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ホーユーヘアカラーミュージアム


髪がないけど行ってみました。

 徳川美術館だけでは何なので、ちょっと寄り道。すぐ隣にある、ホーユー株式会社の企業博物館に行ってみました。ヘアケア・ヘアカラー用の商品を扱う会社です。だから展示も髪に関する事……といっても、既に生えている髪を染める方で、生やす方ではありません。

ヘアデザイン展。

ヘアデザイン展会場。

 企画展示室では、美容学校とのコラボがありました。学内のヘアデザインコンテストの結果発表。よく見ると『サロンワーク部門』と『クリエイティブ部門』というジャンル分けがしてありました。サロンワークは実際に、街を歩けそうなお洒落な感じ。クリエイティブ部門は、ヘアデザインというより、キャラクターをデザインしているみたい……「髪型とは何か?」という所から、もう色々な解釈があるんだなあ。

ヘアケアの歴史。

 神話の時代から、歴史の中で、人は髪をどう扱っていたか。髪には「それをどう扱うかによって、信仰や社会的な位置を公にする」という役割があった。髪を染めるという事には、見た目だけでなく、様々な文化的な背景がある……

元結とか鬢付け油とか。

 ギリシャ神話から三国志の時代あたりのエピソードは、主にパネルでの紹介。髪染めに使われていた、植物や鉱物の標本がいくつかあったくらい。江戸時代あたりから現物の展示が多くなります。
「落語『文七元結』では、元結売って大繁盛ってオチだったけど、こよりでそんなに儲かるのかな?」
「油壷のこのソロバン玉の形、あちこちで見るなあ。元ネタがあるのかしら?」
 などと、とりとめもなく思いながら見ていました。

鉄漿(おはぐろ)の道具。

 あれ、この「耳盥」って変わった形のタライ、徳川美術館でも見たぞ? 姫君や奥方の使う道具で、雛道具にはミニチュアもあった。おはぐろをつけたり、歯磨きをする道具だったのか。「かがまなくてもいいように、台に据えて使う」と書いてある……耳がついているのは、そのためだったのか!

 徳川美術館で分からなかった事が、ここで分かりました。こういう、ある場所で抱いた謎が、別のところで解明するというのは、実に楽しい瞬間。おはぐろの道具がなぜ? と思っていたら、同じ成分が使われているんですね……材料は、錆びた鉄釘と、米のとぎ汁と、お酢……とんでもない臭いがするので、誰も起きていない早朝に作っていた? このミュージアムのスタッフは、実際に作って確かめたとか。すごい! そんな生々しいお話は、学校じゃ教えてもらえないなあ。

ヘアカラーの近代史。

 ホーユー株式会社の前身である「水野甘苦堂」が創業したのは明治三十八年(1905年)だからか、その頃からの展示が充実しています。『吾輩は猫である』が出版された年。マチスやピカソがブイブイ言わせてた頃。『赤毛のアン』が出版されたのが1908年……赤毛を染めようとして、緑色になっちゃうエピソードとかありましたね……髪染め液が市販され始めた頃なのかな?

1910年『ナイス』丹平製薬
1921年『元禄』水野甘苦堂

 この「浮世絵+アール・ヌーヴォー」なパッケージデザイン、たまりませんね。まだ粗い素材のガラス瓶もイイ感じ。『元禄』の箱をよく見ると『㍿朋友商會』って書いてある。販売開始は1921年だけど、1923年に株式会社になってからのバージョン。初代社長が宣伝のために、この箱のキャラのコスプレをした写真まで展示されていた。この商品のヒットで株式会社になったんですね。

明治・大正の髪染め薬のパッケージ色々。

 ビジュアルだけじゃなく『烏羽玉』『千代ぬれ羽』『黒胡蝶』なんて文学的な商品名も素敵。『るり羽』の、孔雀をあしらった図案のお洒落な事! 『クラブ掃き粉』の双美人マークは、どこかで見たような……

 クラブコスメチックス、だいぶデザインは変わったけど、今でも双美人マークを使ってるのか。この展示も見に行きたいなあ。

大正・昭和のポスター色々。

 右端の『元禄』のポスター、白黒の美人像に赤でワンポイントというのは、日本初のヌードポスターと言われる『赤玉ポートワイン』に影響を受けているのかな? 左端の『千代ぬれ羽』のイラストは、かなり目がパッチリしていて、ずいぶんモダンな感じ。真ん中の『ぬれつばめ』の女性像は、顔つきなどが妙に生々しい……このいかにも、商業イラストの最適解を模索しています、という雰囲気。面白いなあ。

店舗用の什器。

 カッコイイなあ。ちょっと薬臭くて薄暗く、柱時計の鳴る音がするような、昔のお店の雰囲気が目に浮かぶ……たまりませんね、こういうの。

ホーユー株式会社・社史。

昭和に入ってからの商品などがズラリ。

 最近になってくると、見覚えのあるポスターなんかもチラホラ出てきます。権利関係がよく分からないので、写真などは撮りませんでした。だけどやはりファッションというのは世相を表すもの。「高度成長期だなあ」とか「バブルだなあ」とか、パッケージの変化を見ているだけでも面白い。流行りの絵柄のイラストやモデルの化粧とか、商品名のつけ方なんかにも、その時代の空気が直結している感じ。

看板コレクション。

 『二羽からす』『三羽からす』は姉妹品なのかな? この発売元は水野商店。『元禄』の発売元は株式会社朋友商会。社史が反映された看板ですね。

看板以外の広告素材なんかも。

 電柱などに貼るホーロー看板、店先の行灯や幟。忠臣蔵の双六シートなんてのもある。何かのオマケかしら。『ビゲン白髪染』もある。まだ「ヘアカラー」じゃなくて「志らが染」だ。そもそも『ビゲン』というのは、ヒット商品『元禄』にあやかった名前。「美人」+「元禄」で「美元」なのだそうだ。知らんかった……

髪がなくても楽しめました。

ヘアカラーの科学。

 ここまで美術館みたいだったのが、ここへきて科学館に。髪の構造、ヘアカラーで髪が染まるしくみ。髪や地肌に良いお手入れの方法……研究成果の発表というか、ヘアケア企業の本領発揮というか、そんなコーナーでした。自分は髪がないので、恩恵にあずかれないなあ、などと思っていたら……自分の顔を撮影して、AIで色々な髪型をシミュレーションできるというコーナーがありました。

 撮影してみました……公開はいたしません。一人でやるもんじゃなかったかも。ただ面白いのは確かなので、お立ち寄りの際はぜひご体験ください。

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