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「AWSでAIモデルを動かすということ」マット・ガーマンCEOインタビュー

 2025年8月18日に配信された AWSのマット・ガーマンCEOを招いて行われたマシュー・バーマン氏のインタビュー・コンテンツを紹介します。
 他のハイパースケーラーのAIに対する取組みに比べ、AWSのAIの取組みは、あまりメディアにも取り上げられる頻度は少ないようなイメージがあるかもしれませんが、決してそんなことはなく、抜け目なく全方位に展開し、顧客ベースもソリューションも拡大傾向にあります。
 そんなAIモデルを動かすプラットフォーマーとしてのハードウェアやソフトウェア、そしてAIソリューションや顧客に対して心掛けていることに関し、マシュー・バーマン氏とマット・ガーマン氏の会話が繰り広げられ居ます。尚、この会話の主要なテーマとそれぞれの論点は以下となります。
 ご参考下さい。


(1)AIと仕事の未来(特にホワイトカラーとエンジニア)

  • AIは大量解雇を引き起こすのか、それとも人間の能力を拡張するのか?

  • AIによる生産性の飛躍的向上は、企業の新規採用にどのような影響を与えるか?

  • 過去の技術革新と比較して、AI革命の「変化のスピード」は決定的な違いとなるか?

  • AI時代に個人が生き残るために必要なスキルや心構えは何か?

 
(2)AWSのAI戦略(インフラ、シリコン、モデル)

  • AIのコンピューティング需要において、最も成長している分野はどこか?

  • 競争の激しいAIチップ市場における、AWSのカスタムシリコンの優位性とは何か?

  • 無数に存在するAIモデルの中から、AWS(Bedrock)はどのように顧客に価値を提供するのか?

  • AWS自身がフロンティアモデルを開発する場合、パートナー企業(Anthropic, Meta等)との関係はどうなるのか?

 
(3)AIモデル市場の動向と評価

  • オープンソースモデルとクローズドソースモデルの性能差や関係性は今後どうなるか?

  • AIモデルの利用価格は、将来的にシリコンと電気代に収束する「コモディティ化」へと向かうのか?

  • 既存のベンチマークはAIモデルの真の能力を評価できているか?

  • モデルを評価する上で、本当に重要な指標は何か?

 
(4)AIエージェントの未来とAWSの取り組み

  • AIエージェントが、再現性をもってビジネスに価値をもたらす具体的なユースケースは何か?

  • 企業がAIエージェントを大規模に導入する上での技術的な障壁は何か?

 





1. インタビュー


[マシュー・バーマン]

 マット、本日はお越しいただき、本当にありがとうございます。感謝しています。

 

[マット・ガーマン]

 いえいえ、お招きいただきありがとうございます。



(1)AIと働き手の未来

ホワイトカラーとエンジニア


[マシュー・バーマン]

 まず、仕事の未来とホワイトカラーの仕事についてお話ししたいと思います。ホワイトカラーの大量解雇が目前に迫っていると考える方から、ユートピアのような未来を信じる方まで、非常に幅広い意見があります。あなたはその中でどのようにお考えですか。また、その理由もお聞かせください。

 

[マット・ガーマン]

 そうですね。テクノロジーの世界にいる人間としては、今ほどエキサイティングな時代はないと感じています。そして、産業全体を見渡しても、私はかなり楽観的な立場です。まず、そう申し上げておきます。

 AIやテクノロジーにおける数々の進歩は、仕事の効率性、有効性、そして業務遂行能力を向上させる、計り知れない可能性を秘めていると考えています。テクノロジーが約束するのは、多くの人々が日々の仕事で行っている骨の折れる作業を取り除くことです。現在の多くのホワイトカラーの仕事を見てみると、人々が時間を費やしていることの大半は、仕事のやりがいとして語るようなものではありません。特定のシステムに数字を入力したり、報告のためにレポートをまとめたり、あるいは、自分が取り組みたいことを理解するために大量の情報を照合したりといった作業は、やりがいのある仕事とは言えません。しかし、今日ではそうした作業が、仕事時間の大部分を占めています。私の見解では、AIはまさにその部分を助けてくれるのです。

 人々は、創造的な側面や、物事を推進する側面、興味深い分析を行うといった、自分が本当に好きな仕事の部分にもっと時間を費やしたいと思っているはずです。好きではない部分には時間をかけたくないのです。しかし、今日では、それらの作業は必要不可欠です。あなたの仕事、私の仕事、そして他の多くの人々の仕事において、ほとんどすべての仕事で必要な部分なのです。もし、その部分を縮小して、人々がもっと情熱を注げることに集中できる時間を与えられれば、それは企業にとっても、個人にとっても価値を生み出します。そして、人々は自分の仕事をより一層楽しめるようになると思います。

 ですから、私は非常に楽観的です。これは、誰もが職を失い、ロボットが世界を動かすようになるといった話ではありません。私たちは、おそらくそのような結末には至らないと考えています。むしろ、企業はより効率的になり、人々もより効率的になって、自分が情熱を注げることにもっと多くの時間を費やせるようになると、大いに期待しています。

 

[マシュー・バーマン]

 私も楽観的なので、そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。多くの人は、人々の日常業務の広い範囲を自動化すれば、企業としてできることは格段に増えるけれど、それはもう新たな採用をしなくなるということなのか、と考えます。チームの誰もが生産性を大幅に向上させる未来において、採用についてはどのようにお考えですか。

 

[マット・ガーマン]

 そのようなことは一概には言えないと思います。どの会社にも当てはまる唯一の答えがあるとは思いません。しかし、産業の歴史を振り返れば、これまでにも大規模な効率化が何度も行われてきました。そして、そうした変革のたびに、移行期間というものが存在しました。より重要になるのは、人々が柔軟性を持ち、学ぶ意欲を持ち、自分の仕事が少し変わるかもしれない、仕事の構成要素が少し変わるかもしれない、ということを受け入れる意欲を持つことだと思います。

 2年前にしていた仕事が、2年後の仕事とまったく同じ構成要素であるとは限りません。しかし、コンピューターがあり、自動化があり、ロボット工学があるからといって、今日の世界で大量の失業が起きているわけではありません。仕事はたくさんあり、実際には、より高給の仕事に就いている人々もいます。そして、経済全体ははるかに大きくなり、平均して誰もがより良い状況になっています。ですから、そのように考えるべきだと思います。

 馬鹿げた例ですが、昔は、多くの人々が計算に膨大な時間を費やしていました。今ではExcelがありますが、計算エンジンがすべての作業を行うからといって、多くの人が職を失ったわけではありません。人々は、Excelが計算を行うツールだと当たり前に考えています。

 AIはExcelのようなものとは非常に異なる、はるかに破壊的なテクノロジーですが、これはかつては一つの仕事でした。そしてそこに自動化が導入され、今では人々はより価値の高い仕事をするようになっています。そして、今日においても、まったく同じことが起こると考えています。ですので、私はその世界にワクワクしているのですが、しかし、それは人々がその不確実性を軽視しているわけではないということも意味しています。人々が心配していることは理解しています。

 そして、大切なことの一つは、そのテクノロジーを受け入れることです。テクノロジーを受け入れ、柔軟に対応し、それが自分の仕事をより速く、より良くするためにどのように役立つかを理解すればするほど、人々はその移行をうまく乗り越えられると思います。なぜなら、これは仕事のやり方にとって本当に強力なテクノロジーになるからです。

 私はいつも私たちのチームに言っていますが、AIはすべての産業、すべての企業、そしてすべての仕事を変革する可能性を秘めていると。しかし、それは仕事がなくなるという意味ではありません。それらを置き換えるのではなく、変革するということです。ですから、もしあなたがそのテクノロジーに積極的に関与せず、、活用せず、学ばなないようであれば、実際に職を失うことになるかもしれません。しかし、AIを活用し、自分の仕事を良くし、速くする、あるいは自分自身をより良く、速くするかを理解し、率直に実行に移し、自分がもっとやりたいと思うことを後押しするのであれば、それは企業にとっても、人々にとってもより良い世界が待っており、経済成長にもつながる世界だと考えています。

 

[マシュー・バーマン]

 世界を変えるテクノロジーの歴史的な例は数多くありますね。悲観的な人々は、AIが現在もたらしている変化のスピードは、これまでの技術的な変化とは全く異なると指摘するでしょう。しかし、その変化のスピードがホワイトカラー市場に本当に影響を与えるのでしょうか?その変化のスピードがこれまでの技術的な変化との差別化要因だと考えていますか?

 

[マット・ガーマン]

 このテクノロジーは本当に急速に進化しています。そして、人々はそれと共に、より速く動かなければならなくなると思います。ですから、それは挑戦です。それを軽視しているわけではなく、人々は変化のスピードに合わせて動き、そのことを受け入れなければなりません。

 ソフトウェア開発者の例を挙げさせてください。これらのコーディングツールがどういうわけか開発者を不要にしてしまうのではないかと心配している開発者の声を耳にしたことがあります。

 私の見解を申し上げると、私たちはソフトウェア開発者がより多く必要になるのであって、少なくなるとは考えていません。ソフトウェア開発者の仕事は少し変わるかもしれません。地下室にこもり、何週間も一人でコーディングするような、典型的なソフトウェア開発者の仕事はなくなるかもしれません。しかし、ソフトウェアを本当に知っている人材は必要です。ソフトウェアを良く知りながらも、エージェントが実際に一部のコーディングを行るような人々が多く出てくるでしょう。

 実際、2~3年後には、恐らくJavaコードを書くという仕事はなくなると思います。なぜなら、これらのツールはJavaコードの作成に非常に長けているからで、これらのツールは、問題を分解し、何を構築するかを決定し、それをまとめ、返ってきたJavaコードを見て、それが望むものと完全には一致しないと判断し、エージェントにそれを実行させ、複数のエージェントを調整する。このようなことが、ソフトウェア開発者の仕事により近いものになるでしょう。そして、その人は、はるかに多くの価値を生み出すことができるようになります。それはその人の能力が向上するからです。

 自分の頭の回転の速さや、何かを実際に行う速さに不満を感じたことが何度ありますか。アイデアを思いつき、それを実行に移したいと思っても、物事を実行するには時間がかかります。もし、創造的な人々が問題を解決し、興味深いアプリケーションや結果を開発する能力を解き放つことができれば、それを得意とする人材を持つ価値ははるかに高くなります。

 なぜ企業は、そのような人々を手放したいと思うのでしょうか。企業は、そのような人がもっと増えることを非常に喜ばしく思うでしょう。もちろん、これらのツールをどのように使うかを考え、移行できる人材が必要です。しかし、私の経験では、ほとんどの人は最初のハードルを越えることができれば、さらにエキサイティングになり、本当に能力を向上させ、より速く創造し、構築することが可能になります。

 

[マシュー・バーマン]

 あなたのようなビジネスリーダーの視点からすると、その人が突然5倍、10倍も生産的になったとしたら、おそらく考えるのは・・・

 

[マット・ガーマン]

 その人を手放したいとは思いませんよね。そのような生産性を減らしたくはありません。

 

[マシュー・バーマン]

 1ドルに対する投資収益率が10倍になって返ってくるのですから、さらに重点的に投資したいと思うことでしょう。

 

[マット・ガーマン]

 ええ、そのような人材を減らしたいと思うのは、理にかなっていません。

 

[マシュー・バーマン]

 その楽観的な見方は素晴らしいです。では、エンジニアリングに特化した話に移りましょう。現在、AWSのコードのどのくらいがAIによって書かれていますか。また、「AIによって書かれた」という定義も教えていただけますか。話す相手によって変わる可能性がありますので。

 

[マット・ガーマン]

 この1~2年、人々はAIによって書かれたコードの行数を自慢することに夢中になっているように思いますが、それは少し馬鹿げた指標です。AIは無限に行数を書くことができますが、それが質の悪いコードである可能性もあります。ですから、それは最適な指標とは言えません。コードの行数を測ることは、これまでも最適な指標ではありませんでした。多くの場合、コードの行数は多いよりも少ない方がはるかに良いのです。ですから、なぜそれが人々が自慢したがる魅力的な指標なのか、私にはよく分かりません。

 私たちに関して言えば、私が見た最後の指標では、開発者の80%以上が、何らかの形でワークフローにAIを利用しているということです。単体テストの作成であったり、ドキュメント作成の補助であったり、コードの作成であったり、あるいはAmazon Q CLIKiro IDEのような、エージェンティック・ワークフローで、エージェントが実際にコーディングを行い、共同作業をするということもあります。そして、その数字は毎週上昇しています。ですので、最新の数字ではないかもしれませんが、当社の開発者の80%以上が、Amazonの顧客向けの開発において何らかの形でAIを利用しています。

 

[マシュー・バーマン]

 エンジニアたちは、自らスキルアップし、これらの新しいツールを使おうと積極的に求めているのでしょうか。それとも、彼らを支援するための教育プロセスやプログラムも用意されているのでしょうか。

 

[マット・ガーマン]

 その両方です。Amazonは非常に大きな会社ですので、従業員が皆同じというわけではありません。しかし、Amazonの開発者の大多数は好奇心旺盛だと思います。ですから、AIコーディングツールを使ったことがないという人は、ゼロもしくは、ゼロに近いでしょう。

 自分の仕事を完全に変革するためにそれを本当に活用している人がどれくらいいるか、あるいは一部の作業に利用しているだけなのか、という点については、教育も重要になってきます。

 一部の従業員は、本当に深く掘り下げて、何が有効かを理解しており、そこにはある程度の学習曲線が存在します。仕事のやり方を変える方法や、何が自分を加速させ、何が減速させるのかを理解することが必要です。

 第一世代のコーディングツールを使っていて、袋小路に入り込んでしまい、後戻りが非常に難しくなる例はたくさんあります。なぜなら、それは非常に線形的なプロセスであり、ツールは、あなたがバイブ・コーディングをする際にコードを生成しますが、あなたは「これがやりたいことではない」と気づき、後戻りする簡単な方法がありません。その場合は、ただ別の方法を探さなければなりません。

 

[マシュー・バーマン]

 ええ、そうですね。

 

[マット・ガーマン]

 Kiroでは、私たちがエージェント的なコーディングを第一に考えるメンタリティの中で行ってきたことの一部として、まず構築したいものの仕様書から始めます。そして、ツールと協力してその仕様書の一部を実際に構築していきます。感覚でコーディングを進める中で、ツールが仕様書の一部を自動的に変更することもありますが、それでも仕様書が中心にあり、いつでもそこに戻って側面や機能などを変更することができます。

 そして、私たちはその中に光明を見出しました。そのクールなことの一つは、若手の開発者に対して、優れたコーディングの実践方法や、物事の考え方を指導することができることです。

 私が非常に情熱を注いでいることの一つであるリーダーシップグループでの話があります。

 彼らは、「AIを使えば、社内の若手を全員置き換えることができると思う」と言いました。それに対して私自身は、「そのようなことは私が今まで聞いた中で最も馬鹿げた話である」と思いました。

 彼らはおそらく最もコストのかからない従業員で、AIツールに最も積極的に取り組んでいます。そして、10年後、何も築き上げず、何も学ばなかった人材という状況で、どうやってうまくいくのでしょうか。

 私の考えは、大学を卒業したばかりの若者を採用し続け、ソフトウェアの正しい構築方法、問題の分解方法、そしてそれらについての考え方を、これまでと同じように教えるべきであると考えています。Kiroのようなツールがもたらす利点の一部は、ベストプラクティスを指導し、より経験豊富なエンジニアと共に、これらのシステムの構築方法を学ぶことができる点にあります。

 


(2)AWSのAI戦略

インフラ、シリコン、モデル


[マシュー・バーマン]

 インフラ構築を計画する上で、どこからリソース利用が発生しているかを理解することは重要だと思います。

 では、成長の面ではどのような状況が見られますか?強化学習でしょうか?推論でしょうか?トレーニングでしょうか?最も大きな成長はどの分野から来ているのでしょうか?

 

[マット・ガーマン]

 今日の成長のほとんどは、最終的には推論から来ています。つまり、エンドプロダクトを使用する顧客によるものです。誰もがモデル構築の新しい技術、それが強化学習であれ、ファインチューニングであれ、学ぶことを楽しんでいますが、実際の利用ボリュームの大部分はエンドユーザーからもたらされます。最終結果としての推論です。

 そしてそれには、より安価で効率的に使用でき、より高性能で、よりコスト効率の高い、より優れたモデルをどのように作成するかという、多くの要素が関わってきます。それは、この分野に非常に注力している多くのスタートアップや、カスタムモデルを作成し、多くのモデルを組み合わせる方法を考えている大企業など、別の範疇にあります。

 しかし、コンピューティングの大部分は、率直に言って、それらがすべて組み合わさった後、顧客が質問のクエリを投げたり、アプリケーションと対話したり、ワークフローを実行しようとしたりすることによって生み出されており、それらが使用量のほとんどを占めています。

 そして私たちは、これらすべての要素に注力しています。インフラや電力の観点から見ると、強化学習、ファインチューニング、推論のいずれに使用されているかは、実際にはあまり関係ありません。コンピューターは、どの目的で使われているかを気にしませんから。

 これらのプラットフォームのほとんどは実際には統合されつつありますが、ネットワークの一部には違いがあり、大規模なパイプラインを構築する際に必要になるかもしれません。

 

[マシュー・バーマン]

 同じシリコンで、これらすべての異なるニーズに対応できるということですか。

 

[マット・ガーマン]

 ええ、その通りです。ですので私たちはTrainiumを構築しています。Trainiumは、名前は良くないかもしれませんが、推論とトレーニングのための素晴らしいプラットフォームです。そしてそのことは多くのNVIDIAチップにも当てはまります。同じサーバー群が両方ともに最適です。

 

[マシュー・バーマン]

 カスタムシリコンについてもう少しお話ししましょう。これは明らかに大きな差別化要因だと思います。自社のカスタムシリコンは、例えばGoogleのTPUのような競合他社の製品と何が違うのでしょうか。コストですか、スピードですか、それとも製造能力でしょうか。

 

[マット・ガーマン]

 カスタムシリコンについては、常に顧客のことを考えてから始めます。競合のことは考えず、顧客が何を望んでいるかを考えます。顧客と話すと、彼らは最も幅広い選択肢を求めています。どのような機能があるのか、どのような価格帯があるのか、価格と性能のトレードオフはどうなのか、ということです。そして、単一のソリューションが、すべての顧客のすべてのワークロードにとって最適であることは、めったにありません。私たちのカスタムシリコンの旅路は、実はNitroカードを最初に構築した時に始まり、最初のカスタム製品を構築してから、もう10年になります。

 

[マシュー・バーマン]

 アンナプルナ(Annapuruna)の買収ですね。

 

[マット・ガーマン]

 アンナプルナは、私たちがシリコンチームを立ち上げるきっかけとなった買収企業です。これにより、すべての仮想化機能をオフロードすることができるようになりました。高価なx86コアを使用する代わりに、ネットワーク仮想化、VM仮想化、ストレージ仮想化などをオフロードしました。これにより、プロセッサからそれらすべてを移動させることで、顧客にはるかに優れたパフォーマンスを提供できるようになりました。顧客はEC2インスタンスからベアメタルに近いパフォーマンスを得ることができ、他のクラウドプロバイダーの製品とは大きく異なる、はるかに優れたセキュリティ体制を確保しました。これは10年経った今でも、私たちにとって非常に重要な差別化要因です。そして、私たちはそれを気に入り、汎用プロセッサを構築することにしました。

 これらはARMコア上に構築され、GravitonというカスタムARMプロセッサの開発につながりました。そして、Graviton 2が、私たちの最初の本格的なエンタープライズ向け汎用プロセッサであり、それは大成功を収めました。実際、上位顧客の大多数は、CPUフットプリントの一部またはすべてをGravitonで運用しています。私たちは、依然として膨大な数のIntelプロセッサやAMDプロセッサも販売していますが、この低コストのオプションを持つことで、現在のGraviton 4プロセッサは、絶対値で最高のx86プロセッサよりも20%高速でありながら、価格は20%低く設定することが可能となっています。これは顧客にとって非常に大きな価値提案です。特定のIntelコードや、IntelやAMD向けのカスタム設計に依存するワークロードもまだあるため、多くの顧客は依然としてそれらのプラットフォームで優れたパフォーマンスを発揮し、愛用しています。

 そして約5年前、当時AI(生成AIではなく)のワークフローの台頭を見て、私たちはAIチップを構築して補完すべきだと考えました。私たちは世界で初めてNVIDIAをクラウド環境を通じて提供したクラウド・プラットフォーマーであり、その人気を見て、顧客はNVIDIAのGPUに代わるものを求めるかもしれないと考え、最初のAIアクセラレーターチップを構築しました。その最初の製品がInferentiaで、それは推論専用でした。少しパワーの低いチップでしたが、最大の顧客はAlexaで、推論コストを約70%削減することができました。それはAlexaデバイスに話しかける際のコストです。

 その時、私たちは何かを掴んだと確信し、そして、最初のトレーニングチップと位置付けたTrainium 1を構築しました。そこでは多くの学びがありました。それは主に、ソフトウェアエコシステムがこれらのデバイスに書き込めるようにするためのものでした。そして今、私たちは第二世代のTrainium 2に取り組んでいます。

 今日でも、AWSの顧客の大多数はNVIDIAを使用しており、それは今後も長く続くと信じています。彼らは素晴らしいチーム、素晴らしい製品、素晴らしい実行力を持っています。そして、多くの顧客はNVIDIAエコシステムでの利用を楽しんでいます。

 

[マシュー・バーマン]

 それはCUDAの優位性によるものでしょうか。

 

[マット・ガーマン]

 CUDAは間違いなく、素晴らしいソフトウェア製品です。彼らのチップに書き込むための優れたインターフェースであり、非常に優れたものです。そして、私たちの最大手の顧客の中には、Trainiumから得られるコストと便益のトレードオフを非常に気に入っている方々もいます。Anthropicのような企業や他の企業も、Trainiumを大規模に活用しています。

 また、私たちはBedrockモデルの多くを動かすために、舞台裏でTrainiumを使用しています。これはサーバーレス推論の世界で、顧客は舞台裏のチップを知ることなく、私たちがそのコストパフォーマンスの利点を顧客に提供することができます。

 したがって、私たちは、顧客に提供する選択肢の自由度が強みになると考えており、時間とともにさらに多くの選択肢を追加し続けることで、顧客にさらなる価値を提供できるように努めているのです。

 

[マシュー・バーマン]

 GoogleがTPUチップを第三者に販売するかもしれないという噂がありますが、AWSが実際にカスタムシリコンを第三者に販売し、彼らにインフラを構築させるようなことは想定されますか。

 

[マット・ガーマン]

 絶対にないとは言えません。私は何事に対しても絶対にはないとは言わないという考えを持っています。そのモデルは興味深く、いつかそうするかもしれません。

 今日、私たちは自社環境のチップをサービス販売することで、多くの利益を得ています。考えてみれば、これは大変な大きな簡素化といえます。マーチャント・シリコンを構築したり、異なる環境で動作しなければならないものを構築する場合、さまざまなサーバープラットフォーム、データセンター環境、そしてファームウェアのアップデートなどの心配をしなければなりません。

 一方で私たちは、自社の唯一の環境のために構築すればいいのです。それはAWSのデータセンターにあり、AWSのサーバーで、AWSのネットワークを持っています。ですから、これは非常に簡素化されたスタックであり、サードパーティ製品の販売には多くの複雑さが伴うことになります。但し、第三者に販売することが絶対にないとは言えません。

 

[マシュー・バーマン]

 アンナプルナの買収について少し触れたいのですが、これはおそらく外部では少し過小評価されているように思います。

 

[マット・ガーマン]

 私はそうは思っていません。

 

[マシュー・バーマン]

 もちろんそうでしょうね。

 ただ、生成AIが生まれるずっと前の当時、何を見ていたのかお聞きしたいのです。自社でカスタムシリコンを構築する必要があるかもしれないと、ある種先見の明があったわけですが、それはどのようなものだったのでしょうか。そのチームに何を見出し、どのようなプロセスだったのか、少しお話しいただけますか。

 

[マット・ガーマン]

 あのチームについて私たちが気に入ったことの一つは、彼らが非常にミッション・ドリブンであり、Amazonの文化と非常によく融合すると考えたことです。

 当時、先ほど申し上げたように、私たちは仮想化機能をオフロード・カードに移行するというアイデアを持っていました。そして、市場でこのような製品を持っているところを探しましたが、誰もこのアイデアを持っておらず、誰もこの製品を作っていませんでした。しかし、アンナプルナは、仮想化されたネットワークを提供できるカードを構築していました。それは、コアを搭載した高性能なネットワークカードのようなものでした。

 私たちはその製品に注目しました。汎用的に書き込みができるARMコアが搭載されていました。そして、私たちは、EC2に接続するEBSボリュームや外部ブロックストレージ製品の仮想化をオフロードするためにも、それを利用できるというアイデアが生まれました。彼らとそれがどのように機能するかについて話し合うにつれて、私たちはスタートアップとして彼らと協力し、共同で設計を進めることをしました。そして、彼らのチームと本当に意気投合しました。

 彼らは信じられないほど賢く、非常に先進的で、たくましく、そして非常に顧客志向でした。そして、彼らは大きなビジョンがあり、その大きなチャンスはどこにあるかを考えたとき、私たちは買収を決断しました。そして、それはおそらく私たちがこれまで行った中で最高の買収でした。

 

[マシュー・バーマン]

 間違いなく最高の買収の一つだと思います。

 

[マット・ガーマン]

 ちなみに、そのチームのほとんどは10年経った今でもAmazonで働いています。これは、私たちがこのような企業を買収する際に非常に重視することの一つです。つまり、「私たちがこれからやろうとすることに情熱を持っているか?」ということです。私たちが気に入ったのは、彼らが私たちと一緒に大きなビジネスを築き、AWSを構築したいと考えていたことです。私たちはそのことにエキサイティングし、彼らもエキサイティングしていました。そして、彼らは今でも私たちと一緒に働いているのです。

 

[マシュー・バーマン]

 素晴らしいですね。

 さて、これらのカスタムシリコンにロードされるモデルについてお話ししましょう。新しいモデルを見て、その推論を提供するかどうかを決定する際、どのように判断されていますか。

 

[マット・ガーマン]

 今日の時点では、最終的には誰もが規模を拡大しているため、トレードオフを考慮しなければなりません。しかし、理想を言えば、顧客が利用できるすべてのモデルを提供したいと思っています。顧客には、世の中にある最高のモデルの中から、どれでも選べるようにしたいのです。

 そして、このようなモデルは、今後もますます増えていくでしょう。非常に大規模なフロンティアモデルは、構築に非常に費用がかかるため、ほんの一握りしか存在できないでしょう。しかし、特定の目的に特化したモデルはたくさん登場するはずです。実際、この1ヶ月で、エージェント的なワークフローを作成するWriterのような新しいスタートアップをいくつかBedrockに追加しましたし、動画の理解を行うTwelveLabsも追加しました。そして、今後もさらに追加していくと思います。コーディングに特化したモデルを開発しているPoolsideのような顧客もいます。また、画像や動画生成で興味深い取り組みを続けるStabilityや、現在最高の動画生成モデルの一つを持つLuma AIなど、長い裾野を持つ企業もいます。私たちは、Bedrockでモデルを追加し、サポートし続けています。誰もがサポートできるようにしたいという思いはありますが、限界があることも承知しています。

 今日、マーケットプレイスで行っているように、モデルはSaaSアプリケーションや他のアプリケーションに似ていると考えることができます。私たちは、AWSマーケットプレイスでそれらすべてのアプリケーションを利用できるようにしたいと考えていますし、実際にそうしています。

 SalesforceやServiceNowのような大規模なアプリケーションから、2人体制の小さな会社が構築して公開した小さなアプリケーションまで様々です。それが私たちの目標であり、世の中にあるすべてのモデルを利用できるようにしたいと考えています。中には、最終的に合意が必要なものもありますので、今日利用できるモデルがすべてではありません。一部は他の場所に専有されています。しかし、将来的には、すべてを利用できるようにしたいと考えています。

 

[マシュー・バーマン]

 なるほど。先ほど、エンジニアリングチームについて考える際、より小規模で専門化されたチームの方が効果的だとおっしゃっていましたね。モデルの市場に目を向けると、OpenAIの一部の研究者は、オムニモデルの未来、つまり一つの巨大なモデルがすべてを支配する未来が最も可能性が高いと考えています。私は、むしろその逆で、多くのユースケースに対して、より専門化されたモデルが存在するようになると考えています。この点について、どのようにお考えですか。特に、どのモデルをAWSに導入し、推論を提供するかを考える上で、この問題をどのように捉えていますか。

 

[マット・ガーマン]

 それはおそらく2、3年前の一般的な見方だったと思います。私たちは生成AIの非常に初期の段階から、顧客は多くのモデルを使いたがるだろうという見解を長らく持っていました。そして、今日のほとんどの顧客のシステムを見ると、彼らは多くのモデルを使用しています。多くの場合、彼らは大規模な主要モデルを推論や計画に使用しますが、その後、Llamaモデルからカスタムチューニングされたものや、AnthropicモデルやNovaモデルから蒸留されたものなど、特定のワークフローを非常によく理解しているモデルに仕事を振り分けます。そして、コスト、性能、能力のトレードオフを考慮し、専門家の混合や様々なモデルを使用しています。ですから、私たちはまだその初期段階にあると思います。

 現在、多くの企業が、このモデルに自社のデータセットを深く理解させたいと考えています。そこで、より良いファインチューニングを行う方法について私たちに相談があります。これを進めることにより、例えば保険のワークフローや支払いのワークフローなど、特定の分野について顧客と話す際に、そのモデルが自社のデータを深く理解している状態になります。彼らは自社の分野、顧客、ワークフローについて多くを知っており、モデルにもそれを知ってほしいのです。彼らは賢い知性のための汎用モデルを求め、さらにそれを自社のデータでチューニングしたいと考えています。

 そして、画像生成のような特殊なモデルについては、コストと性能をトレードオフさせたいのです。それは、汎用モデルとは別の、特殊なモデルです。ですから、ますますそのようなケースが増えていると感じています。

 また、エージェント中心の世界に移行するにつれて、モデルは非常に重要であり、これらの多くのことを動かすエンジンであることに変わりはありませんが、それが唯一のものではありません。

 今日、誰もがこれらのモデル開発者に夢中になっています。それは非常に斬新で興味深いからです。しかし私たちは、最終的には、その舞台裏のモデルを活用して、何か面白いことをするアプリケーションを求めるような世界に急速に移行していると思います。スキャフォールディング(Scaffolding)、ワークフロー、そしてビジネスに特化したカスタムの要素について考えるようになるでしょう。例えば、給与計算を処理しているADPのような企業は、映画制作を管理しているNetflixとは全く異なるワークフローを持っています。それらは異なるワークフローであり、それぞれに特化したカスタムのものを求めるでしょう。

 ですから、顧客と話す中で、AIシステムから人々が得るROIのほとんどは、彼らに代わって実際に作業を行うこれらのエージェント・ワークフローから得られるようになると考えています。そして、それらには、システムのメモリを管理したり、インタラクションを管理したり、何をしているかの監査ログを取得したりといった、まったく異なる一連の機能が必要になると考えています。

 

[マシュー・バーマン]

 なるほど。では、これらのモデルについて考える際、オープンソースとクローズドソースについてですが、御社はAnthropicのクローズドソースモデルを提供していますし、同時に多数のオープンソースモデルも提供しています。Metaは、フロンティアモデルはクローズドにし、それ以外はオープンにする方向に動いていると噂されていますし、OpenAIも同様です。

 オープンソースとクローズドソースのトレードオフについて、どのようにお考えですか。また、御社とAnthropic、OpenAI、Metaとのパートナーシップについては、どのようにお考えでしょうか。

 

[マット・ガーマン]

 私たちは、あらゆる企業と提携したいと考えており、そして、それらの企業すべてと素晴らしいパートナーシップを築いています。これらのモデルのほとんどは、実際にはオープンソースではなく、オープンウェイトです。要するに、自分のユースケースに合わせてこのモデルをどれだけカスタマイズできるかという点に尽きます。

 Llamaのようなモデル、そして今ではMistralなどの他のモデルの利点の一つは、高度なカスタマイズが可能であることです。自分のデータ持ち込み、追求したいユースケースでモデルを強化し、そしてカスタムワークフローを持つ、ということが本当の価値です。それが、自分で行えるオープンウェイトであれ、蒸留やファインチューニングを行えるAPI経由であれ、いわゆるクローズドソースモデルを自分のやりたいようにカスタマイズできるのであれば、それは私たちがNovaで行っていることの一部です。ウェイトを見ることは必ずしもできませんが、実際には多くのカスタマイズが可能です。それが、一部の人々が今日Novaを好んで使用する理由です。

 そして、時間が経つにつれて、誰もが自分のモデルをカスタマイズしたいと思うようになるでしょう。人々がAPIを優先するか、プロフェッショナルサービスを利用するか、あるいはウェイトを公開して人々に自分たちでやらせるか。それは、価格設定と、それがどれだけマネージド環境であるかの違いに過ぎないと思います。しかし、根本的には、人々はこれらのモデルをカスタマイズしたいと考えており、すべてのモデルが何らかの形でそれを可能にするようになると思います。

 

[マシュー・バーマン]

 Novaについて言及されましたが、御社は素晴らしいモデルをお持ちです。AWSが、クローズドソースの研究所が提供するフロンティアモデルに対抗する、あるいは新たな選択肢を提供するような、真のフロンティアモデルを構築することは考えられますか。

 

[マット・ガーマン]

 私たちは、顧客に選択肢を提供することが重要であると考え続けています。そして、私たちがNovaで構築しているもので、ユニークで差別化された機能を提供できると信じていますし、そこで行ってきたことに非常に興奮しています。

 また一方で、AnthropicのようなBedrockで実行している多くのパートナーとのパートナーシップも非常に気に入っています。ですから、このモデルの組み合わせは、顧客にとって重要であり、今日、絶対に重要であり、時間が経つにつれてさらに重要になると考えています。ですから、顧客に継続的に差別化された機能を提供できると考えられる限り、投資を続けていく分野であると考えています。

 

[マシュー・バーマン]

 なるほど。もし御社が競争力のあるトップレベルのフロンティアモデルを構築することになった場合、AnthropicやMetaとの関係はどのように変わるとお考えですか。

 

[マット・ガーマン]

 Amazonが素晴らしいことの一つは、過去19年間にわたりAWSで非常にうまくやってきたことであり、私が誇りに思っていることは、私たちが信頼を築き、時には競争しながらも、共に顧客をサポートし続けるパートナーエコシステムを構築したことです。そして、その場合もそうなることを期待しています。

 私たちは、最初から人々が私たちの上に何かを構築することを知っていました。私たちが機能を構築し、彼らが機能を構築する。時にはそれらが対立することもあります。SnowflakeやMongoDBのような素晴らしいパートナー、あるいは競合する他の多くの企業がいるかどうかに関わらず、です。コンタクトセンターの分野を見ても、私たちのConnect製品と競合する可能性のあるGenesisのような顧客がいますが、彼らは私たちの素晴らしいパートナーであり、彼らは私たちの上に構築しています。

 そして、私たちが約束するのは、いかなる特定の形でもあなた方を不利にすることはないということです。優れたコンピューティングへのアクセス、優れたストレージへのアクセス、優れたモデルへのアクセスを提供します。そして、私たちと競合するものを構築したからといって、良い価格を提供しないということはありません。適切なボリュームで、顧客が興味を持つようであれば、素晴らしい価格でサービスを提供します。そして、実際にこれまで、これらのパートナーの多くと素晴らしい市場投入戦略を築き上げてきました。

 このことは、私たちが学ぶのに少し時間がかかったことの一つです。現場を正しい方向に導き、どうすれば競合他社と真っ向から戦い、そして別のチームが世界で最高のチャネルパートナーになることができるのかを考える方法です。それが私たちの培ってきた力で、そのことは重要であり、その場合においても、それは真実であり続けるでしょう。

 


(3)AIモデル市場の動向と評価


[マシュー・バーマン]

 では、モデルの価格設定についてですが、業界の多くの人々は、結局は底値競争に過ぎないと言っています。いずれ、モデルの価格は、シリコンのコストと電気代に収束するだろうと。インフラの構築を考える上で、そのような流れはあなたの計算にどのように影響しますか。

 

[マット・ガーマン]

 それはあり得ないように思います。これらのモデルは、コモディティではありません。明日になったらコモディティになるのかも分かりません。実際、クラウドを例にとると、私たちが最初にクラウドを立ち上げたとき、誰もが、1~2年もすればこれらはただのコモディティになると言いました。しかし今日、実際にはそうはなっていません。

 可用性には違いがあり、機能や性能にも違いがあります。私たちは、顧客を新しい価格性能やその他の機能で喜ばせるために、革新を続けなければなりません。そして、モデルの提供者も同じだと思います。顧客に、Llama、Claude、そしてOpenAIのGPTを全く同じコモディティだと思いますかと尋ねたら、「いいえ、違います。多くの点で異なります」と答えるでしょう。そして、Lumaのモデルとはコモディティですかと尋ねると、「いいえ、もちろん違います」と。

 そして、さらに進むと、すべてが異なるとも言えます。そして、オープンモデルでさえ、MistralとLlamaはコモディティかと尋ねると、「いいえ」と答えるでしょう。それは異なるユースケースにおいては、どちらか一方を好むからです。

 ですから、誰もが新しい機能を追加し続け、革新を続けなければならないのです。しかし、クラウド環境と、機能を構築しているモデルの両方によって生み出されている価値は大きいと思います。そこには多くの価値があり、人々はそこから利益を得ることができるのです。

 

[マシュー・バーマン]

 オープンソースとクローズドソースに関する最後の質問です。オープンソースは、ベンチマークの総合的なパフォーマンスにおいて、クローズドソースに比べて約3ヶ月から6ヶ月遅れているように見えますが、この傾向は続くとお考えですか。最近、中国から発表されたいくつかのオープンソースモデルは驚異的で、その差を縮めているように感じられましたが、フロンティアのクローズドソースが常に先行するという傾向は続くと見ていますか。

 

[マット・ガーマン]

 ある時点において、クローズドソースであること、もしくは、オープンソースモデルであること自体に本質的な利点はありません。それは単なる選択です。中国のモデルは、彼らが持っていた最高のモデルをオープンソース化しましたが遅れていました。しかし、それらは非常に優れています。そして、多くの顧客がDeepseekの使用を好んでいます。Qwenは非常に優れたモデルだと思います。非常に印象的なモデルがいくつかあります。そして、それは単なる選択肢です。

 OpenAIがモデルをオープンソース化したのを見ましたが、それは彼らのフロンティアであるGPT-5よりも小さなモデルです。Anthropicはモデルをオープンソース化しないことを選択しました。Llamaはすべてのモデルをオープンソース化することを選択しました。

 では、Llamaがオープンソース化しているからといって、必ずしも他のモデルより遅れているのか? いいえ、それはたまたま彼らのモデルが、今日の最高のモデルにはまだ追いついていないというだけです。そして、Metaは最高のモデルを目指していると思いますが、それをオープンソース化するかどうかは分かりません。しかし、本質的なものは何もありません。それは単なる価値創造であり、企業として何をしようとしているのか、どこで価値を獲得できると考えているのか、ということです。

 

[マシュー・バーマン]

 面白い考え方ですね。

 

[マット・ガーマン]

 どこに着地するかは誰にも分かりません。あなたの方が私より詳しいかもしれません。

 

[マシュー・バーマン]

 オープンソースだから遅れているのではなく、遅れているからオープンソースにしている、ということですね。

 

[マット・ガーマン]

 Llamaの場合はまた話が違うかもしれません。中国発のモデルの一部に関しては、まさにおっしゃる通りだと思います。

 

[マシュー・バーマン]

 では、ベンチマークについてお話ししましょう。

 いくつかのベンチマークやモデルに目を向けると、モデルはこれらのベンチマークの多くを飽和させています。MMLUなど、これらのベンチマークは次々と打ち破られています。そして、新しいモデルでは一桁台のパーセンテージ改善しか得られないという状況にあります。これは、単に異なるベンチマークが必要だということの表れだとお考えですか。そして、それらのベンチマークはどのようなものになるのでしょうか。その点について、どのようにお考えですか。

 

[マット・ガーマン]

 そうですね、ベンチマークはコモディティを測定するのに特に優れていると思います。SSDの速さを測定する場合、ベンチマークは非常に役立ちます。IOレートやストリーミングスループットレートなどが得られ、それでほぼ十分です。しかし、物事が複雑になればなるほど、ベンチマークの性能は低下します。

 例えば、データベースの初期の頃は、TPC-Cベンチマークが素晴らしい指標とされていましたが、今ではどのデータベースベンダーも取り上げなくなりました。なぜなら、ベンチマークの段階を過ぎて、ユースケースに合わせてテストする必要があるからです。そして、モデルに関しても、おそらくその方向に進むでしょう。

 自分にとってどれが最適かを見極める必要があります。なぜなら、ベンチマークとして考えつくことが解決されると、そのベンチマークは、すぐに興味深いものではなくなってしまうからです。そして、私たちは急速にその点に近づいていると思います。なぜなら、これらのモデルにベンチマークで優れているように教えることは非常に簡単ですが、それが最高のモデルになるわけではないためです。

 

[マシュー・バーマン]

 なるほど。では、マットさんご自身は、新しいモデルを手に入れてテストする際、どのような個人的なベンチマークを用いていますか。どのようにこれらのモデルをテストしていますか。

 

[マット・ガーマン]

 私はおそらく、これらのテストに最適な人間ではありません。なぜなら、多くのことを試さなければならないと考えるからです。

 私の個人的なテストは、そうですね、私が使いたいものがたくさんあるので、生のテストをするときは、通常、アプリケーションの一部として使用します。私は、アプリケーションの一部として使うのを好みます。例えば、リサーチ能力を想定した場合、多くの考えをどれだけうまく統合し、それをドキュメントに書き起こし、首尾一貫したものを返してくるか。これらのことは私がテストで好んですることの一つです。それは、情報をどれだけ見つけられるか、私にどれだけ異なるアイデアを提示してくれるか、そしてどれだけうまく対話できるか、といった多くのことをテストできるからです。

 またスピードもその一つです。新しいモデルがどのようなものかテストしたいときに、気に入って実施しています。私は個人的に、これらのモデルの実装についてテストするのが好きです。

 ですから、モデルだけでなく、それがどれだけうまく統合されているかという点も重要で、例えば、私たちのパートナーの一つにPerplexityがありますが、どのモデルを使っているかすら分からないこともあります。彼らは素晴らしいUIを持っており、質問に答えている間や舞台裏で作業している間、考えていることを知らせてくれます。そして、そのことは、モデルと同じくらい、ますます重要になっていると思います。そして、彼らのチームはUIについて考え、それをPerplexityの検索に組み込むという良い仕事をしていると思います。

 ですから、純粋なベンチマークのようなものをテストするだけではなく、ベンチマーク・テストも興味深く、楽しいことではありますが、実際にはレイテンシーも重要になります。モデルが遅すぎると、ユースケースを満たすことができないので、実際には、私たちがやろうとしている様々なことにそれを適用し、どれがより良い結果をもたらすかを見る以外に、特定の答えはないのかもしれません。

 

[マシュー・バーマン]

 スピードは過小評価されているように感じます。誰もが品質について話しますが、私のユースケースの大部分では、答えにたどり着くまでのスピードが非常に重要です。

 

[マット・ガーマン]

 そう思う時もありますね。消費者が持つユースケースのほとんどはリアルタイムです。質問をすれば、すぐに答えが返ってくることを期待します。

 しかし、例えばADPのような企業が、給与計算のすべてのワークフローを処理するエージェントを使用する場合、スピードよりも正確性が重要になります。月末に処理すればよく、数日の猶予があるかもしれません。すぐに処理する必要はありません。しかし、正確性はより重要です。

 そして実は私たちは、数学的な証明に基づいたアプローチである自動推論をLLMに適用する機能を数週間前に発表しています。

 

 

[マシュー・バーマン]

 それについては読みました。とてもクールですね。

 

[マット・ガーマン]

 ええ、非常にクールです。そして、この二つの技術の組み合わせは本当に興味深いと思います。これは、スピードではなく正確性を追求する例です。このようなケースや、多くのエージェント的なワークフローでは、実際には非同期モードでも問題ありません。

 コーディングの世界でさえ、感覚でコーディングしているときは、レイテンシーが重要になります。入力すれば、すぐに返ってきてほしいと思うのです。

 エージェント中心の世界では、このタスクをやって、このタスクをやって、このタスクをやってください、と指示します。1時間後に結果が返ってきても問題ありません。なぜなら、その間に他の作業をしているからです。そして、返ってきたものを見て確認するのです。

 もちろん、3週間後に返ってきたら、それは遅すぎるでしょう。ですから、レイテンシーは常にある程度重要なものです。しかし、非同期であること、もしくは、もう少し長く考えることでより良い結果が得られることもあり、より低コストになるのであれば、それは状況次第です。ですから、消費者のユースケースにおいては、リアルタイムの同期性が絶対に重要です。しかし、非同期の結果でも問題ないエンタープライズのユースケースもたくさんあると思います。

 

[マシュー・バーマン]

 時間はどうですか。

 

[マット・ガーマン]

 あと4分です。

 

[マシュー・バーマン]

 ちょうど聞こうと思っていました。

 

[マット・ガーマン]

 では、急いで進めましょう。

 

[マシュー・バーマン]

 確認させてください。

 


(4)AIエージェントの未来とAWS


[マット・ガーマン]

 では、エージェントについて数分お話ししましょう。

 

[マシュー・バーマン]

 私はたくさんのエージェントを使ってきました。エージェントを使うのが大好きで、実際に自分のワークフローにもかなり応用しています。

 再現性があり、正確で、プラスのROIをもたらすエージェントの実装が見られるユースケースはどのようなものですか。

 

[マット・ガーマン]

 いくつかあります。一つは、先ほど少しお話ししたコーディングのユースケースです。

 エージェント的なコーディングは、開発者がその潜在能力を解き放ち、より多くのものを構築するための大きな機会となると考えています。ですから、私はエージェント的なコーディングに非常に期待しています。そこに大きな可能性と、顧客にとっての大きな可能性があると考えています。

 そして、エージェントを阻んできた問題の一つは、実際に一つを構築するのが少し難しいということです。そして、一度構築したら、それをスケーラブルな方法でどのように運用し、実行するのか。自分自身のために構築できるエージェントはたくさんあります。例えば、「メールを読んで、ここに入れて」といった、単純なルールベースのエージェントです。しかし、企業全体のエージェントを考えると、管理するのが少し難しくなります。

 私たちは、BedrockでAgent Coreという一連の機能を発表しました。これは、スケーラブルで、安全で、監査可能で、測定可能なエージェントを構築するためのビルディングブロックを提供するものです。例えば、完全にサーバーレスで、ゼロまでスケールダウンできる安全な実行環境があり、コンテナや安全でない環境ではなく、完全に安全なコンテナ内でエージェントを実行することができます。その安全な環境でエージェントを実行し、数百、数千、あるいはそれ以上の数にスケールアウトすることができます。また、短期および長期の記憶のための組み込み機能もあり、短期および長期の両方で実行している対話を記憶できます。

 エージェントゲートウェイのようなものもあり、他のエージェントや外部の他のシステムとの認証を行うことができます。実際にホストされたMCPサーバーや、他の種類の対話ケースを実行できるので、外部と対話する際に、セキュリティ境界と認証境界の両方を確保できます。また、組み込みのフローもあり、AWSのサービスやサードパーティのサービスに観測性を組み込むことができます。これは完全にオープンなフレームワークなので、どのモデルでも動作します。Geminiモデル、OpenAIモデル、Bedrockモデルで使用できますし、私たちのオープンソースフレームワークであるStrandsLangChainなど、あらゆる種類のフレームワークで使用できます。

 企業がこれらのエージェント・ワークフローを構築していないのは、すべてのスキャフォールディングを構築しなければならず、それが非常に困難だったからだと考えています。今では、人々がそれに群がり、「このようなものがあれば、ユースケースが本当に解放されるだろう」と考えています。

 ですから、ワークフロー処理、個人の生産性向上、マーケティング、営業など、あらゆるユースケースが存在しており、ほぼすべての業界で、人々がこれらを構築しているのが見られます。

 これらエージェント・ワークフローの多くは、人間が介在しており、今はまだ完全に自律的ではありませんが、これらはさらに自律的なものになり、人々がさらに多くのことを行えるようになる道筋が見えています。

 

[マシュー・バーマン]

 では、最後の質問です。私が話すAIのリーダーの方々によく尋ねるのですが、自動化によって仕事が奪われることや、AI全般について非常に心配している人々がたくさんいます。彼らにどのような励ましの言葉をかけますか。

 

[マット・ガーマン]

 それは、「自分自身を価値あるものにしなさい」という1点になります。これは価値創造の世界であり、AIやエージェントは、それ自体では価値あるものにはなりません。従業員を拡張させ、皆さんをより価値あるものにする方法において、価値あるものになるのです。

 ですから、誰かがマーケティングに優れているなら、その人にはキャンペーンをまとめるような雑務に追われるのではなく、マーケティングに専念してほしいのです。誰かがコーディングに優れていて、アプリケーションの構築が本当に得意なら、特定の言語を知っているからという理由ではなく、アプリケーションの構築が得意でなければなりません。人々は、それらの能力を学ばなければなりません。

 しかし、顧客の問題解決について考え、これらの技術や新しいツールを学ぶことができれば、仕事がなくなってロボットだけが働く世界になってしまうという心配はほとんどありません。

 

[マシュー・バーマン]

 マット、ありがとうございました。

 

[マット・ガーマン]

 こちらこそ、お時間をいただきありがとうございました。とても楽しかったです。

 

[マシュー・バーマン]

 ありがとうございました。

 



2. オリジナル・コンテンツ

 オリジナル・コンテンツは、以下リンクからご覧になれます。
尚、本投稿の内容は、参考訳です。また、意訳や省略、情報を補足したコンテンツを含んでいます。

Matthew Bermanより
(Original Published date : 2025/08/18 EST)



3. 関連コンテンツ



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だうじょん


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