その怪談話 ── 義母には本当のことだった
「 お母さんに よろしく言ってね! 」
介護施設に入所する義母 の面会を終え
わたし達は居室を出ると、
エレベーターの前まで 見送りに来た
義母 (91) が そう言った。
お母さん?と 一瞬 思った。
だけど 以前からよく義母は、
自分の長女である娘のことを
「親子が逆転して お母さんみたい」
と言ったり、また 時々ジョークで
わたし達を 笑わせたりすることがある。
なので、単に 言い間違えたのかな?
くらいに思い、あまり深く考えず わたしは
『はーい。わかった! 言っとくね』
と 軽く返事をし、バイバイと手を振った。
翌週、いつものように義母の面会へ。
持って行った差し入れのカットフルーツを
食べながら 義母はゆっくりと、
「夜トイレに起きたらね、
お母さんが そこのカーテンの所にいてね。
心配して また見に来てくれたのかな?」
と言った。
わたしはビックリ! おもわず
義母のインスタントコーヒーを
入れていた手が止まった。
幽霊でも見たのかと 気味が悪くなって
鳥肌が立った。病院とか施設って なんか
そういうのありそうだし。
あー 怖い怖い…
だけど義母は その手の話をしているのでも
ジョークでもなく、事実として冷静に
淡々と話していた。
なんか 様子がおかしい···
わたし達は気づいた。
夫 (義母の息子) が
『 “お母さん”って ふみばあちゃんのこと?』
と尋ねると、
「うん。そう」 と義母。
『ふみばあちゃんは だいぶ前に死んだよ』
「えぇ!? 死んだの?」
『 !!!! 』
わたしは 生前のふみばあちゃんに
残念ながら お会いしたことはない。
以前に義母から
自分の実母である ふみばあちゃんとの
思い出ばなしを聞いていたので、
どんな人柄だったか なんとなくだけど
想像は出来る。だいぶ前に、お寺での
法要があった時は わたしも参列した。
でも、いつからだろう・・・
とっくの昔に 葬儀を終えた事も忘れ、
かつ、今もどこかで 実母は生きている
と 思っていたんだろか…
もしかすると、
この間の 面会の帰り際に言った
「 お母さんによろしく 」は
言い間違いでも ジョークでもなく
本当に お母さんへの伝言のつもりで
言っていたのかもしれない。
♢♢♢
そして こんどは、
「この部屋ね、黒い虫がいるのよ。
ほら そこらへんにも」 と言う義母。
わたしは一瞬 “G” のことかと思って
再び鳥肌。勢いで片足立ちになっていた。
辺りを見回してみるけど
その黒い虫は見当たらない。 隠れた?
よくよく聞くと、
その 黒くて何かわからない小さい虫が
特に夜、床にたくさん 出てくるらしい。
ヒエッ。
「踏んでみるけど 何も変わらないのよ。
足を伝って上っては来ないけどね」
『・・・・・ 。(え、やだぁ) 』
♢♢♢
お母さんが見えたり 黒い虫が見えたり・・
気になったので調べてみた。
どうやら 義母の症状は
幻視 (幻覚) らしい。
義母の抱える パーキンソン病に見られる
兆候のようだけど、なんと 認知症にも
その 幻視 (幻覚) は あるらしくて·····。
はっきりとした原因は分からないけど
静かに病気が進行していることに
気づかされ、なんだか ショックだった。
考えてみれば、
義母の言う通り たしかに「気持ち悪い」。
実際には 虫はいないのに
いるように見えるんだから、そんなの絶対
つらいはず…
なので、
義母に安心して就寝してもらおう と
わたし達は 病気のせいであることを
思いきって 手短に伝えることにした。
理解してくれるか 分からないけど。
[ 後のことは また、
担当医の先生に診ていただくことに。]
しばらくして····
義母は サラッと
「 頭の病気だから仕方ないねぇ 」
と言った。
きっと・・
そんな義母自身が
一番ショックなのかもしれない。
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※取り柄がないおばちゃんだけど 初めて
エッセイっぽく?書いてみた
