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Loser’s Design Log:未完デザインの裏道 Vol.2 コンピュータがあれば何でもデータ完結する時代にほんとうに必要なこと。知りたくありませんか?

コンピュータがあれば何でもデータ完結する時代にほんとうに必要なこと。知りたくありませんか?




© HomeComputerMuseum / Dylan van Voorthuijsen

Macintosh Quadra 950には車のエンジンキーのような鍵が付いていたことをご存知だろうか?

 起業した1991年頃というのはウェブやコンピューターの黎明期の時代であり、MACやSGIのIndigoや謎マシーンのアミーガを使い仕事をはじめたその当時、アナログ時代から信じられないようなシフトが起こっていた渦中にいたことは実に幸いでした。今も当時から制作環境は大きく変化しているわけだし、環境が変わればそれまでのデザイン職に必須とされてきたスキルや知識も変わって当然だと、私自身わりと素直に受け入れられるくらいに柔軟な存在であると最近なんとなく実感してたりします。 
 ちなみに1991年頃、当時はIllustratorがVer.3.0、MACはQuadoraシリーズという時代、すでにDTP環境が整備されつつある時代で、そんな最中に起業したこともあり、実際のところアナログ作業のノウハウを学んだのは大学時代に過ぎず、さらに言えば建築学科だったということもあってグラフィックデザインに関する基礎知識すらもままならない状況で事務所を設立しました。就職経験なしのショートカット起業はかなりの離れ業だったという他ありません。無謀なことにハード環境およびアプリケーション環境を一気に整備するために軽く100万超えの先行投資を余儀なくされつつも、数年先にはその判断は正しかったと心の底から思うのでした。

情報が無くても割と楽しく過ごせた時代

 そんなど素人同然の私はAdobeなどのDTPアプリケーションや3Dアプリケーションの操作を筆頭に、印刷の基礎知識、デザインのセオリーなど全くといって理解していなかったといっても過言ではないでしょう。近頃のようにAIから情報を引き出したり、ましてやインターネットで調べたりとかYoutubeで学んだりなんてことはできませんし、そもそも本屋においてもその手の情報は限られていました。 
 それで、どうしたかというと、wwwがMosaicによって一般に公開されたのが1993年ですから、まさに1991年ミネソタ大学が開発したテキストベースのネットワーク、Gopherのアカウントを取得し情報を得たり、本を購入するお金を惜しんで図書館などで読んで記憶するなど、すべて独自に学んで習得しました。
 情報が希薄な時代、今と比較して不便だと思う人も多いことでしょうが、不思議と不便さを感じてはいなかったのは事実です。「学ぶ場所が限られていたこと」を不便だと感じるのは、むしろ(時代の異なる環境との)比較から感じられることであり、あまり意味のない議論だと思います。

Text generated by ChatGPT, OpenAI, March 27, 2026, https://chatgpt.com/.

デジタル作業の違和感

 23歳そこそこの無謀な起業から、あの手この手で知識とスキルを調達し、当時すでに存在していた対デザイナーの企業マッチングサービスなども利用しながら、それなりに仕事をぽつぽつとこなし成果を出していたわけですが、デジタルワークが主流になりつつある当時よりすでに感じていたこととして、何となく現場感覚がつかめずに希薄なまま進んでいる感じがありました。ズレ?というかアンリアルというか。確かにWYSIWYG(ディスプレイに現れるものと印刷結果など処理内容が一致するように表現する技術)などは素晴らしいテクノロジーで私のような未経験者でも完成品をイメージできるという意味で画期的であり、業界全体として「先駆的技術への賞賛」というか、手放しで評価していた風潮があったように思います。
 例えばフィルムカメラとデジタルカメラではデジカメはその場での確認できますが、フィルムカメラは技術と知識がある程度ないと想定したイメージの写真は撮れないですよね? その点このWYSIWYGが実装されたコンピューターでのデータ作業は、いわば実態としては「見せかけ」というと大袈裟ですが、ただ雰囲気を確認してるだけなんだよなとすぐに気づきました。特に最近はこの業界、WEBのようなデータ上で完結する案件が増えているということもありますが、最近のデザイン教育の傾向をみてもレイアウトセオリーのようなデジタルワークに準拠した学びが多い割に、紙媒体などへの出力プロセスの知識なんていうことは学ばなかったりします。

 事例として色についていえば、厳密にはモニターはキャリブレーション処理されてなければモニタごとに色は違いますし、ましてや出力機のカラーマッチングも調整していたとしても随分異なります。印刷工程を経る場合、印刷する用紙がコーテッドペーパーなのか、微塗工紙なのかなど紙の種類によってインク吸収が異なることから、使用する紙によっては2段階近く色が沈んだりしますし。
 つまり結論、モニタを信じるな。です。それは中学からの友人であり当時、東京の印刷会社でイメージセッターのオペやってたY君のような化け物だけが許される特典です。余談ですが彼は英国製の、当時導入に1億円以上はしたといわれるイメージセッターのオペレーターをしていた男ですが、彼の得意技は色を一目みただけでCMYKの数値を言い当てるという人間色分解の神技をもっており、その際立った能力に嫉妬を超えて羨望すら抱いていました。我らのような凡庸な生き物は、そもそも一致しない色味をモニターだけみて「うんうん、いい感じ」とかいい気になって終わっていたりします。だからこそやはりアナログ知識や経験をコツコツと積み上げる必要があります。色校は当然としてVol.1(文末にリンクを貼っています)で登場したプリンティングディレクターM氏のようなプロと仕事をしたとしても、まずはそれ以前にしっかりデジタルとアナログ出力の関係が意識できるからこそプロデザイナーが名乗れるのだろうなと。「デジタル、便利ですよねー」と駆け出しの頃にデジタル礼賛していた典型的なお調子者の私ではありましたが、最初の仕事で衝撃を受け、早速アナログ知識不足の洗礼を受けたからこそ、今があるなあとほんとに実感します。

膜面って、何?

 当時、ネット印刷がなかった時代は印刷会社にデータ持ち込んで直で入稿するというのがデフォルトでしたが、ネット印刷の前身ともいえる立ち位置にあったのは早くからDTPのタイプセッターやイメージセッター・製版機を導入した特定のコピー屋さんであり、こうして早くからデジタル入稿が可能な環境が都市部などでは整備されていました。そんな呑気な時代のある日、私はMO(光磁気ディスク)なる当時最新のメディアに、某学会の依頼を受けて作成した京都で開催される学会大会の告知ポスターのデータを詰め込んで、少しづつ関係ができつつあった印刷会社に意気揚々と持ち込みました。

「はい、じゃこれ」と受付担当者から渡された紙はいわゆる依頼内容の記載書です。
「これ、全部書いた方がいいですか?」と私。
「全部書いて」と担当者。
「・・・・」私。
とりあえず、国勢調査が可愛く思えるほどに死ぬほど並んだ記述欄とチェック項目を無言で埋めながら、ピタッと筆が止まります。そして、
「すみません、時間かかりそうなので出直してきます。」と担当者に言い捨ててダッシュで丸善に向かうはめになりました。

 いくつかの項目に見慣れない文言が並んでおり判断がつかない指示項目を熟考したいためにまずは一旦退却し、徹底的に印刷過程の基礎を復習したうえで適切な判断を下すためです。
 例えば、「膜面の上下」や「膜・乳剤の種類」なんていうのは印刷プロセスや材料の表面特性に関する知識であって、デザインそのものとは大いに関係なさそうにみえるわけですが、今でこそオフセット印刷であれば下だよね、とかすんなり答えられるのも、若い時にそのような経験があったからこそだと思います。今のデザイン制作環境に必要かどうか、確かに無くても仕事として成り立つのは、別の工程で処理されておりその情報が私たちにフィードバックされないといった事情からでしょう。冊子でもネット印刷を使っている限りにおいては、台の「面付け作業」をデザイナー自らする必要もなければ機会もないので、そういう知識も不要だよね、となってしまう。
 恐らくこの傾向は加速していくと思います。プラットフォームやサービスの使い方がわかっていればデザインスキルや知識もブラックボックスのアウトソーシングサービスに任せておいたらよいというところ。それを否定するプロデザイナーさんの立場からするとデザインの敷居が下がり価値が下がることは価格競走に巻き込まれて勝てなくなることから批判的な方も多いという印象です。私の考え方は少し違うかなと思います。まずそういう時代になったということは紛れもない事実なので、むしろ選択の自由というかアプローチの多様性を認めた上で、セルブブランディングの一環として自分のあるべき姿ややり方を選択的に生きる方ということでよいのではないかと。

 その割にはこのnoteはどうも古い時代の価値を引きずりすぎてるだろ、と。確かなのはスキルは今や誰しもが手に入れられるしアップデート必要だけどやり方はAIが教えてくれる。でも知識は古くなっても絶対になくならないということと結局のところ知らないより圧倒的にアドバンテージがあるのは経験が実証してます。だから私ブランドとしてはそうしたやり方の方が100倍いいというのが私の選択です。そっちの方がクールだからそうしますというだけです。
 どういうやりかをするかはそれぞれの自由ですが、しれっと知識つけて先に行くほど優位が確立するやり方を、特にこれからいくらでも時間のある若い方々にはおすすめします。



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