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渇きの果てに…禁断のコンダクター   第9話


アダムスは、拳ひとつ分、離れて隣に座った。
 

……近い。
 
でも、まゆには触れようとしない。
 
その距離感が、まゆの感覚を敏感にしていく。
 
 

「……まゆさん」
 
名前を呼ばれる。
 
それだけで、身体の芯が熱を持った。
 
 

アダムスの指先が、ゆっくり頬へ伸びる。
 
触れる寸前で止まり、まゆの反応を確かめるように見つめた。
 


「……緊張してる?」
 
「……はい」
 

「帰りたくなったら、ちゃんと言ってくださいね」
 
その優しさが、余計に苦しかった。
 
 
アダムスは、急かさない。
 

……夫の顔が、一瞬だけ脳裏をよぎる。
 
同時に、アダムスに触れてほしいと思っている自分もいる。
 
 

まゆの呼吸が浅くなる。
 

アダムスの指先が、そっと頬へ触れた。
 
温かい。
 

その温もりが、皮膚からゆっくり内側へ染み込んでいく。
 
 

「……今日は、どうしますか?」
 
その声は穏やかだった。
 

まゆは答えられない。
 

ここから先へ進めば、もう元の自分には戻れない気がした。
 

頬に残る指先の熱だけが、身体の深い場所へ広がっていった。
 
 

「……今日は、ここまでにしますか?」
 
 
……このまま、帰りたくない。
 

…………まゆは、首を横に振った。
 


まゆは、ようやく自分の気持ちが固まった。
 
 
アダムスがゆっくり顔を近づける。
 

まゆは目を閉じた。
 
 
唇が、そっと重なる。
 

……軽く触れるだけのキス。
 
 

まゆの……もっと―

という気持ちが強まる。
 

その感覚に、自分自身が驚く。
 
 

二度目のキス。
 
重なる呼吸。
 
触れ合う唇。


舌先がかすかに触れた。
 

まゆの身体がびくりと震えた。
 
 

アダムスは、まゆの髪を撫で、背中をゆっくりさする。
 
その丁寧さが、まゆの逃げ場を奪っていく。
 
 

ブラウスのボタンへ指先が伸びる。
 

まゆは反射的に、その手を掴んだ。
 

「…だめ…」
 
まゆは思わず首を横に振る。
 
 

アダムスが動きを止めた。
 

「…今日は……ここまでにしますか?」
 
 
……まゆは言葉が出ない。
 
 

アダムスが、そっとまゆから離れようとする。
 

…離れたくない……
 

まゆは思わず彼の胸元へ身体を寄せた。
 
 
 

アダムスは、その瞬間を待っていた。
 
まゆを優しく抱き寄せた。
 
 
「……こんなの、初めてで……」
 
「……大丈夫」
 
低い声が、呼吸の奥へ落ちてくる。
 
 
「まゆさんの気持ちを大事にします」
 
その言葉だけで、胸がいっぱいになった。
 
 

まゆは震える指で、アダムスの頬へ触れた。
 
彼はその手に静かに口づける。
 
 
再び唇が重なる。
 
ゆっくりと

深く。
 
 
ブラウスのボタンが一つずつ外されていく。
 
アダムスの指が動くたび。

皮膚が敏感になっていく。
 

自分が“妻”であるということを忘れていく。
 
 
肩から布が滑り落ちる。
 
下着が露になる。
 
 
まゆは思わず胸元を手で隠した。
 

アダムスは、まゆを見つめていた。
 
 
「……綺麗です」
 
その一言が、息苦しいほど胸に響く。
 
 
久しく、そんなふうに見つめられたことがなかった。
 

アダムスは、まゆを優しくベッドへ導いた。


 


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