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視点

今日のあなたに~から見つけたこちらの記事、なるほど、BLは受け
視点で書かれることが多い。
なるほどなるほど。
わたし、BLは超初心者です。
っていうか、ここまでディープに堕ちたのは多分……オメガバースのせいです(取りあえず理由付けだけしとく)
まぁBL小説はファンタジーだから~と友人が言ってましたね。
へ~そうなのか、へ~とか思ってました。
で、偶然知った『オメガバース』まぁ……これかなり危険物です。
うん、なんだか分からんけど、気が付いたら沼落ちしてました。

で、TALESに載せた『侍従殿、貞操の危機でございます』をチャッピーに鑑定してもらったら、はい、受け視点と判断してくれました。
なるほど。
んじゃさ~これを攻め視点で書ける?と聞いたら、いけるよ~ってことだったので、作って貰いました。
なかなかに笑えたので掲載してみます。


因みにこちら↓が受け視点の第1話です。

『侍従殿の貞操の危機』

アーノルド編

第1話 王子が逃げると言い出した

 第三王子ジルベールの朝は、アーノルドが寝室へ入るところから始まる。
 もっとも、それはジルベールが十五のころから変わらない。寝台から起こし、洗面を促し、その日の予定に合わせて衣装を選ぶ。王子付きの侍従となって八年、繰り返してきた仕事だった。

「今日はこれです」
 アーノルドが濃紺の上着を広げると、ジルベールは鏡の前で両腕を上げた。着せろ、という意味である。
「殿下。そろそろご自分で袖を通すくらいはなさってください」
「お前がいるのに?」
「わたしが一生お仕えするとは限りません」
「なんで?」
「わたしにも人生があります」
「侍従以外の?」
「当然でしょう」
 不思議そうな顔をされた。
 アーノルドは何も言わず、上着を着せた。こういうところがある。ジルベールに悪気はない。王宮で生まれ育ち、目を覚ませば誰かがいて、食事も衣服も用意される。それが本人にとっての日常なのだ。
 襟を整え、留め具を上から順に留めていく。
 この距離にも慣れた。
 そう思うことにしている。
「なあ、アーノルド」
「何でしょう」
「俺、結婚するらしい」
 留め具へ掛けていた指が止まった。
「……おめでとうございます」
「めでたくない」
「では、お悔やみ申し上げます」
「そういうとこ、たまにひどいよな」
「まだお相手も決まっていないのでしょう」
「決まってない。父上と兄上が、年内には決めろって」
 アーノルドは再び手を動かした。
 いずれ来る話ではあった。
 ジルベールは王位継承から遠い第三王子とはいえ、王族である。しかもオメガだ。政治的な婚姻を求められることは珍しくない。
 分かっていた。
 分かっていたはずなのに、胸の奥へ小さな棘が刺さった。
「よい方が見つかるとよろしいですね」
「嫌だ」
「まだお会いしてもいない方を嫌うのはいかがなものかと」
「相手が嫌なんじゃなくて、結婚が嫌」
「なぜです」
「面倒だから」
 アーノルドはため息をついた。
「それだけですか」
「王族も面倒」
「今さらですね」
「だから俺、王族やめようと思う」
 今度こそ手が止まった。
「……はい?」
「王族やめる」
「できません」
「じゃあ逃げる」
 アーノルドはジルベールの顔を見た。
 冗談を言っているようには見えない。
「どちらへ?」
「決めてない」
「お金は?」
「ある」
「どれくらいです」
「金貨十枚くらい」
「三日でなくなりますね」
「そんなに早く?」
「殿下なら」
「じゃあ働く」
「何ができますか」
「……剣?」
「人並みです」
「馬に乗れる」
「王族としては普通です」
「文字が書ける」
「それは使えるかもしれません」
「ほら」
「ですが、旅先で代書をして王族と同じ暮らしができるとは思わないでください」
 ジルベールは少し考えた。
「じゃあ、お前も来い」
「なぜそうなるのです」
「俺より色々できるだろ」
「できるからこそ、止めているのです」
「頼む」
 その一言で、アーノルドは黙った。
 命令ではない。
 ジルベールは滅多にアーノルドへ「頼む」と言わない。
 王子だから命令する、という意味ではない。ジルベールにとってアーノルドが側にいることは、朝になれば日が昇ることと同じくらい当然なのだ。
 だからこそ、その言葉に弱い。
「……王太子殿下には、お話しください」
「兄上に?」
「黙っていなくなれば、国中へ捜索隊が出ます」
「止められるぞ」
「当然です」
「じゃあ言わない」
「わたしが申し上げます」
「裏切るのか?」
「殿下を行方不明者にしないためです」
 ジルベールは不満そうだったが、しばらくして諦めた。
「分かった。兄上には言う」
「陛下にも」
「父上は駄目」
「殿下」
「絶対閉じ込められる」
 それは否定できなかった。
 アーノルドは残りの留め具を整えた。
「まず王太子殿下へご相談ください。それからです」
「お前も来る?」
「話をする場には」
「逃げる方」
「まだ申し上げておりません」
「でも来るだろ?」
 なぜそんなに確信しているのだろう。
「殿下」
「何?」
「わたしが断ったら?」
 ジルベールは初めて困った顔をした。
「……困る」
「でしょうね」
「一人じゃ着替えも面倒だし」
「まずそこですか」
「飯も何を買えばいいか分からない」
「それもご自分で覚えてください」
「金貨十枚が三日でなくなる理由も分からない」
「なおさら一人で出せませんね」
「だから来てくれ」
 結局そこへ戻る。
 アーノルドは長い息を吐いた。
「王太子殿下のお許しが出れば」
「出るかな」
「出ないでしょうね」
「じゃあ駄目じゃないか」
「普通はそういうものです」
 ジルベールは露骨に肩を落とした。
 その日の午後、二人は王太子の私室へ呼ばれた。
 正確には、アーノルドが先に事情を伝えた結果、ジルベールが呼び出された。
「お前は馬鹿なのか」
 兄の第一声だった。
「王族やめたいだけだ」
「やめられない」
「アーノルドにも言われた」
「当然だ」
「じゃあ結婚しない」
「それは父上と話せ」
「話した。年内に決めろって」
 王太子は額を押さえた。
「それで逃げるのか」
「うん」
「どこへ」
「決めてない」
「金は」
「金貨十枚」
「三日でなくなるぞ」
「お前たち、なんで同じこと言うんだ?」
 アーノルドは黙っていた。
 王太子がこちらを見る。
「お前はどうする」
「わたしでございますか」
「こいつが一人で出れば、三日どころか一日で身ぐるみ剥がされる」
「同感でございます」
「アーノルド!」
「事実です」
 王太子はしばらく考え、弟を見る。
「本当に行くつもりか」
「行く」
「止めても?」
「窓から出る」
「三階だぞ」
「二階からなら」
「そういう問題ではない」
 兄弟のやり取りを聞きながら、アーノルドは嫌な予感を覚え始めた。
 王太子の表情が、止める者の顔ではなくなっている。
「アーノルド」
「はい」
「こいつから目を離すな」
「……殿下?」
「金はお前が管理しろ。宿もお前が決めろ。知らない者についていかせるな」
「お待ちください」
「兄上、それって行っていいってこと?」
「いいとは言っていない」
「でも止めないんだろ?」
「私は何も聞かなかった」
 王太子は立ち上がった。
 アーノルドは不安を拭えないまま見上げる。
「明朝までに考え直したなら、北の通用門から戻れ。衛兵には話を通しておく」
「兄上、最初から逃げるの手伝うつもりだっただろ」
「お前一人なら牢へ入れてでも止める。アーノルドがいるなら、四日くらいは生きていられるだろう」
「三日で金がなくなるんじゃなかったのか?」
「四日目に泣いて帰ってくるという意味だ」
 王太子は部屋を出ていった。
 扉が閉まる。
 しばらく沈黙が続いた。
「許可出たな」
「出ておりません」
「でも行っていいんだろ?」
「そういう意味では――」
「服選んでくれ」
 アーノルドは眉を寄せた。
「なぜです」
「王子に見えたらまずいだろ」
 そこだけは妙に正しい。
 仕方なく寝室へ戻り、華美な衣装を避けて濃紺の上着を選んだ。刺繍も最低限で、裕福な商家の子弟程度には見えるだろう。
 着替えを終えたジルベールが鏡の前で一度回る。
「これなら王子に見えない?」
「黙っていれば」
「失礼だな」
「話し方も直してください」
「面倒」
「王族をお辞めになるのでしょう」
「それとこれとは別だ」
 アーノルドは頭を抱えたくなった。
「外でも、毎朝お前が着せてくれるんだろ?」
「ご自分で着られるようになっていただきます」
「嫌だ」
「なぜです」
「お前がいるのに、自分でやる必要ないだろ」
 ジルベールは当然のように言った。
 アーノルドは返事をしなかった。
 王宮の外へ出れば、この関係もいつか変わる。
 侍従ではなくなるのなら、毎朝この男の衣服を整える理由もなくなる。
 そのことを考えた瞬間。
 自分でも驚くほど、胸の奥がざわついた。
「アーノルド?」
「何でもございません」
「じゃあ来るんだよな?」
「……おともいたします」
「よし」
 嬉しそうに笑う。
 その笑顔を見て、アーノルドはようやく理解した。
 自分は王子の逃亡を止めるためについていくのではない。
 一人で行かせられないからでもない。
 おそらくもっと以前から。
 この男が自分の手の届かない場所へ行くことを、考えたくなかっただけなのだ。
 その日の夜。

 大小七つの旅行鞄を前にして、アーノルドは早くも自分の判断を後悔することになった。