幽霊より怖いアプリのUI
このご時世ということもあり、我が家には玄関のほかにも3カ所に防犯カメラを設置している。
人感・動体センサー付きの優れもので、何か動きがあるとすぐにスマホへ通知が飛んでくる仕組みだ。
普段、カメラが反応するのはだいたい近所の野良猫だ。
夜中に通知が来て録画映像を確認し、画面の隅をトコトコと横切る猫の姿を見つけては、「な〜んだ、ネコか〜」と胸を撫でおろす。
それが我が家の日常だった。
ところがここ数日、様子がおかしい。
夜中に2、3回、連続してアラーム通知が鳴るのだ。
しかも夜だけならまだしも、真っ昼間にも鳴る。
不審に思い、すぐに記録された映像を再生してみた。
……何も映っていない。
風で木々が揺れたわけでも、猫が通り過ぎたわけでもない。
念のため前後の映像も入念に確認したが、やはり画面には誰も存在しない。
さらに不可解なのは、カメラの判定ログだ。
動体検知ではなく、しっかりと「人物」として認識されているのである。
誰もいない空間を「人」だと主張し続けるカメラ。
普通に考えれば、ゾッとするような怪奇現象だ。
しかし、私はこの手の怖さには意外と強い。
もし仮に“本物”が出たところで、以前から寝ている時に化け物が出た際唱えている「呪文」を出せば退散させて解決すると思っているからだ。
それよりも。
私には、霊現象など足元にも及ばない「本当の恐怖」がある。
それは、夜中にカメラの反応があった際、暗闇を照らそうとしてスマホアプリの「ライト点滅ボタン」を押す時のことだ。
あろうことか、このアプリは「ライト点灯」と「大音量アラーム」のボタンが、すぐ隣に配置されている。
おまけにアイコンのデザインまでそっくりなのだ。
夜中の静寂の中、寝ぼけた頭でボタンを操作する。
画面を押し間違えた瞬間——
「ウーッ!ウーッ!ウーッ!」
静まり返った住宅街に、けたたましい警告音が響き渡る。
「やばい!!」
冷や汗をかき、焦りまくりながら、慌ててボタンを連打して音を止めるのだが、焦っているため、止めたのにまた鳴らしてしまったりする。
我が家の裏のお宅は、この季節、夜間に窓を開けて寝ているのだ。
絶対に、確実に聞こえている。
誰もいない闇に向かって、夜な夜な大音量でアラームを爆鳴らしする迷惑な近隣住民。
霊の存在よりも何よりも、裏の家のご近所さんから「ちょっとー、一体なんなのよ……?」と本気で怒られる日が来るんじゃないかと、私は少しビクビクしている。
今日もまた、通知が鳴った。
「人」と表示された画面を前に、私は化け物退散の呪文ではなく、「お願いだからボタンを押し間違えませんように」という別の祈りを捧げている。
って言うより、ライトとアラームのボタンは間違えることないように、右端と左端にしてほしいよな……
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