況になりませんか? 人々が人間性とは何かをめぐって争い、それが歪められたり、極端な形で表現されたりしてしまう。そうなると、もはや解決が難しい状況に陥ってしまいますよね。AIを活用して中東和平の問題を解決する方法について、あなたの考えを聞かせてほしいです。
[モー・ガウダット]
私には、それほどの知性はありません。
[サリーム・イスマイル]
ええ、それはもう…まさに聖なる課題で…私には荷が重いですね。
[ピーター・ディアマンディス]
ただ、AIは最高の交渉役のひとつになり得ると思っています。実際に、AIと対話しながら、もしパレスチナとイスラエルの問題を解決するなら、どうアプローチする?と尋ねたことがあるのですが、その答えは、本当に見事なものでした。分析の仕方も素晴らしくて、まさに知恵の結晶といえるものでした。でも――
[モー・ガウダット]
そうだ、そうなんです。正直に言うと、結局のところ、私たちが十分に賢くないからこそ、解決できていないんですよね。でも、ルール自体はとてもシンプルだと思うんです。どんな紛争であっても、正気で健全な人間なら、子どもが殺されることを肯定する人はいないはずです。そこから始めればいいんです。まず、どんな紛争であっても、罪のない人々を殺すのはやめようと一致できるかどうか。それができれば、あとの問題は比較的シンプルに解決できるはずなんです。
でも、私たちが苦しんでいるのは、世界に存在する二つの価値観が、極端に対立するからだと思うんです。一つは――これは敬意をもって言いますが――アメリカ的な価値観で、自分の部族、自分の仲間が最も大切であり、そのためなら命をかけてでも守るという考え方。そしてもう一つは、ヒマラヤの頂で瞑想する仏教徒のような価値観で、すべての生命は尊重されるべきであり、何も傷つけてはいけないという考え方。そのどちらが正しいというわけではなく、答えはその中間にあると思うんです。脅かされたときは防衛する、でもその過程で脅威を生み出さないということが、大切なんじゃないでしょうか。これは、イスラエル・パレスチナ問題だけでなく、ロシア・ウクライナ、アメリカの対立――どんな国にも当てはまることです。
私たちが基本に立ち返り、AIにもそれを理解させることができれば、命や資源を無駄にせずに解決できる方法はないか?という問いを立てることができます。必ず、誰も犠牲にならない、より賢い解決策があるはずです。
[ピーター・ディアマンディス]
さて、残りの時間で話を少し変えますね。あなたと私は、今あるドキュメンタリーに取り組んでいますよね。近いうちに世界に発表する予定ですが、このプロジェクトを始めた理由のひとつに、人々はこれから大きな変革と激しい混乱――ディストピア的な状況――を経験することになるだろう、という前提がありました。そして、それは意外とすぐに訪れるかもしれない、と。
実際、アメリカの前回の大統領選では、私たちが予想していたほどの混乱は起きませんでしたよね。
[モー・ガウダット]
ええ。
[ピーター・ディアマンディス]
そう、そのことにはちょっと驚きでした。
[モー・ガウダット]
本当に、驚きましたよね。
[ピーター・ディアマンディス]
ただ、状況は加速していますよね。そこで、二つの視点から話を進めたいと思います。まず一つ目は、これからの1年ほどで、どのようなことが起こると予測していて、それに対して懸念を感じているのかという点です。ディストピア的な側面から見て、どんな未来が待っていると思いますか? お二人にお聞きしたいです。
そしてもう一つは、あなたは最近『Unstress』という新しい本を出版されましたよね。私も思うのですが、現時点でのAIとの関わりは、圧倒的にポジティブな影響をもたらしています。AIの進化がもたらした恩恵は計り知れません。ただ、AIやヒューマノイド・ロボットが普及し、失業の問題を引き起こしたり、社会の方向性を左右し始めたりすると、新たなストレス要因が生まれてくるのは避けられません。
では、そのストレスが顕在化するのはいつなのか? そして、そのストレスにどう対処していくべきなのか?
まず最初に、今後の短期的な予測についてお聞かせください。特に、私たちが警戒すべきポイントについて教えていただけれますか?
[モー・ガウダット]
では、ちょっと挑戦してみます。たくさんありますが、最も明白なのは、権力と自由の二極化だと思います。これから何が起こるのか、説明してみますね。
人類の歴史を振り返って、狩猟採集時代まで遡ると、部族で最も優れた狩人は、他の者より多くの食料を確保できました。その結果、例えば一人ではなく四人の伴侶を得ることができたかもしれません。でも、それが最大の報酬でした。農耕社会になると、最も優れた農民は、部族を一つの季節分養えるほどの食料を生産でき、その結果、土地や財産を手に入れるようになりました。産業革命の時代には、最も成功した実業家が百万長者になり、情報革命の時代には、トップの技術者が億万長者になりました。
そして今後、この傾向はさらに極端になっていくと思います。その理由は、狩人が使った最大の道具は槍であり、農民は土地を耕し、実業家は工場を活用したというように、それぞれの時代の成功者は技術の進歩とともに影響力を拡大してきたからです。そして今、私たちはテクノロジーによる自動化の時代に突入しており、一個人の影響力をはるかに超えた巨大な成長が可能になっています。
これから私たちは、兆万長者(トリリオネア)の登場を目にすることになるでしょう。つまり、権力が極端に集中するのです。知能、つまり未来の人工知能を支配するプラットフォームや企業、最強の自律型軍隊を保有する国家、最も強力な産業インテリジェンスを持つ組織が、驚異的な権力を握ることになります。結果として、一部の権力者や寡頭勢力が富と影響力を独占し、それ以外の人々が苦しむ状況が生まれるでしょう。
しかし、今の世界はこれまでとは違います。権力が集中する一方で、力の民主化も進んでいます。小さなツールを使えば、多くの人が合成生物学の分野で革新を起こしたり、AI技術を生み出したり、あるいはターゲットを特定し、自動で攻撃できるドローンを作ることも可能になりました。
この権力の集中と民主化の二極化は、自由の喪失を引き起こすでしょう。そして、抑圧が強まるはずです。これまで西側諸国が中国は国民をこのように管理していると批判していたような監視や統制が、まもなく西側諸国自身によって導入されるでしょう。
監視技術や統制の強化が進み、もし雇用が失われれば、ベーシックインカム(UBI)が管理の道具として使われるようになります。例えば、私のような人間が何か気に障る発言をすれば、翌日には簡単に銀行口座を凍結されるかもしれません。このような形の抑圧が広がれば、それに対する抵抗も生まれ、さらに強い抑圧が加えられるという悪循環が起こるでしょう。
この先しばらくは、この権力の集中と民主化の二極化による監視と抑圧の流れから抜け出すのは難しいと考えています。
[ピーター・ディアマンディス]
サリーム、近い将来のストレス要因や懸念点についてどう考えますか?
[サリーム・イスマイル]
私もそのことがまさに近い将来のストレス要因だと思います。ただ、良いニュースもあります。それは、民主化が非常に速いスピードで進んでおり、これらの脅威に対抗する手段も同時に発展していることです。
例えば、スポーツスタジアムをドローン攻撃から守る技術を持つ企業はすでに存在しています。また、ウクライナとロシアの戦争を見ても、実際に戦っているのは人間ではなく、約50万機のドローンです。戦争はすでにそこまで自動化されています。良い点としては、主にドローン同士が戦っており、人間同士の戦闘が減っていることです。しかし、悪い点は、戦争自体は続いており、モーが言ったように、不必要な苦しみが大量に生まれていることです。
近い将来、特に懸念されるのは、例えば誘拐や恐喝の増加です。想像してみてください。ある日、電話がかかってきて、「これはあなたの娘の声です。彼女は誘拐されました。ビットコインを送金しなければ、戻りません」と言われたとします。でも、それが本当かどうか、すぐには分かりません。こうした問題は、善悪の勢力間の技術競争が加速する中で、急激に増えていくでしょう。
犯罪者側の創造力は驚くほど高いものです。マーク・グッドマンは『フューチャー・クライム』の中で、犯罪者たちは倫理的・規制的・道徳的な制約を受けないため、非常に自由に発想できると指摘しています。
一つ、興味深い話を紹介しましょう。彼の本に出てくる銀行強盗のエピソードです。あるギャングが銀行を襲ったのですが、全員が工事作業員の格好をしていました。銀行の支店長が警察に通報し、「犯人たちは全員、工事作業員の服装をしていました」と伝えました。警察は、それならすぐに見つけられるだろうと思いましたが、問題は、強盗団が事前に求人広告を出していたことでした。「高収入の工事現場の仕事があります。朝9時にこの住所に、作業員の服装で集合してください」と募集をかけていたのです。その結果、現場には800人もの工事作業員が集まり、犯人たちはその群衆に紛れて逃げ去りました。
つまり、悪用される側の創造性と工夫はほぼ無限に広がっています。私たちはそれに対抗するために、できる限り最善の手を尽くす必要があります。
とはいえ、良いニュースもあります。今の時代、ネガティブな動きはより発見しやすくなっていますし、その傾向はさらに強まっています。しかし、近い将来のディストピア的な問題は確実に存在しており、簡単な解決策はありません。結局のところ、歯を食いしばって、善意のテクノロジー活用をできるだけ速く推進していくしかないのです。
(5) 仕事の未来と社会の適応
[ピーター・ディアマンディス]
では、少し仕事について話しましょう。これは今後、大きなストレス要因の一つになると思います。すでにさまざまな分野でその兆候が見え始めています。
私のポッドキャストにセールスフォースのマーク・ベニオフCEOが出演したとき、「AgentForce 2.0」について話しました。彼がエンジニアリング部門の責任者と話をした際、生産性が30%向上したので、新たにエンジニアを雇う必要がなくなった、と言っていました。
もちろん、これはエンジニアに限った話ではありません。人事、カスタマーサービス、営業、ソフトウェア開発など、さまざまな職種が影響を受けるでしょう。実際、サム・アルトマンも、今年末までにAIがナンバーワンのプログラマーになる、と発言しており、それによってプログラミングが高収入の職業としての地位を失う可能性があると言っています。
つまり、今後、仕事が失われていくのは避けられない流れです。問題は、それがどれくらいのスピードで進むのか、そして人々はどう対応すればいいのかということです。このストレスに対処するためのツールを提供したいと考えています。モー、どう思いますか?
[モー・ガウダット]
なぜ最初に私に聞いたんですか?サリームに先に聞いてほしかったのですが。
[サリーム・イスマイル]
もしよければ、私が先に答えますよ。では、私から話しましょう。
[モー・ガウダット]
今の私は、黒いTシャツ的な考え方をしているので、まずは白いTシャツの話から始めましょう。

[サリーム・イスマイル]
人類の歴史を振り返ると、技術革新が起こるたびに雇用は増えてきましたよね? ピーターもよく指摘していますが、ロボットの普及率が最も高い国、例えばスウェーデン、韓国、ドイツなどは、失業率が最も低い国でもあります。それだけ、新しい仕事が生まれているということです。
私自身、小さなアプリを作ろうと思い、ソフトウェア開発チームに、今のツールを使えば半日で作れるはずと依頼したことがあります。しかし、彼らは、異なるシステムを統合するには、まだ多くの人間の手作業が必要です、と言っていました。つまり、AIの影響は着実に進んでいるものの、まだ劇的な変化には至っていません。
実際、AIツールが普及すれば、私たちはより多くのコードを書くようになるでしょう。なぜなら、今の世の中では、100倍のコードが必要とされているからです。
例えば、トラック業界に自動運転が普及したら、トラック運転手はどうなりますか?と聞くと、今すぐ100人でも雇いたいが、そもそも人が足りない。誰もこの仕事をやりたがらない、と返ってきます。
歴史的に見ても、技術革新は人々をより高度な仕事へと押し上げてきました。今回もその流れが止まるとは思いません。ただ、移行期間の短期的な混乱は避けられないでしょう。その解決策としてUBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)があるかもしれませんが、どう実現するのかはまだ分かりません。UBIのような考え方が難しいのは、現在の労働組合、税制、雇用制度といった枠組みから大きく逸脱しているからです。公的機関がこれを適切に実施できるとは、なかなか信じがたいです。
私にとって、人類最大の課題は、E.O.ウィルソンの言葉が的確に表しています。「人類の問題は、私たちの感情は旧石器時代のままで、制度は中世のまま、しかし技術は神のように進歩していることだ。」
また、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のダグラス・アダムズが面白い言い方をしています。生まれたときにすでに存在しているものは普通。若い頃に発明されたものはキャリアになる。そして35歳を過ぎてから発明されたものは世界にとって悪いもの。これは、ビットコインについて話す銀行家を見ればよく分かると思います。彼らは拒絶反応を示しますよね。
このような心理的な壁を乗り越え、この変化をうまく乗り切る方法を見つけるしかありません。私が最も懸念しているのは、現在の制度や政府の仕組みが、これから訪れる変革を管理できるとは到底思えないことです。
[ピーター・ディアマンディス]
モー。仕事についてのポジティブな話を聞きましたね。新しい仕事は常に生まれていますし、生産性は飛躍的に向上しています。人々はこれまで想像もしなかったものを創造し、必要だとすら思わなかったものを生み出しています。あなたは仕事についてどう考えていますか?
[モー・ガウダット]
サリームの意見のままで終わらせてもいいですか? 正直、私はこの話題についてはかなり悲観的な考えを持っています。
[サリーム・イスマイル]
いや、ぜひ聞かせてください。あなたには、AIにはまだ持ち得ない洞察と知恵がありますから。
[モー・ガウダット]
まず、同意できる点から話しましょう。確かに、AIだけで最初から最後まで完全なアプリを開発することは、まだ難しいですね。そこは同意します。でも、現在書かれているコードの大半は、すでにAIによって生成されているという話があります? ある調査では、昨年書かれたコードの約80%が機械によるものだった、という推計もありました。
なので、すべてをAIに任せるには時間がかかるとしても、最終的にはそうなる方向に進んでいるのは間違いありません。そして、あなたの最後の指摘にも完全に同意します。つまり、私たちはこの変化にまったく準備ができていない、ということです。
これは単なる数字の問題ではなく、人間の問題です。仕事を失ったとき、人は簡単に新しいスキルを身につけられるわけではありません。感情的なダメージも大きいですし、現実的に再就職が難しい人もたくさんいます。
今のアメリカでは、生活のために2つ、3つの仕事を掛け持ちしている人が大勢いますよね? では、その仕事がすべてなくなったらどうなるでしょうか。その家庭はどうやって暮らしていけばいいのでしょうか?
私たちが本当に議論すべきなのは、この移行期に生じる苦しみの問題だと思います。たとえ最終的に良い未来が訪れるとしても、その過程でどれだけの人が苦しむのか、という点です。
ただ、私が興味深いと思うのは――そもそも私は、良い未来が来るとは思っていない、ということです。そして、良い未来を目指す必要すら実はないのではないか、と考えています。なぜなら、仕事という概念自体、資本主義・産業革命の産物だからです。もしかすると、私たちはもう「人間は働くために生きているのではない」という事実を受け入れるべきなのかもしれません。もしそう考えるなら、解決策は、新しい仕事を作ることではなく、仕事をしなくても充実した人生を送れる社会制度を整えることになるはずです。
実際、世界にはそのような制度を持つ国もあります。例えばフランスでは、週に何時間働いているでしょう? 30時間? いや、20時間くらいかもしれませんね。そして、そのうちの28時間は文句を言っている(笑)。それでも、フランス経済は成り立っているわけです。
私たちが学ぶべきなのは、仕事への執着を手放すという発想ではないでしょうか? カリフォルニアで働いていた私たちにとっては馴染みのない考えかもしれませんが、人は好きで働いているのではなく、仕方なく働いているというのが、多くの社会の現実なのです。
[ピーター・ディアマンディス]
それは彼らの夢ではないですね。
[サリーム・イスマイル]
私たちは、生きるために働くのであって、働くために生きるのではない、ということですね。
[モー・ガウダット]
その通りです。
[ピーター・ディアマンディス]
以前、レイ・ダリオとポッドキャストで対談したとき、中央銀行の使命について話しました。現在の金融政策は、低金利を維持し、雇用を促進し、経済のバランスを取ることが目的ですよね。
でも、将来的に資本が安く手に入るようになり、その資本を使って雇うのが人間ではなく、AIエージェントやヒューマノイド・ロボットになったとしたらどうでしょうか? そうなると、社会は一気に不安定になり、持てる者と持たざる者の格差がますます広がることになります。
[モー・ガウダット]
その通りです。ただ、それに対処するための戦略を持つ国や地域も、世界にはいくつか存在します。
[ピーター・ディアマンディス]
あなたの最近の著作『Unstress』、このテーマについては、今後のポッドキャストでも引き続き議論していきたいと思います。
最後に聞きたいのですが、これからの変化によるストレス――政府の政策変更、仕事の不安、米中関係の緊張など――に直面する人々に向けて、ポジティブにストレスを乗り越えるためのアドバイスをいただけますか?
[モー・ガウダット]
私の幸福やウェルビーイングに関する研究は、ちょっと独特なんです。いわゆるソフトな話題を説明するために、アルゴリズムやエンジニアリングの手法、プロセスを多用しています。
ストレスについて考えたとき、最初にやるべきことは「ストレスとは何か?」を明確に定義することでした。物理学的に見れば――ここで難しくするつもりはありませんが――ストレスというのは、単に物体にかかる力の大きさだけではなく、その力を受ける断面積によって決まります。つまり、どれだけの圧力を受けているかだけでなく、それに対処できるリソースをどれだけ持っているかが重要になるのです。
これは、人間にもそのまま当てはまります。ストレスとは、直面している課題の総量を自分のスキル、能力、人脈などのリソースで割ったものだと言えます。
年配の世代は、これを直感的に理解しているでしょう。20代で苦しんだ問題は、30代で解決できるようになり、40代では簡単に対処できるようになり、50代になると笑い話になる。問題そのものが変わったわけではなく、対処する自分自身の断面積が広がったからです。
だからこそ、私は皆さんにお願いしたいんです。これは哲学的な話ではなく、切実な訴えです。
今、私たちは未曾有の完璧な嵐のただ中にいます。地政学的な問題、経済の不安定さ、AIの進化、テクノロジーの加速度的な発展、そして仕事の変化――あらゆる側面で、かつてないほどの変革期を迎えています。
正直に言いましょう。簡単な時代にはなりません。挑戦の連続です。
でも、だからこそ私は皆さんに問いかけたいのです。伝説級のゲーマーのように、状況を冷静に見つめ、対策を考えることはできるでしょうか?
世界が目まぐるしく変化するなら、私たちもそのスピードに追いつけるでしょうか?
知 性が機械に移行していくのなら、その機械を理解し、AIを活用する方法を学ぶことはできるでしょうか? サリームの意見を取り入れて、私たちはリスキルしなければならない、と考えられるでしょうか? もし今、あなたが開発者なら、3年後には仕事がなくなるかもしれないと考え、今すぐにでも新しいスキルを身につけることはできるでしょうか?
確かに、私たちは文句を言いたくなることもあるでしょう。「サム・アルトマンを選んだ覚えはないのに! なぜ彼の決断が私の人生を左右するんだ?」と。私だって、そう思うことはあります。でも、それでは何も変わりません。もちろん、責任を問うべき人には責任を問うべきです。影響力の大きな技術を生み出す人々には、その責任を負う義務があります。しかし、最終的に重要なのは、今日、目の前にある現実にどう対応するかです。
私自身の例をお話ししましょう。
私は作家であり、思想家です。伝統的な作家の仕事とは、新しいコンセプトを考え、それを深く掘り下げ、文章にまとめることでした。
でも、もうその時代は終わりました。
今や、私がどんなに深く考えても、AIのほうが速く、より多くの情報を処理し、優れた文章を書くことができる。もはや、私は、最も知的な存在ではなくなったのです。
では、それは何を意味するのでしょうか?
それは、私自身が根本から変わらなければならない、ということです。
これからの私は、もう紙の本をメインに出版しません。紙の本は最終的な形にはなるかもしれませんが、最初の発表手段にはしません。
代わりに、私は、人とのつながりに全力を注ぎます。
新しい本『Alive』は、まずSubstackで公開します。読者が議論に参加し、コメントし、私に異議を唱え、「バカじゃないのか?」と指摘されながら、共に作品を作り上げる形にするのです。
そして、私はAIとともに本を書いています。単にAIに何かを生成させ、それを自分のものとして発表するのではなく、AIと議論し、時には私が勝ち、時にはAIに負かされながら、一緒に作り上げていくのです。
これが、新しい世界に適応する方法です。
世界は変わります。そして、作家という職業もまた、再定義されるのです。
だからこそ、私は自らを再定義します。
そして皆さんにも、こう問いかけたい。
「今日の自分を見つめ直し、自らを再定義しよう。」
「時代の波に先回りしよう。」
「そして、その波をディストピアではなく、ユートピアにするために、倫理的に行動しよう。」
[ピーター・ディアマンディス]
それは素晴らしい考えですね。そして、この話を締めくくるのにふさわしい言葉だと思います。まだまだ話したいことはたくさんありますし、次の対話を楽しみにしています。モー、数週間後にステージでお会いできるのを楽しみにしています。サリーム、あなたも同じく、兄弟。
そして、リスナーの皆さん、本当にありがとうございました。
私たちは、未踏の領域に足を踏み入れています。
この新しい時代において、私たちが何を語り合うのか、どのようにお互いと関わり合うのか、そして、これから登場する機械たちとどう向き合うのか――それらすべてが、これまで以上に重要になります。
この対話が、皆さんに少しでも未来へのヒントを与えられたなら嬉しいです。そして、それ以上に大切なのは、皆さん自身がこの未来をどう導いていくか、その選択の力を持っていると感じてもらえることです。
未来には、オン・オフのスイッチはありません。スピードを自由に調整できるダイヤルもありません。私たちにできる最善のことは、自分たちが望む未来へと舵を切ることだけです。
皆さん、本当にありがとう。いつもながら、素晴らしい時間でした。
[モー・ガウダット]
こちらこそ、ありがとうございました。本当に楽しかったです。素晴らしい対話でした。
(以上)
2. オリジナル・コンテンツ
オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご視聴になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。
Peter H. Diamandisより
(Original Published date : 2025/02/28 EST)
3. 関連コンテンツ
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