ナス無傷、私軽傷
職場の人から「家の畑で採れた」と、大量のナスをもらったときのこと。
遅番の帰りだったので、出入口には誰もいなかった。
「麻婆茄子、ナスカレー、味噌炒め、たまり漬け…」
そんな“ナスで何を作るか”を考えながら、自動ドアを抜ける。
外階段は五段。
二段目を降りたとき……あるはずの次の段がなく、前のめりに転げ落ちた。
階段は滑りやすく、緑色の滑り止めマットが敷かれていたのだが、ずれて浮いているところに足を乗せて踏み抜いてしまったらしい。
「……!」
声も出ず、そのまま無言で転げ落ちた。
「大丈夫ですかっ?」
背後から突然、声がかかった。
振り返ると、おじさんが駆けおりて手を貸してくれた。
すぐに立ち上がり、まずナスを確認する。
みんな無事だった…。
私自身も手のひらがジンジンし、右膝がヒリヒリする程度だった。
「ありがとうございます!大丈夫です!」
そう言ったものの、この日は白いパンツ。
もし血が出ていたら大惨事だ。
慌てて右側の裾を膝までまくり上げる。
「大丈夫です!ありがとうございました!」
そう言って、片足だけめくったまま歩き出した。
振り向くと、おじさんは歩道まで出て、こちらを見送ってくれていた。
軽く頭を下げた。
翌日、私が転んだ原因のマットはすべて撤去されていた。
偶然か、それとも防犯カメラに映っていたのか。
あまりに早い対応で少し気になったが、深くは考えなかった。
ほどなくして、外階段には新しい滑り止めが、しっかりと固定された状態で設置されていた。
数か月後。
テレビのニュースをぼーっと見ていたら、あのおじさんが映っていた。
驚いた。
私の職場は間借りしている場所だったので知らなかったが、その建物のトップの人物だったらしい。
あのとき、すぐに対応された理由に納得した。
子どもの頃、私は頭がデカかった。
それなのに走り回るのが大好きで、よく転んでは、あごや頬、オデコにケガをしてその度に幼稚園から強制送還。
(痛さに鈍感なため、ケガより幼稚園から帰されることが悲しくて泣いた)
顔に傷跡が残ったらいけないと、心配した父が、「転び方」の特訓をしてくれた。
そのおかげか、私は転び方がうまい。
パラシュートの五点接地のように、衝撃を逃がす術が身についているのかもしれない。
この時、そのおかげで大事には至らなかったのだと思う。
ただ、体幹は、ちゃんと鍛えておいたほうがよさそうだな。
元日から始めようとした“プランク”を、四月からやっと始めましたよ!!
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