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【イノセント・デイズ】早見和真|読了

死刑囚である田中幸乃にまつわる物語。

なぜ彼女は、そこまで辿り着いてしまったのか。

どんな生い立ちがあり、誰と出会い、何を抱えて生きてきたのか。

物語は、幸乃の人生に関わった人たちの視点を通して、彼女という人間を少しずつ浮かび上がらせていく。

読み終えて残ったのは、重さというよりやりきれなさだった。

ただ「つらい人生だった」と言ってしまえば、それでまとめることもできる。

でも、それだけでは終われなかった。

どうして、ここまで来てしまったのか。
どこかで止められなかったのか。


読み進めるほど、そんな思いが強くなっていった。


「不幸だった」だけでは片づけたくない

この作品で一番心に残ったのは、幸乃の生い立ちと、彼女を取り巻いていた環境だった。

一人の人間が、突然「死刑囚」になるわけではない。

そこまでには人生がある。

幼い頃があり、人との出会いがあり、傷ついたことがあり、そのたびに何かを選びながら生きてきた。

幸乃の人生を辿っていくほど、

不幸だった。

かわいそうだった。

つらかった。

それだけでは足りないように思えてくる。

確かにどれも間違ってはいない。

でも、「不幸な人だった」と一言でまとめてしまった瞬間、彼女が生きてきた時間まで簡単なものにしてしまうような気がした。

だから何度も考えた。

誰かが救えたのではないか。
どこかで止められたのではないか。
何か一つでも違っていれば、別の場所へ辿り着けたのではないか。


そう思ってしまうこと自体が、この作品の苦しさだった。


見えていたはずなのに、届かない

物語では、さまざまな人の視点から幸乃が描かれていく。

この構成がかなり苦しかった。

それぞれの人には、それぞれの幸乃がいる。

誰かが見た幸乃。

誰かが覚えている幸乃。

誰かがそのとき気づけなかった幸乃。

視点が増えるほど、一人の人間としての幸乃が見えてくる。

でも同時に、

これだけ周囲に人がいたのに、どうして彼女はここまで孤独になってしまったのか。

という思いも強くなる。

見えていたはずなのに、届かない。

気づけたかもしれないのに、間に合わない。

誰か一人の悪意だけがすべてを決めたとも言い切れない。

そこがやりきれなかった。

もし明確な一人の悪人がいて、その人さえいなければすべてが違ったのなら、まだ感情の置き場所がある。

でも、この作品はそんなに簡単ではない。

小さなことが積み重なり、人と人との間にあるわずかなズレや届かなさが重なっていく。

誰も完全には救えなかったという事実の方が、ずっと苦しかった。


誰か一人を責めても終われない

幸乃の人生を読んでいると、「この人が悪かった」と言いたくなる瞬間はある。

それでも、誰か一人だけを責めればすべて説明できるようには感じなかった。

周囲の人。

環境。

見過ごされたもの。

届かなかった言葉。

本人が抱えていたもの。

いくつものものが絡み合っている。

だから、「誰が悪かったのか」と考えるだけでは足りない。

かといって、

「仕方がなかった」

とも思えない。

責める相手を一人に決められない。
でも、仕方なかったとも言いたくない。

その間にずっと取り残されるような感覚があった。

これが、自分にとって『イノセント・デイズ』の一番しんどいところだったと思う。

答えが出ない。

それでも、「何かできたのではないか」と考えることをやめられない。

その割り切れなさが最後まで残った。


「死刑囚」ではなく、田中幸乃を見る

この作品は、事件の謎を追うこと以上に、一人の人間を見ていく物語として強く残った。

最初にあるのは、「死刑囚・田中幸乃」という結果。

でも、物語を読み進めるほど、その言葉だけでは彼女を見られなくなっていく。

田中幸乃には、その結果へ辿り着く前の人生がある。

子どもだった時間がある。

誰かと過ごした時間がある。

傷ついたこともある。

誰かを求めたこともある。

いろいろなものを知ったあとでは、最初に見えていた「死刑囚」という言葉だけで彼女を判断することが難しくなる。

事件から人間を見るのではなく、人間の人生を辿った先に事件を見る。

その順番によって、同じ出来事の見え方まで少しずつ変わっていく。

そこが、この作品の重さだった。


救いが欲しかった

読み終えたあと、一番素直に残ったのは、

「救いが欲しかった」

という気持ちだった。

幸乃を責めたいわけでもない。

簡単に許したいわけでもない。

ただ、

どうしてここまで来てしまったんだろう。

と思う。

誰かがもう少し彼女を見ていたら。

誰かの言葉がもう少し届いていたら。

何か一つでも違っていたら。

そんな「もし」を考えてしまう。

もちろん、過ぎた人生をあとから見ているから言えることなのかもしれない。

それでも考えずにはいられない。

物語は、読者が欲しがるような簡単な救いを差し出してはくれない。

だから苦しい。

でも、その救われなさをただ「かわいそうだった」で終わらせたくもなかった。

救いがなかったからこそ、「救えなかったのか」と考え続けてしまう。

そこまで含めて、強く残る作品だった。


読後に残ったもの

『イノセント・デイズ』を読み終えて残ったのは、やっぱりやりきれなさだった。

田中幸乃という一人の人間が、どんな人生を歩み、なぜそこまで辿り着いてしまったのか。

いろいろな人の視点から彼女を見るほど、一つの言葉では片づけられなくなっていく。

不幸だった。

かわいそうだった。

それだけでは足りない。

誰か一人を責めれば終わる話でもない。

でも、すべて仕方がなかったとも思えない。

だから、

どこかで救えなかったのか。

という思いが残る。

そして読み終えた今では、田中幸乃を「死刑囚」という結果だけで見ることもできない。

その前に一人の人間として生きていた時間があり、そこにいくつもの人との関係や、届かなかったものがあった。

幸乃の人生を、「不幸」の一言で片づけたくない。

それが、この作品を読み終えて一番強く残ったことだった。

つらい。

苦しい。

救いが欲しい。

それでも、読んだあとまでずっと考え続けてしまう。

そんな一冊だった。

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