本能が呼んだ仮の名前 (後編)落ちたフリしてナデナデされたい男
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本能が呼んだ仮の仮の名前 中編
『もしもし、みっちゃん?』
『あ、てっちゃん。何?もしかして国家試験、合格したの?笑』
『みっちゃん、今日何時頃仕事終わる?できれば直接報告したいんだけど』
『えー、今教えてくれないの?』
『会ってからのお楽しみってことで!』
『焦らすのね〜笑。明日なら大丈夫よ』
『じゃあ、この前会った駅の改札でいい?』
『わかった!』
改札手前でみっちゃんを見つけた信彦は、軽く手を挙げた。
みっちゃんもそれに気づき、胸の前で小さく手を振る。
その仕草に、信彦は少しキュンとする。
「ごめん、待った?」
「そうでもないよ 笑」
「良かった。みっちゃん美人だから、ナンパされて連れてかれたらどうしようかと思った」
「そんな心配いらないって。それより、何の国家試験だったの?」
「まあまあ、慌てない 笑」
「ほんと焦らすわね〜」
「とりあえず入ろう」
店内は混んでいて、カウンターしか空いていなかった。
「カウンターでも大丈夫?」
「全然へーき」
「じゃあ座ろう。みっちゃん何飲む?」
「サワーにしよっかな。てっちゃんは?」
「ビール。つまみも適当に頼もう」
店員を呼び、注文する。
ほどなくして、ビールとサワーが運ばれてきた。
「じゃあ、発表するよ」
「え、今?」
「不合格だったら、乾杯するの変でしょ?」
「あー……まあ、そうかも」
みっちゃんの表情が、少し曇る。
「実は僕が受けたの、“宅建士”」
「えっ!? あれって合格率低い難しいやつでしょ!?」
「うん、だいたい15%くらい」
「そんなの受けてたの!? 受けるだけでもすごいじゃん」
「いやいや……じゃあ、言うね」
みっちゃんが姿勢を正す。
「実は……」
そう言って、信彦は深く頭を下げた。
一瞬で察したみっちゃんは、優しく笑う。
「そっか……でもあれ難しいもんね。しょうがないよ。今日は私が慰めてあげる」
そう言って、信彦の頭をそっと撫でた。
「……みっちゃんにナデナデしてもらえて嬉しい」
「ちょっと、落ちたのに嬉しいって何それ」
「誰が落ちたって?合格したよ」
「えーー!? 本当!? おめでとう!!」
「ありがとう」
「ていうか今の何!? 完全に落ちた流れだったじゃん!」
「だって合格って言ったらナデナデしてもらえないでしょ?」
「えー!? そのためにあんな芝居したの!?」
「どうしてもやってほしくて……」
「もう、ずるいなあ 笑。言ってくれれば普通にやってあげたのに」
「本当?じゃあ改めてお願い」
「また?笑」
「いいじゃん」
「しょうがないなあ……」
みっちゃんはもう一度、信彦の頭を撫でる。
「てっちゃん、難しい試験よく頑張ったね。おめでとう」
「……ありがとう」
「じゃ、乾杯しよっか」
「合格おめでとう!」
「乾杯!」
「なんか私、ちょっとやられた気がするんだけど」
「気のせいじゃない?」

ちなみにこういう「ちょっとズレた会話劇」が好きな方は、
別シリーズの『絢里』でも似た空気感を楽しめます。
酔うと暴走する絢里と、
それに振り回される男のやり取りが中心のコメディです。
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