見出し画像

ボブ③ 3/26 主役は「お鍋」と2人の笑顔




「真心込めて作ります!」――エプロン姿の亜夢ちゃんが振るう鍋は幸せの味


果音の父親:「好彦ちょっと」
果音の父親が、ライクを部屋の隅へ手招きした。

ライク:「何ですか? おじさん」
果音の父親:「こんな日に悪いけど、お前らとはあまり会えないからな。やす(ボブ)に見えるとまずいから」
そう言って、ライクを廊下まで連れ出す。

果音の父親:「本来なら、こんな日にあれなんだけどな。保さん(ボブの父)だって喜んでるはずだ。……結婚と赤ちゃん、おめでとう」

おじさんは、紅白ののし袋をライクの手に握らせた。
ライク:「おじさん! そんな、悪いですよ!」

果音の父親:「大きい声出すな! やすに聞こえたら良くない。いいから! 気持ちだ、ちょっとしか入れてないから(笑)」

困りつつもおじさんの力強い頷きに、ライクは深く頭を下げてエルの元へ戻った。

エル:「おじさん、おばさん、わざわざすみません! 本当にありがとうございます」
事情を聴いたエルも、果音の両親の間に座り、感謝を伝えた。

果音の母親:「大子(エル)ちゃん、ダブルでおめでとう。体調はどう? つわりとかは?」

エル:「それが……全くなくて(笑)。逆にちょっと心配なんですけど、最近、動くんです!」

果音の母親:「まあ! ちょっといい?」
果音の母親は、エルのふっくらとし始めたお腹にそっと手を当てた。

果音の母親:「あなたのパパとママは、最高の二人だから。何も心配いらない、安心して生まれてきなさい。大丈夫、大丈夫……」

慈しむように何度も撫でるその手に、エルの目が潤む。
エル:「おばさん……ありがとうございます、(涙)」

果音の母親 : 「大子ちゃん何で泣くのよー!」
そう言いながら、果音の母親ももらい泣きすると、今度は2人で顔を見合わせて笑った。

そんな温かな光景の中、台所からは食欲をそそる醤油とキノコの香りが漂ってくる。
果音の母親:「あら、いい匂い! ねえ大子ちゃん、あの二人どう思う?」

エル:「ボブと亜夢ちゃんですか? もう間違いないと思います。……見て下さいあの二人、私たちより夫婦ですよ。もうここんちの奥さんです!(笑)」

その頃、台所ではボブと亜夢ちゃんが味の最終調整をしていた。
亜夢ちゃん:「ボブさん、どうかな? ちょっと味見してみます?」

亜夢ちゃんがフーフーして差し出した小皿の汁をボブが半分飲み、残りを亜夢ちゃんが飲み干す。

ボブ:「亜夢ちゃん! 完璧!」
亜夢ちゃん:「良かった! でも、ボブさんのレシピ通りにやったから、美味しくて当然ですね」

ボブ:「違うよ。……美味しくなれって思いながら作ったんでしょ? だからこんなに美味しくなったんだ。ありがとう、亜夢ちゃん」

そんな二人の様子を、リビングのヤツらが放っておくはずもなかった。

洋太:「ボブ何か手伝おうか?」
ボブ  : 「いいよもうちょっとで出来るから」

洋太 : 「今の言葉を果音、直訳して」
果音:「『邪魔だからこっちに来るな!』」

洋太:「ピンポーン! 正解!」
果音:「じゃあ、亜夢ちゃん! 一人で大丈夫?」

亜夢ちゃん:「あっ、ボブさんがいるから大丈夫です!」
洋太:「直訳すると? 『ボブさんの隣にずっといられて嬉しいです!』」

果音:「ピンポーン、大正解!」
野次を無視して「あーん」を披露する二人に、四人が絶叫する。

果音:「よくもまあ! みんなの前で!」
果音の父親:「いいんだよ! 遺影の二人を見てみろ。喜んでるから」

洋太:「そしたらあれだな、今はボブと亜夢ちゃんが一番の馬鹿ップルだな」
ボブ・亜夢ちゃん:「誰が馬鹿ップルじゃい!」

息の合った二人のツッコミに、リビングは一瞬静寂に包まれたが次の瞬間、今日一番の爆笑に包まれた。


お読みいただきありがとうございました。次話はこちら👇

ボブ③ 4/26 献杯に添えられた真心溢れる「キノコ鍋」

いいなと思ったら応援しよう!