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本能が呼んだ仮の名前 前編


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    職場の飲み会


信彦は図書館で国家試験を受ける為の勉強📖をしてた。
自宅🏠でもいいのだが、信彦は学生時代から割と図書館を利用してる。
自宅は生活の場でもある環境なので誘惑もあり、なかなか集中出来ないが、ここはその為の場所なので、わざわざ足を運ぶ事を差し引いても、充分価値があり、モチベーションも上がる。

信彦はその女性と一瞬目が合った。
知らない人だが、女性は迷わず信彦に近付いてそのまま信彦の隣に座った。
「助けて下さい!」

女性の小さいが鋭い声と切迫感溢れる表情で信彦は何かを察し、周りの様子を見る。
どう見ても図書館とは縁遠い風貌の男が入って来た。

女性の顔がみるみる強張る。
信彦はとっさに
「遅いよ、みっちゃんもう 笑」
女性も機転を利かせて合わせてきた。
「ごめんねてっちゃん!電車一本遅れちゃって 笑、ちゃんと勉強やってる?」
「遅れて来て何言ってる! 笑」

信彦は女性と会話しながらも、目の端で男の様子をうかがう。隣にいる女性を追って来たが、まさか連れがいるとは…といった感じなのだろうか、明らかに女性に近付くのを躊躇してる。
それでも諦めきれずに、様子を視ているというところだろうか。
「これ見ろよ、勉強やってる感出まくってるだろ!」
「やってる感だけじゃ駄目だよ、感だけじゃ!笑」
女性は男に背を向けてる。
信彦は女性を見ながらも男を見ると、諦めたのか図書館から出て行った。

「出て行きました、もう大丈夫みたいです」
「良く状況がおわかりでしたね、ありがとうございました!」
女性が安堵の表情に変わる。
「いえ、何者ですか?」
「スカウトとか言ってましたけど怪しさマックスでしたから怖くて!」
「スカウトにしたってここまで追いかけてくるなんて、異常ですよ。とにかくいなくなって良かった」
「はい」

「びっくりした!いきなり知らない人が隣に座ってくるし、変な男は入ってくるし 笑」
「すみませんでした。目が合ったんで、この人しかいない!って。本当にありがとうございました」

「あなた、頭が良い!回転も早いし、僕のとっさの判断にすぐに合わせてきて!すみません、みっちゃんなんて呼んじゃったりして 笑」
「私のほうこそ、てっちゃんって 笑、お勉強のお邪魔して申し訳ありませんでした」

女性が立ち上がる。
「いえ、お気を付けて」
女性は深く一礼して向きを変える。
「あっ、念の為に反対側から出て行ったほうが…」
信彦は指をさしながら
「駅にも近いし 笑」
「ありがとうございます」
女性はもう一度お辞儀して去って行った。

信彦はまだ少しドキドキしてる。
あんな状況に出くわすなんて経験は、まずないだろう。
自分の予測と判断で、カップルと装ったのが良い結果になったから一安心だが、一歩間違えばそれが逆に仇となって信彦もろともとんでもない目にあった可能性もある。
それにしても、とっさに“みっちゃん”だなんて…信彦は思い出してクスッと笑った。
(中編へ続く)

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