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アダム・グラントに会いに行く(第1回)

アダム・グラントに会いたい。そう思ったとき、何も手につかなくなるくらいワクワクする自分がいた。世界最高峰の組織心理学者である。「天才」と称する人もいる。そんな彼に、自分が現在LDC(註1)で学んでいること、これまでの組織で経験し、日々感じていることをぶつけてみたい。この連載は、来年の夏をめざし、アダム・グラントに会うまでの私の内面の変化、興味・関心を綴った1年間の旅の記録である。


1.自分を抱えて生きるしかない

若いころから、人を好きになるとすぐに会いたくなるクセがあった。仕事柄、夜討ち朝駆けは日常茶飯事だ。アポもとらずに取材に行く。「15分でいいから話を聞かせてほしい」と言うと、たいてい応じてくれた。情熱は伝わるものである。恥ずかしい話だが、妻にプロポーズしたのは付き合ってからわずか1週間後だった。最初は断られたし、結婚してからも喧嘩ばかりだが、今もなんとか彼女との生活は続いている。「アダムに会いに行く」という今回の私的プロジェクトも、そんな私の性癖の現れである。ツテもコネもない。日本からやってきた名も知れぬ大学院生が「あなたに会いたい」と懇願したところで、天才学者が直接会ってくれるだろうか。普通はそんなことはないだろう。しかし、これが私なのだから仕方がない。これまでも、そしてこれからも、こんな自分を抱えて生きていくしかないのだ。

GIVE&TAKE

2.連載をはじめるにあたって

今日から1年間、アダム・グラントの3部作「GIVE&TAKE」「ORIGINALS」「THINK AGAIN」の原書を精読し、彼の主要な論文にも目を通す。ネットには彼の最近の研究や発言が山のようにあふれている。それらもしっかりチェックしたい。そして日本のアダム・グラント研究者の末席に加わりたい。当然1年では無理だろう。これから彼を追い続ける旅は続く。思うに、人は学ぶにあたって、関心のあるテーマを探究する方法と、ある研究者の足跡と現在を探究する方法がある。今回は後者である。何年かかるかはわからないし、その過程で別れがあるかもしれない。しかし、まずは自分の気持ちに正直になって、新しい一歩を踏み出すことが重要だ。また、私は英語がそれほど話せない。LDCの受験のときにはじめてTOEICを受けた。最初は620点だった。2回目に800点で、何とかさまになった。しかしこれではアダムと議論することはできない。意を決して3か月の英語コーチングを受けることにした。1日3時間半、60万もの大金を払った。もう後にはひけないのだ。

3.連載の構成と内容の概略

本連載の構成と概略を以下に記す。もちろんアダム・グラントの研究テーマの紹介だけに終わるつもりはない。どちらかというと、エッセイ風の内容になるだろう。彼の関心テーマ (利他・創造性・再考・意味・未来の働き方)を私個人のLDCでの学びと関連づけ、自らの実践や行動をつねに意識したい。「アダムの関心領域×日本的文脈 ×LDCでの学び× 自分の実践」が交錯する世界を描きたいと思う。

序章(1〜4週)

  • 第1回:「アダム・グラントに会いに行く」

  • 第2回:アダム・グラントとは誰か(経歴・影響力)

  • 第3回:なぜ彼に会いたいのか(彼の関心を追体験する旅)

  • 第4回:1年間の学びと連載のロードマップ


学びの旅(5〜28週)

原書3冊を順に精読し、巻末索引や関連論文も参照することで、アダム・グラントの関心領域を追体験するパート。

『Give & Take』編(5〜10週)

  • Giver/Taker/Matcher の概念と意味

  • 利他性と信頼、成功するGiver/失敗するGiverの違い

  • 日本の「与える文化」との比較(義理・恩・お返し)

  • 文献索引から広がる研究(信頼・社会資本)

『Originals』編(11〜16週)

  • 非同調と創造性のメカニズム

  • リスク選好と保守性のバランス

  • 組織文化がオリジナリティをどう扱うか

  • 文献索引から広がる研究(創造性・Voice行動)

『Think Again』編(17〜22週)

  • 知的謙虚さと「考え直す」力

  • 学習する組織とアンラーニング

  • 日本文化における「再考」の難しさ

  • 自分自身の「再考」の体験(学び直し・研究テーマの揺らぎ)

  • 文献索引から広がる研究(認知柔軟性・学習志向性)

文献と論文から広がるテーマ(23〜28週)

  • バーナウトとウェルビーイング

  • 仕事の意味(meaningful work)

  • 職場文化と心理的安全性

  • 未来の働き方(Quiet quitting, ハイブリッド)

  • Grantの最新発信(Podcast/NYT/TED)をレビュー


実践の旅(29〜44週)

学びを現場や社会に「翻訳」するパート。

  1. 大学院での授業・研究との接続 → 自分の追究するテーマとアダム・グラントの理論の接点を模索

  2. 「小さな実験」の実践 → 自分の周囲で Give 行動や Think Again 的対話を試み、その結果を観察記録として共有

  3. 日本社会の「再考すべき常識」を問い直す → 年功序列、終身雇用、転職観、働き方の慣習を「Think Again」の視点で検証

  4. 他分野の研究者・実務家との対話 → 同世代研究者や実務家に「アダム・グラント理論をどう捉えるか」をインタビュー

  5. インタビュー企画(同僚・学生の視点) → 「仕事の意味」「考え直した瞬間」をテーマに周囲に聞く

  6. 半年間の総括記事 → ここまでの実践の学びを整理し、雑誌掲載も視野に編集


出会いとその先(45〜52週)

  • アメリカ渡航準備(計画、連絡方法、文化的壁)

  • ペンシルベニア大学とWharton Schoolの紹介

  • 1年間で自分がどう変わったか(学び・姿勢・人との関わり)

  • 最終回:アダム・グラントに「会いに行く」 そのときは来た       (そして旅は続く)

以上が本連載の構成である。旅の途中で景色が変わり、まわり道や寄り道をしたくなるかもしれない。アダムと会えないかもしれない。そうしたハプニングも含めて、この旅を楽しもうと思う。一生忘れられない旅にしたいと思っている。

(註1)LDC  立教大学大学院経営学専攻リーダーシップ開発コースのこと。2020年開設。日本初の「リーダーシップ開発・人材開発・組織開発」に特化した大学院教育プログラム。ここでは、経営学を基盤としつつ、リーダーシップ開発・人材開発・組織開発にまつわる専門的知識を学ぶことができる。   


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