「食べ物には困らない」と言われた私と、「老後は孤独」と言われた友だち
会社勤めをしていた頃、途中から車通勤に切り替えた。
職場の近くに駐車場が確保できず、少し離れた場所に月極駐車場を借りることになった。そこまでは毎日、歩いて移動しなければならない。
ルートは2通りあった。
会社から北へ向かってから曲がる道と、にぎやかな商店街を通り抜ける道だ。
残業で退勤が少し遅くなると、商店街を通るルートを選んだ。
夜でも街灯やお店の明かりが灯っていて、そちらの方が圧倒的に明るく、安心感があったからだ。
さすがに何年も同じ道を毎日通っていると、商店街の人たちと自然と顔見知りになっていく。
最初は会釈を交わす程度だったのが、いつしか「こんばんは」と挨拶するようになり、そのうちにちょっとしたことで言葉を交わすようになる。
これが、私のいつものパターンだった。
駐車場へと向かう道のりには、銀行、ゲームセンター、薬局、花屋、ケーキ屋、パン屋が順番に並んでいる。
薬局には、私より少し年上のお姉さんがいた。
なぜか不思議と気が合い、帰り道に顔を合わせるとよく話をするようになった。
そのうちに、彼女は私の帰る時間を見計らってお店の前で待っていてくれるようになった。
「今日、お菓子もらったのがあるから、お茶でも飲んでいきなよ」
そんな風に誘われ、お店の奥で一緒にお茶をいただくことが何度もあった。
私は祖父の影響で、もともと薬には少し詳しい方だったのだが、やはり相手は専門家。
この薬にはこういう副作用がある、副作用も効能として使えるなどといった実用的な知識をたくさん教えてもらう、有意義な時間でもあった。
その先にある花屋のおばさんには、旬を少し過ぎてしまった鉢植えを、よく格安で譲ってもらった。
ケーキ屋さんはたまにしか利用しなかったけれど、毎日の挨拶のおかげで顔はすっかり覚えられていた。
ある日、ショートケーキを買いに行くと、
「これ、試作品なんだけど食べてみて」
と、ホールごとケーキを持たせてくれたことがあった。
驚きと嬉しさで、足取りが軽くなったのを覚えている。
最後のパン屋さんも、定時退勤の日に寄ると、もう閉店時間だからと、よくマフィンをおまけで持たせてくれた。
学生時代に友達と行った占いで、占い師から、こんなことを言われたのだ。
「あなたは、一生食べ物には困らないよ」
当時は「へえ、そうなんだ」くらいにしか思っていなかった。
でもここの商店街でいろいろなものをいただくたびにこのことを思い出していた。
挨拶は大事、きっとそれも何かしらの縁なのだからと思った。
ちなみに占いに一緒に行った友だちは
「あなたの老後は孤独だね・・・」
そう言われてた。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!