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lazy_planet
#37 背伸びをする朝
新しい靴をおろした朝は、少しだけ世界が変わる
クローゼットの奥にしまっていた
光沢のあるハイヒール。
「何かのとき」のために買っておいたのに、
その“何か”はずっと来なかった。
でも今日、
月曜日の朝に、
その靴をおろした。
足を入れた瞬間、
背筋がすっと伸びた気がした。
朝の香り
SHIROのサボンを手首にひと吹きすると、
ふわりと透明な香りが立ちのぼる。
清潔で、
やわらかくて、
誰にも邪魔されない朝の匂い。
鞄も服もいつもと同じなのに、
念入りにヘアセットしたことで
全体の雰囲気が少しだけ変わった。
鏡の中の私は、
昨日よりも
ほんの少しだけ“私らしい”。
ホテルのレストランは、朝から静かな熱を帯びていた
オフィス街の真ん中にあるホテル。
以前、女子会プランで泊まった場所。
エントランスを抜けると、
朝の光がガラスに反射して、
空気がきらきらしていた。
レストランは活気があるのに、
どこか落ち着いていて、
大人の朝の匂いがした。
ここはビュッフェではなく、
席につくとほぼ同時に
ピザとサラダのセットが運ばれてくる。
焼きたての生地の香りが、
胃の奥をやさしく刺激した。
観光客はほとんどいない。
スーツ姿のビジネスマンが多い朝
紅茶のカップを持ち上げながら、
そっと周囲を見渡す。
艶感のあるスーツ、
ノートPC、
英語の会話。
観光客はほとんどいなくて、
ビジネス目的の外国人が多い。
その中で、
ひと組のカップルが目に留まった。
知ってる人のような気がする。
でも、月曜の朝にこんな場所に?
きっと人違いだろう。
今朝の私はなかなか悪くない
昨日の重さはまだ残っている。
胸の奥の白い煙も、
完全には晴れていない。
でも、
新しい靴を履いて、
香水をまとって、
ホテルの朝食をひとりで味わっている自分がいる。
その事実だけで、
今日の朝は
少しだけ救われている。
