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【第1回】Pre-CC OSCE医療面接の評価表を読み解く【リーフェ医学情報】

【沈黙が怖くなくなる医学部医療面接】 Pre-CC OSCE 医療面接 全30講/SPケース310収録


Pre-CC OSCEの医療面接は、チェックリスト式の細目評価と、全体の流れを見る概略評価の二本立てで採点されます。

この構造を知らないまま練習すると努力の方向がずれます。

評価表の読み方と、10分をどう割り振るかを解説します。


医療面接の練習を始めるとき、多くの学生がまず「聞くべき項目のリスト」を手に入れようとします。

既往歴、内服薬、アレルギー、家族歴、生活歴——たしかにそれらは聞かなければなりません。

しかし、項目を全部聞けたのに評価が伸びない学生と、聞き漏らしがあるのに高く評価される学生が、毎年確実に存在します。

この差はどこから生まれるのか。

答えは評価表の構造にあります。
Pre-CC OSCEの医療面接は、項目を埋めるだけでは満点にならない設計になっているからです。

本連載の第1回では、まず「何が採点されているのか」を正確に把握します。

地図を持たずに走り出すのが、この試験で最も効率の悪い対策だからです。


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この記事でわかること


  • Pre-CC OSCE医療面接の評価が「細目評価」と「概略評価」の二本立てである理由と、その配分の意味

  • 概略評価の6段階スケールの読み方と、合否境界がどこに置かれているか

  • 10分間をどう割り振るか——ブロックごとの目標時間と、時間切れを起こす典型パターン


著者:原田
所属:株式会社リーフェホールディングス 経営企画室 部長
資格・経歴:
法学部卒|政治学研究科 修士・博士|政治学者、政治学教員、学生指導歴20年以上 
医学生に特化した個別指導塾「医学生道場」のファウンダー

自己紹介:
幼少期より病気がちで、こんにち無事に生活できているのは、医療とそれに関わる人たちのお陰です。将来の医療者として、社会に貢献できる医療系学生の方を積極的にサポートしていきます。


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はじめに ― なぜ「評価表を読む」ことから始めるのか


医学部の試験対策で、出題形式を確認せずに勉強を始める人はいません。
CBTなら多肢選択式で何問出るかを知ってから対策します。
国試なら必修と一般・臨床の違いを踏まえて配分を考えます。
ところが医療面接になると、なぜか「とりあえず模擬面接をやってみる」から始める人が非常に多い。

理由は察しがつきます。
医療面接は技能試験であり、知識試験と違って「何を覚えればいいか」が見えにくいからです。
参考書を開いても書いてあるのは面接の手順であって、採点基準そのものではありません。
結果として、手順を暗記して再現する方向に練習が偏ります。

しかしこの試験は、手順の暗記だけでは上限が低い設計になっています。
共用試験を実施する医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)は、評価方法について明確にこう説明しています。


チェックリスト形式の評価項目による細目評価と、細目評価では測れない全体の流れや円滑さ、医師としてふさわしくない行為などを評価する概略評価の、二本立てである、と。

つまり最初から「チェックリストでは測れないものがある」ことが前提になっている。
ここを理解しているかどうかで、練習の質が変わります。

もうひとつ、この連載を貫く考え方を先に述べておきます。
評価表は暗記するものではなく、構造を理解するものです。
項目を丸暗記して面接中に頭の中でリストを消化しようとすると、視線がメモに落ち、患者の話を聴かなくなり、まさに概略評価で減点される面接になります。
構造さえ理解していれば、項目は自然に流れの中から出てきます。


このシリーズを【沈黙が怖くなくなる医学部医療面接】と名づけたのも、同じ理由からです。
面接中の沈黙が怖いのは、頭の中で「次に何を聞くべきだったか」を検索しているからです。
あの数秒間、学生の意識は患者ではなくリストに向いている。
だから焦るし、焦りは表情と声に出て、評価者に伝わります。


しかし構造が入っていれば、沈黙の意味が変わります。
次の質問を思い出す時間ではなく、患者が話し出すのを待つ時間になる。
そして待つ沈黙は、減点どころか加点要素です。
本連載が最終的に目指すのは、沈黙をなくすことではなく、沈黙を使えるようになることです。


1. 評価は二本立て ― 細目評価と概略評価


まず全体像を押さえます。

細目評価は、いわゆるチェックリストです。
「症状のある部位を聞いたか」「症状の性状を聞いたか」といった項目が並び、実施できたかどうかで加点されます。
ここは対策が立てやすい領域で、多くの学生が時間を使うのもここです。

概略評価は、細目評価では拾えないものを評価者が全体として判断する部分です。
CATOの説明では、全体の流れや円滑さ、そして医師としてふさわしくない行為が対象とされています。
ここが重要です。

項目を全部聞いたかどうかとは独立に、面接全体の印象が別途採点されている


具体的に何が起きるか。
想像してみてください。
ある学生が、聞くべき項目を一つも落とさずに10分間で聞き切ったとします。
しかし終始メモに視線を落とし、患者が「実は仕事のことが心配で」と言いかけたのを遮って次の質問に移り、患者が話し終わる前に「はい、次に既往歴ですが」と進めた。
細目評価は満点に近いでしょう。
しかし概略評価は伸びません。


逆に、生活歴を一つ聞き漏らしたが、患者の話にきちんと相槌を打ち、不安の中身を受け止め、最後に丁寧に要約して確認した学生。
細目では1項目分の失点がありますが、概略評価では高く評価されます。

この二本立ての構造が、冒頭で述べた「項目を全部聞いたのに伸びない学生」の正体です。


2. 概略評価の6段階を読む


概略評価は6段階で判定されます。
厚生労働省の医学生共用試験部会に提出されたCATO資料では、上から順に次のように区分されています。


段階区分の趣旨

  • 6 優れている(医師と遜色ないレベル)

  • 5 良い(学生としてはよくできているレベル)

  • 4 合格レベル(最低要求水準を上回る)

  • 3 合否の境界領域

  • 2 不合格だが改善の余地がある

  • 1 明らかに不合格


このスケールを読むうえで押さえるべき点が三つあります。

第一に、合否の境界が3に置かれていること。
つまり4以上が明確な合格圏です。
目標は「3を取らないこと」ではなく「4を確実に取ること」に置くべきです。

第二に、6は「医師と遜色ないレベル」と定義されていること。
4年次の学生に対して現役医師と同等を求めているわけですから、6は現実的な目標ではありません。

狙うべきは4、余裕があれば5です。

この現実的な目標設定ができていないと、完璧を目指して時間配分を崩すという典型的な失敗に陥ります。

第三に、2に「改善可能」という表現が入っていること。
これは評価が単なる合否判定ではなく、教育的フィードバックとして設計されていることを示しています。
裏を返せば、評価者は「この学生は指導すれば伸びるか」という視点で見ているということです。
指示に従えない、患者への配慮を欠く、といった態度上の問題は、技能の未熟さより重く見られる可能性があります。


3. 課題シートの5ブロックが評価表の骨格


では細目評価は何を見ているのか。実は、当日渡される課題シートそのものが答えを教えてくれます。

CATOが公開しているサンプル課題では、状況設定は各課題共通で「ここは総合外来で、あなたは臨床実習の学生です。
患者さんの◯◯さんは初対面です」という形をとります。
そして課題シートには、実施すべき項目が箇条書きで示されます。
医療面接の場合、その項目は次の5ブロックです。

  1. 導入(オープニング)

  2. 良好なコミュニケーション

  3. 医学的情報を聞く

  4. 心理・社会的情報を聞く

  5. 締めくくり

これが評価表の骨格です。
CATOの学修・評価項目でも、医療面接の領域は診察時の配慮、導入部分、患者との良好なコミュニケーション、医学的情報の聴取、心理・社会的情報の聴取、という構成で整理されています。

ここで注目すべきは、5ブロックのうち2つ(導入と締めくくり)が情報収集そのものではないという点です。
さらに「良好なコミュニケーション」も情報の中身ではなく態度の評価です。
つまり5ブロック中3ブロックが、病歴聴取の巧拙とは別の軸で採点されている。

そして「心理・社会的情報を聞く」が独立したブロックとして立っていることにも意味があります。
これは患者の生活や仕事といった社会的状況、そして病気をどう受け止めているかという心理面を指します。
この連載で繰り返し扱う解釈モデルが、まさにここに対応します。
多くの学生が最も落としやすいのがこのブロックです。
医学的情報の聴取に時間を使い切ってしまい、心理・社会的情報に到達する前に10分が終わるからです。


4. 10分の時間配分 ― 具体的な割り振り


構造がわかったところで、実務の話に入ります。
10分をどう使うか。

以下は、5ブロックすべてに到達するための標準的な配分です。


10分医療面接の進め方
10分医療面接の進め方


この配分の要点を挙げます。

現病歴に使えるのは実質3分半程度です。
これは想像より短い。
練習で現病歴に5分使っている人は、その時点で心理・社会的情報と締めくくりを捨てていることになります。

5分の時点で背景情報に入っていなければ遅れていると判断してください。
これが最もわかりやすいチェックポイントです。
試験室に時計があるかどうかは実施校によりますが、なくても「体感で半分過ぎたら背景情報」と決めておけば大きくは外れません。

要約に1分を確保する
ここを削ってはいけません。
要約は締めくくりブロックの中核であり、かつ聞き漏らした項目を患者自身に補ってもらえる唯一のチャンスでもあります。
「他に何か気になることはありますか」で患者が話し出した内容が、そのまま加点項目だった、ということが実際に起こります。


5. 時間切れを起こす3つの典型パターン


10分で終わらない学生には、ほぼ決まった原因があります。

パターン1:閉じた質問から入る
「熱はありますか」「咳はありますか」と一問一答で進めると、情報量あたりの時間効率が極端に悪くなります。
開かれた質問で患者に語らせ、そこから絞り込む——この漏斗構造が守れているかどうかで、同じ情報を得るのに要する時間が倍近く変わります。

パターン2:聞いた内容を確認しない
患者の答えを聞き流して次に進むと、後で「あれは何分前からだったか」と戻ることになり、往復で時間を失います。
短く言い換えて確認しながら進むほうが、結果的に速い。

パターン3:メモを取りすぎる
CATOの受験ガイドはメモを取ってよいと明記していますが(面接終了後に回収され、持ち出しは禁止です)、書くことに集中すると視線が落ち、患者との対話が途切れ、概略評価が下がります。
メモは数字とキーワードだけに限定するのが安全です。


6. 当日の運用ルールで知っておくべきこと


評価表の理解とは別に、当日の運用について知っておくと余計な失点を防げる点があります。
CATOの受験ガイドから、医療面接に関わるものを挙げます。


  • タイマー付きの時計、事前に作成したメモ、参考書の持ち込みは禁止されています。
    試験会場までの通路も含みます。

  • 模擬患者は、医療面接では試験室のすぐ外で待機しています。
    他のステーションでは室内にいますが、医療面接だけは呼び入れから始まる。
    つまり呼び入れの所作が評価対象になるということです。
    名前で呼び入れる、入室しやすいよう配慮する、といった動作がここに含まれます。

  • 実技開始前に、患者と自分の椅子の位置と向きを調整してよいとされています。
    真正面ではなくやや斜めに、距離は近すぎず遠すぎず。
    調整してよいと明示されている以上、しないことが不利に働く可能性があります。

  • 時間内に終えられなかった場合でも、患者に挨拶をして終了するよう指示されています。
    時間切れで慌てて黙って退室するのは避けてください。


これらは知っていれば守れるだけの話であり、知らなければ落とすだけの話です。


7. 「落ちない試験」だからこそ差がつく場所


最後に、この試験の性質について率直に述べておきます。

厚生労働省に提出されたCATOの解析資料によれば、Pre-CC OSCEでは80点以上を取る学生が全体の9割を超えており、高得点が取れる試験であると分析されています。
同資料は、現状の課題数では信頼性がやや不足する傾向があるとも指摘しています。


これをどう受け取るか。
「では対策しなくてよいのでは」と考えるのは早計です。
二つ理由があります。

ひとつは、合格率が高い試験ほど、不合格になったときの損失が大きいこと。
周囲がほぼ全員通る試験で足を止められると、臨床実習の開始が遅れます。

もうひとつ、そしてこちらが本質ですが、この10分で身につけた型は、そのまま臨床実習と初期研修で使い続けるものだからです。
Post-CC OSCEでは医療面接と身体診察を12分で行い、さらに指導医への報告を4分で行う形式になります。
臨床実習前に面接の型ができていない学生は、実習中ずっと苦労します。

試験対策として最小限で通ることもできる。
しかし同じ時間を使うなら、実習で通用する型として身につけたほうが合理的です。
本連載はその立場で書いていきます。


結論 & むすびに代えて


第1回の要点を整理します。

Pre-CC OSCEの医療面接は10分。
評価は細目評価と概略評価の二本立てで、チェックリストを埋めるだけでは概略評価が伸びない設計になっています。
概略評価は6段階で、合否境界が3、狙うべきは4以上。
課題シートに示される5ブロック(導入・コミュニケーション・医学的情報・心理社会的情報・締めくくり)が評価表の骨格であり、うち3ブロックは病歴聴取の巧拙とは別の軸で採点されています。

10分の配分では、現病歴に使えるのは実質3分半。
5分の時点で背景情報に入っていなければ遅れています。
要約の1分は死守してください。

冒頭に書いたことを繰り返します。
評価表は暗記するものではなく、構造を理解するものです。
この記事で示した構造が頭に入っていれば、あとは型を身体に通すだけになります。

次回は、その型そのものを扱います。
入室・名乗り・同意取得から、要約、クロージング、退室まで——全ケースに共通する一本の流れを組み立てます。
ここを固めてしまえば、症例が変わっても最初の40秒と最後の1分40秒は毎回同じものが使えるようになります。
10分のうち2分以上が定型化できるということです。

そのうえで、「今日はどうされましたか」と尋ねた後の3秒を、黙って待てるようにします。
この3秒に耐えられるかどうかが、面接の情報量を大きく左右します。


なお、実施時期・課題数・試験室の運用は大学によって差があります。
本記事は公開資料に基づく一般的な整理であり、最終的にはご自身の大学の実施要項を必ず確認してください


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FAQ

Q1. 細目評価と概略評価は、どちらの比重が大きいのですか?

A. 配点比率は課題や実施年度によって扱いが異なり、公開資料からは一律の比率を示すことができません。
ただし対策上の考え方としては、比率を気にする意味はあまりありません。
細目評価は「聞くべきことを聞く」で伸ばし、概略評価は「聞き方と流れ」で伸ばすもので、対策の中身が別だからです。
両方やる以外にありません。
強いて言えば、細目評価は独学でも伸ばせますが、概略評価は他人に見てもらわないと自覚しにくい領域です。
友人同士の練習では、チェックリストの消化率よりも「聞いていて話しやすかったか」のフィードバックを重視してください。


Q2. 試験室に時計はありますか。時間管理はどうすればいいですか?

A. タイマー付きの時計の持ち込みは禁止されています。
室内の時計の有無は実施校の運用によるため、時計がない前提で練習しておくのが安全です。
おすすめは、経過時間ではなく「ブロックの通過」で管理する方法です。
主訴を引き出した/現病歴を聞き終えた/背景情報を聞き終えた、という節目を意識し、体感で半分を過ぎたら背景情報に入る。
練習時にストップウォッチで10分を計り、各ブロックの通過タイミングの体感を身体に入れておけば、本番で時計がなくても大きく外れません。


Q3. 時間内に全部聞き終わらなかった場合、どうすればいいですか?

A. 慌てて残りを機関銃のように聞くのは最悪の選択です。
細目評価で数項目拾える代わりに、概略評価が確実に下がります。
CATOの受験ガイドは、時間内に終えられなかった場合でも患者に挨拶をして終了するよう指示しています。
残り1分を切ったら、聞き残しは諦めて要約と締めくくりに移ってください。
「本日うかがった内容を確認させてください」と短く要約し、「他に伝えておきたいことはありますか」で患者に補足の機会を与え、挨拶して終わる。
この形で終われば、時間切れでも面接としては成立します。


参考文献・出典


  1. 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「OSCE 学習・受験ガイド」 https://www.cato.or.jp/cbt/medical-osce/o_guide.html

  2. 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「医学系OSCEサンプル課題」 https://www.cato.or.jp/cbt/medical-osce/o_sample.html

  3. 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)「医学系OSCE公開資料」 https://www.cato.or.jp/cbt/medical-osce/index.html

  4. 厚生労働省 医道審議会医師分科会医学生共用試験部会 参考資料「共用試験OSCEの意義と概要/臨床実習前OSCE/臨床実習後OSCE」(CATO作成) https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000921517.pdf

  5. 厚生労働省 医道審議会医師分科会医学生共用試験部会 参考資料(令和4年4月22日) https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000932163.pdf

  6. 公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)公式サイト https://www.cato.or.jp/


※ 概略評価の区分および試験室構成に関する記述は、上記4の公開資料に基づいて筆者が整理したものです。
制度は改定される場合があるため、受験にあたっては必ず最新の情報と自大学の実施要項をご確認ください。


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Pre-CC OSCEの医療面接は、聞くべき項目を全部聞いても点が伸びません。 細目評価とは別に、面接全体の流れを見る概略評価があるからです。 本マガジンは、この評価構造をCATO・厚生労働省の公開資料から読み解き、10分の時間配分に落とし込みます。 SP模擬患者ケースは全310収録。 頻出主訴に加え、怒っている患者、寡黙な患者、家族が代わりに答える場面まで、実際に差がつく状況を網羅しました。 ここで身につく型は、試験だけでなく臨床実習とPost-CC OSCEでそのまま使えます。

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