徳川美術館『尾張徳川家の雛まつり』
お庭を散策しお花をながめて、常設展示室をくぐりぬけると、今回の目的であるお雛様の展示です。
徳川美術館のメイン展示室、以前に源氏物語絵巻がずらりと並べられていた部屋ですが、今回はお雛飾りの色々が展示されています。
雛道具。

入ってすぐの展示ケース、狛犬みたいに入り口を守っているのは犬張子。犬は安産の象徴という事で、室町ごろから出産と新生児のための御守りとして、雌雄一対の犬の箱を飾ったのが、雛飾りになったということです。
松竹梅の縁起物尽くしの紋様に、スン……と無表情な、人間みたいな顔。この不思議な感じは、確かに御守りっぽい。だけどなんで箱なんだろう? 徳川美術館に今回展示されているのも、張り子でできた箱だし。何を入れたのかなあ? ティッシュボックスにするには、少し大きいです。

雛道具。人形に合わせた、ドールハウスの家具みたい。一つ一つが精巧きわまりない……木の刳りもの、土の引物は、実際にロクロで成形しているのかな? 蒔絵は見た感じ、ほとんど本物の人間用と同じみたい。

それにしてもお道具の種類の多さ! これは髪を整える道具かな? こっちは顔の化粧道具かな? なんて、一つ一つ想像しながら、当時のお姫様の生活の様子が思い浮かべながら見ていくのが楽しい。こうやって、道具の名前や種類、使い方を覚えていたんだろうなあ。

茶道具を収める棚や、筝の琴や胡弓も。やっぱりこれを作っているのは、人間用を作っているのと同じ職人なんだろうなあ。
紋様も違う。抱き牡丹とか、折れ菊とか……この辺りは、家系にも関わってくるのかな。「この御紋はあの家系」「このお印はあの方のもの」みたいな教育もあったんだろうか? もちろん尾張徳川家なので、どれにも三つ葉葵がバッチリついているんだけど。

雛人形以外の人形。

親指の先くらいの、陶器の人形。どんな遊び方をしたのかな? 後ろの屏風は源氏絵かしら。具体的な遊び方はよく分からないけれど、笛や太鼓に琵琶と鉦、謡の者もいるようで、花盛りの桜を背景に、宴が開かれているみたい……やっぱり、こんな楽しみ方をしていたんでしょうか。

なんだか呪い人形みたいなのがあった。雛人形の原型ともいえる、天児・這子という人形。天児は丁字型の骨組みに、這子は四角い布を角を出した形に縫った胴に、着物を着せた人形で、子供に害をなす邪気などを祓う人形だそうです。

御所人形……これも不気味だなあ。これが昔は、可愛い人形として扱われていたんだろうか? なんだか昔と今の、人形に対する感覚ってだいぶかけ離れているのでは? なんて気持ちになってしまう。

だけど、犬の可愛いのは変わりませんね……手のひらに乗りそうな、狆の仔犬の毛作り人形。こちらは驚くほど今風。
雛人形。
広い展示室の半分くらいが、段飾りの雛人形でいっぱい。御殿飾りはないのかな、と思ったら、あれはもっと時代が下った、関西を中心とした飾り方らしい。

この段飾りは、犬張子も雛道具も立派で、五人囃子なんて七人もいる。お内裏様も二組いるし。ダブルデートならぬ、ダブルマリッジ? 後ろの屏風も、鶴のつがいに松竹梅と、縁起のいい絵柄。

同じ矩姫様のお雛様なのに、かなり顔つきが違っている。眉の描き方が違ったり、まぶたが厚かったり、吊り目気味だったり。細かく見ていくときりがないくらい。

一つの段飾りに、一組のお内裏様と決まっているわけではないらしい……というか、毎年かなり自由に、御所人形や毛作り人形、市松人形や稚児人形なんかも一緒に乗っている。

徳川美術館の創始者である尾張徳川家十九代義親の夫人米子、二十代義知の夫人正子、二十一代義信夫人の三千子の三世代にわたる尾張徳川家の雛段飾りです。さまざまな人形、さらに多種多様な道具がところせましと並べられ、江戸時代以来の大名家の雛段飾りのありかたがよく示されています。
毎年、この段飾りは圧巻。段飾りもそうなんだけど、この飾りを前に、どんな風に家族が集っていたんだろう?
徳川義親氏の本は読んだけど、雛祭りの話はなかったなあ……なんなら、一族の女性も出てこなかったような? あのあたり、もうちょっと注意深く読むべきだった。

ふっくらとしたフォルムに、無垢な愛らしい顔立ちが特徴のお雛様です。木彫で彩色が施されています。彩色は名古屋を中心に活動した復古やまと絵派の日本画家・森村宣稲(1871~1938)によります。同派の祖、田中訥言も木彫彩色を得意とし、その伝統を引いていることがうかがえます。
森村宣稲って、栄の森村記念館の人のご先祖ですか! 豊島家は名古屋の旧家だというから、なるほどそういう繋がりがあるのも、当然と言えば当然……面白いなあ。昔の絵師というと、襖や掛け軸を描いているイメージだったけど、お雛様の色付とか、工芸寄りの事もやっていたのか。

ふっくらとした愛らしい顔立ちの故ども顔をした木目込み人形の内裏雛飾りです。(…)
明治時代までは、内裏雛飾りの人形は大人の顔立ちをした人形が主流でしたが、明治末から様々な趣向を凝らした雛人形が売り出されるなかで、愛らしい子ども顔の雛人形も生まれました。
豊島家の雛人形と同様、丸くポッチャリしている。同じころの作かな? 満面の笑顔なのも可愛い。豊島家の方はこんなに笑ってなかったけど。犬張子も木目込み細工で作られている。やっぱりスン……ってしている。人間と違って、糸目なのがいい味を出してるなあ。
ミュージアムカフェで一休み。

『竹千代(あんみつ)と抹茶のセット』
最後は甘味で〆。花いっぱいのお庭の散策もしたし、お雛様も見て、ようやく春が来たことを実感できたのでした。
ちょっと寄り道してお隣の企業博物館へ。
徳川美術館だけでは何だかもったいない気がしたので、となりのホーユーヘアカラーミュージアムにも行きました。明治大正の毛染め薬の看板やパッケージがいっぱい。他にも、徳川美術館でも見たおはぐろの道具とか、面白いものがいっぱいあって、髪がない私にも楽しめました。
