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市議会、函館市および函館市長の見解まとめ(〜6/12)

前回に引き続き、(仮称)函館寅沢風力発電事業の計画に対して、市議会、函館市各行政部局、函館市長が、6月1日からの市議会定例会を通じて、どのような質問、答弁を展開し、どのような決議がなされていったか――それに先立つ5/13の民生常任委員会協議会の動き、6/3に同委員会から函館市に提出された「提言書」、そして5/26に私たちから市議会へ提出した「陳情書」の内容も含めて、まとめます。

5/13  函館市議会 民生常任委員会協議会での議論

市議会定例会に先立って、5月13日に、風力発電事業を所管する市議会・審議委員会の民生常任委員会協議会が開かれ、本年4月1日に施行された「函館市再生可能エネルギー発電施設の設置および管理に関するガイドライン」に基づき、当該風力発電事業計画が妥当なものかどうかの検証と議論がなされました。当日の議論について、民生常任委員会委員長の小林よしゆき議員のブログより、以下に引用紹介させていただきました。


会議では、(民生常任委員会の)正副委員長で事前に作成・配付した「論点整理資料」が土台となり、委員の皆様から非常に鋭く、核心を突いた活発な質疑が行われました。事業者のアセスメント手法に欠落している「市民の命に関わるリスク」や「函館の地域特性への配慮」について、市のガイドラインを基準として厳格に市側(環境部)の見解をただしました。

その結果、本日の協議会では、今後の審査を左右する極めて大きな成果(環境部からの前向きな答弁)を議事録に残すことができました。特に重要なポイントは以下の通りです。

​① 洪水リスク等の評価について
亀田川・松倉川上流域の保安林の大規模改変に対し、事業者は「水量の変化(洪水リスク)」を調査対象から除外していました。これに対し環境部からは、下流域への市民生活への影響が懸念されるとして、「適切な調査、予測、評価が必要であると認識している」との明確な答弁を引き出しました。

​② 函館の夜景・景観への影響について
195mの巨大風車11基の景観影響を「静止画一枚」で済ませようとする事業者の手法に対し、環境部から「風車の回転や航空障害灯の明滅などの動的な景観変化に関する調査手法も活用することが有効」であり、「日没、夜間についても適切な評価が必要」であるとの見解が示されました。

本日の議論により、事業者の「方法書」における調査項目の不十分さについて、委員会と市当局(環境部)の問題意識が大きく一致したと言えます。委員長として中立・公正に議事を進める中で、このような客観的かつ建設的な議論が展開されたことは、大きな意義があります。


民生常任委員会では、この後、6月3日に、函館市への「提言書」をまとめ、提出することになります(後述)。

5/25 函館市 町会連合会から、函館市長へ「要望書」を提出

5月25日には、函館市の町会連合会から、大泉・函館市長へ、「要望書」が手渡されました。江頭会長ら役員6人が大泉市長を訪問。江頭会長は、地域住民から環境や景観、水資源、低周波による健康被害に関する不安や懸念の声が多く寄せられており、深く憂慮していると表明。要望書を通じて、住民の声を十分に聞き、理解を得ながら進めるよう事業者に求めることを市に要望。市長は「重く受け止める」と述べました。(ヤフーニュース/函館新聞より)

大泉 函館市長に要望書を手渡す町会連合会役員

ヤフーニュースより

市民の声を代弁する町会連合会から、早い段階で要望書が出されたことには驚きもありましたが、事業者の公式説明会(4/17-18)に加え、5月に入って函館市女性会議の要請による事業者説明会などでも、満足な説明が得られなかった、事業者の応答があいまいで不誠実だ、といった声が、市民から多く上げられたことが背景にあると考えられます。

5/26  函館の水源と生態系を守る会から、市議会へ「陳情書」を提出

5月26日には、私たち「函館の水源と生態系を守る会」から、市議会宛の陳情書を提出しました。民生常任委員会協議会には間に合いませんでしたが、市議会定例会での議論に取り上げられることを目指しました。内容は次のとおりです。


(仮称)函館寅沢風力発電事業に関する陳情書

1 陳情の趣旨

私たちは、再生可能エネルギー政策の必要性そのものを否定するものではありません。再生可能エネルギー政策の必要性は十分認識しております。しかしながら、再生可能エネルギーであっても、立地場所や地域特性への十分な配慮が必要です。

本計画地は、亀田川・松倉川上流域に位置し、新中野ダム・笹流ダムを通じて函館市民の水道水源を支える重要な地域です。
また、水源涵養保安林、保健保安林、植生自然度の高い森林、希少猛禽類の生息域、土砂災害警戒区域周辺など、多面的な公益機能を有する地域でもあります。
さらに、本計画は約29haの森林伐採を伴う大規模開発であり、流域全体の環境や、真昆布や「函館サーモン」をはじめとする沿岸漁業・水産資源、観光及び地域ブランドとの関係性についても慎重な検証が必要と考えます。
加えて、大型部品搬入路については、地すべり地形分布図等で示される区域や鳥獣保護区周辺を通過する計画であることから、道路拡幅や森林伐採に伴う防災上・環境上の影響についても十分な調査と説明が必要です。
さらに、縦覧期間終了後に公表された正誤表については、住民意見形成や環境影響評価制度の信頼性に関わる問題として、慎重な検証が必要です。
よって函館市議会に対し、市民の安全・安心と公益性を最優先とする立場から、本計画について科学的知見に基づく追加調査、情報公開及び住民説明の徹底を含め、慎重かつ適切な対応を求めるものです。

2 陳情事項
(1)函館市民の重要な水源地域である亀田川・松倉川上流域における大規模風力発電開発について、市民生活・水道供給・防災・自然環境・景観への影響について十分に配慮し、科学的知見に基づく追加調査及び住民説明の徹底を含め、慎重かつ適切に対応すること。
(2)環境影響評価において、水源涵養機能、豪雨時の土砂・濁水流出、地滑り・土砂災害、保安林、景観・観光資源等について、第三者専門家等による客観的な検証体制のもと、必要に応じた追加的検証を行うこと。
(3)大型部品搬入路の道路拡幅、森林伐採及び地形改変について、地すべり地形分布図等で示される区域、鳥獣保護区、水源流域等への影響を含めた客観的かつ丁寧な検証を行うこと。
(4)山地・河川・沿岸域を一体として捉える流域的観点から環境影響評価を行い、水源、河川、沿岸域及び真昆布や「函館サーモン」をはじめとする地域産業への影響について、科学的知見に基づき検証すること。
(5)函館市再生可能エネルギー発電施設の設置および管理に関するガイドラインの趣旨を踏まえ、市民が容易に閲覧・理解できる情報公開及び住民への十分な説明機会を確保すること。
(6)縦覧期間終了後に公表された正誤表については、住民意見形成に影響を及ぼし得る重要な修正として、住民参加手続き及び環境影響評価制度の信頼性の観点から慎重に検証すること。
(7)必要に応じ、方法書の再縦覧、住民説明会の再実施及び修正内容に基づく再意見募集等を事業者へ求め、市民が正確な情報に基づいて意見形成できる機会を確保すること。
(8)事業終了後における風力発電施設の撤去、地下基礎を含む原状回復及び撤去費用の資金的担保について、十分な確認と検証を行うこと。また、事業主体変更時においても、環境保全措置及び住民対応が適切に承継される仕組みについて確認すること。

3 陳情理由
本計画については、函館市民の水道水源、防災、景観、法定アセスメント手続き及び情報公開に関わる公益性の高い問題です。
また、流域環境を通じて真昆布や「函館サーモン」をはじめとする沿岸漁業、水産加工、観光及び地域ブランドへの影響も懸念されます。
さらに、本地域は縄文世界遺産を有する地域圏とも関係しており、景観・文化資源への配慮も求められます。
山地・河川・沿岸域を一体として捉える流域的観点からの検証が必要であり、本件については、水源保全、防災、保安林及び法定アセスメント手続きの信頼性に関する懸念がなお残されております。
特に、本計画地は函館市民の水道水源上流域に位置しており、一度大規模な地形改変が行われた場合、その影響は長期に及ぶ可能性があることから、予防的観点に立った慎重な検証が必要と考えます。
函館市には、市民の生命・安全・水道を守る責務があります。その観点から、国策との調和を図りつつも、地域特性を踏まえた公益的観点から慎重な対応と適切な情報公開が必要であると考えます。
以上、地方自治法第124条の規定により陳情いたします。

【添付資料】
・参考:「(仮称)函館寅沢風力発電事業 環境影響評価方法書に対する意見書」
(※函館の水源と生態系を守る会・共同代表のうち4名の、事業者への意見書のコピーを添付しました)


6/1  函館の水源と生態系を守る会から、函館市長、北海道知事へ、署名と「要望書」を提出

そして私たちが市長宛および北海道知事宛に署名と要望書を手渡した6月1日から、函館市議会は本年第2回定例会の会期に入りました。署名と要望書の内容については、前回の記事を参照ください。

6/3  民生常任委員会から函館市長へ「提言書」の提出

民生常任委員会は、前述の協議会での議論を踏まえて、市議会定例会会期中の6月3日、大泉市長宛に「提言書」を提出します。
「水源涵養(かんよう)保安林の保全や生態系への影響が強く危惧され、市民生活に直結する、決して見過ごせない深刻な問題であることが確認された」とし、事業者の環境影響評価方法書について「地域との共生を十分に図るものとは言い難い」などと批判し、計10項目の留意点を列挙しています(毎日新聞電子版より)。

田中環境部長に提言書を手渡す函館市議会民生委員
北海道新聞電子版より https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1320282/

「提言書」の具体的な内容は以下の通りです(函館市議会 民生常任委員会委員、道端克雄市議会議員の公式ブログより)


函館市再生可能エネルギー発電施設の設置および管理に関するガイドラインに基づく
(仮称)函館寅沢風力発電事業環境影響評価方法書に対する意見について

このことについて、民生常任委員会委員協議会において(仮称)函館寅沢風力発電事業環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)の記載内容と、令和8年4月1日に施行された「函館市再生可能エネルギー発電施設の設置および管理に関するガイドライン(以下「ガイドライン」という。)」の規定を対比し、調査したところ、水源涵養保安林の保全や生態系への影響が強く危惧され、これは市民生活に直結する、決して見過ごせない深刻な問題であることが確認された。
 また、景観上の影響も看過できないことに加え、低周波音等による健康被害への懸念なども含め、方法書における調査・予測および評価手法について市民の不安は払拭されておらず、ガイドラインの根本理念である「地域との共生」を十分に図るものとは言い難い。
 したがって、環境影響評価法第10条第2項の規定に基づき、方法書について北海道知事から環境の保全の見地による意見を求められた際は、下記事項に留意のうえ意見を提出するなど、事業者に対し厳格な対応を図られたい。

                 記

1 事業実施区域の下流域における洪水リスクの調査および予測を行わない現行の評価手法は、ガイドラインが掲げる「水資源の保全」や「災害への対策」に対する環境アセスメントとして適切とは言えず、市民の生活環境の保全や安全性の確保に深な影響を及ぼすことが懸念される。

2 縦覧期間終了後、意見書提出期限の直前において方法書を修正する事後的な対応は、適正な情報開示に基づく市民の意見形成を妨げる行為であり、環境アセスメントの透明性および手続きの正当性を著しく損なうものである。よって、事業者に対し、計画の根底からの再検証を求められたい。

3 住民説明会等において、災害リスクや水害リスクに関する説明が著しく不足しており、市民の正しい理解と合意形成を阻害していると言わざるを得ない。よって、事業者に対し、リスク情報を全面開示させた上で説明対応をするよう厳格に指導されたい。

4 事業実施区域が土砂災害警戒区域に含まれているのに対して、災害に関する地形や地質の調査・予測を行わない現行の評価手法は、ガイドラインが掲げる「災害への対策」に対する環境アセスメントとして適切とは言えず、市民の安全性の確保に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。

5 生態系への影響に係る現行の評価手法は、動物の生態的変化に限定されており、生息域を追われ逃避したヒグマが市街地へ流入した際の「人里への出没・人的被害リスク」が評価されておらず、市民の安全性の確保の観点から環境アセスメントとして不十分である。

6 景観(夜景)および騒音の影響に係る現行の評価手法は、最大高さ195メートルの風車11基の回転や航空障害灯の明滅などの「動的な要素」、谷状地形における「音の反響・増幅」を反映しておらず、本市の地域特性に応じた環 境アセスメントとして不十分である。

7 環境影響評価法における第1種事業の基準をわずかに下回る出力設定によって同法第3条の3に規定する計画段階環境配慮書の作成を省略し、合意形成プロセスを簡略化する手法は、ガイドラインの根本理念である「地域との共生」を欠いた進め方であると言わざるを得ない。

8 事業実施区域にはの道有の水源涵養保安林が含まれており、当該保安林の指定を解除してまで同地において事業を推進すべき合理的かつ客観的な根拠について、広く市民へ説明を行うよう事業者に対して要請されたい。

9 撤去および処分費用の確保に向けて、市のガイドラインに基づき、適切な撤去等の実施および費用の計画的な積み立てを行うよう事業者に対して要請されたい。

10 本事業については、税収や地域経済への効果が期待される一方で、市民生活への甚大なリスクや、将来的な行政負担とならないよう、市民の意見を十分に聴取した上で、慎重に検証されたい。


民生常任委員会の「提言書」の内容を見ると、私たち函館の水源と生態系を守る会の「陳情書」の内容がほとんど盛り込まれていることがわかります。こうした布石を踏まえて、市議会での一般質問が始まりました。

6/9 市議会定例会、一般質問始まる

函館市議会定例会は、6月9日から一般質問が始まり、初日9日に、(仮称)函館寅沢風力発電事業に関する質問が集中しました。

まず、野沢友志議員(民主・市民ネット)より、当事業および(仮称)戸井風力発電事業に関する質問がなされ、続いて池亀睦子議員(公明党)より、「当事業に対する全庁的な対応と歴史的・自然的財産の保全について」とする質問がなされました。その他にも、同日の紺谷克孝議員(日本共産党)からはいくつか技術的に焦点を絞った質問が、最終日6月12日の川崎啓太議員(無所属)からは、再エネ事業全般に対する市の姿勢を問う質問がなされました。

各部局長、教育長の答弁

その中でも、池亀議員の「全庁的な対応」を問い、かつ「歴史的・自然的遺産の保全」という論点を持ち込んでの質問は、函館市の関連部局を横断して各部局長や教育長を答弁に引っ張り出し、最後は大泉・函館市長にまとめさせるという、まさに上記・民生常任委員会「提言書」を市議会の場で揺るぎないものにするような質問ー答弁が繰り広げられました。以下に主な答弁を記しました。(函館市議会公式YouTube動画より)


池亀議員:(冒頭略) 函館市民の生命と財産、そして豊かな生活環境を守る立場から、現在、本市において手続きが進められている本事業について、市民の皆様から、生活環境や自然破壊を危惧する切実な声が多数寄せられております。(中略)
先月26日の定例記者会見において、市長が本事業に対し一歩踏み込んだ懸念を表明されました。市民の不安に寄り添ったこの姿勢は、函館を守る第一歩として評価をさせていただきます。しかしこの問題は、市長の懸念表明だけで終わってはなりません。すでに所管である民生常任委員会の小林委員長のもとで、市のガイドラインに基づく徹底した客観的検証が行われ、環境部に対して、事業者の調査・予測手法には重大な欠落があり、計画の抜本的見直しを求める旨の大変厳しい提言書が示されました。
さらに直近になって、事業者が縦覧期間の間際になって正誤表を出し、土砂災害警戒区域や最高ランクの植生自然度10の自然林を除外したという当初の記載から、事業区域に含まれるという内容へと書き換えるという、きわめて不誠実な後出しの計画修正を行なっていた事実も判明いたしました。(中略)
この問題は、環境部一局にとどまらず、函館市の全庁的な危機管理能力が問われる重大な局面にあります。行政の縦割りを廃して、見渡せば本事業は、本市の根幹を揺るがす重大なリスクの塊です。(中略)

はじめに、環境部長に改めてお聞きします。(仮称)函館寅沢風力発電事業のこれまでの経過と、市民からどのような声が寄せられているのか、確認の意味で伺います。

環境部長:当該風力発電事業におきましては、令和6年1月に初めて事業者が来庁した際、事業の実現性を検討するため、風況調査を行う意向が示され、令和7年5月には、事業の概略と環境影響評価手続きを検討していること、その後、事業の進捗状況の報告や、環境影響評価手続きに向けた相談などで3回ほど来庁され、本年2月には、方法書の縦覧の実施について報告を受けたところでございます。
また、市民からは、土砂崩落の可能性や、水資源、景観・夜景への影響、ヒグマの出没などに対する不安や懸念の声のほか、事業者の対応などに対する不満の声も多くいただいており、さらに、審議委員会・民生常任委員会からのご提言、町会連合会や市民団体からのご要望に加え、市内外の皆様からの3万62筆にも上る発電計画の撤回を求める署名をいただいたいところでございます。

(以下、質問項目ごとに各部局長等への質問が展開されますが、池亀議員の質問は省略させていただき、各部局長等の答弁を中心に記します)

(保安林の解除に関する質問)
農林水産部長:
(事業者からの要請に応じての)解除は望ましくなく、極力保安していかなければならないと認識しております。
仮に解除するとしても、解除の目的が、保安林の公益性よりもさらに高度な公益目的が生じていなければ、原則として認められないとされているほか、市町村長の意見書が必要とされております。
また当該地域を借地として建設される場合についても、森林の公益的機能の発揮に支障がないことが条件とされているほか、市町村長の賛同が必要とされております。いずれにしましても、事業者においては、保安林が地域に与える役割に鑑み、風力発電の建設により、水源涵養機能や災害防止といった公益的機能が失われないこと、また地域住民の不安を払拭することが必要であり、本市において強く求めてまいりたいと、このように考えます。

(景観行政に関する質問)
都市建設部長:
本市は平成20年に景観計画を策定し、一定規模以上の建築行為について、景観形成の誘導を行なっております。現在計画されている風力発電は、本景観計画の誘導対象となるものであり、主要な眺望点からの景観に配慮することが求められております。通常の建築物等とは異なる形状を有していることから、景観誘導に適合しているかどうかを、景観審議会への意見を聞くことも必要であると考えております。
(池亀議員:変更命令に効力はあるのか?)
景観法に基づく変更命令については、景観指定地区や縄文指定地区においては設けていますが、寅沢は地域外であります。しかし本件については、指導を行うことができ、かつ指導に従わないときは勧告を行うことができます。

(水資源に関する質問)
企業局長:
本市の水道事業は、明治22年に亀田川上流の良質な水を水道水源として事業を開始し、大正初期から、地域住民の理解を得ながら、笹流ダム上流における民有林の購入や、水源涵養保安林の整備など、水源や流域の保全に向けた取り組みを継続的に行い、良質な水環境の維持に努めてきたところであります。
また良好な環境から得られる、良質で豊富な水は、市民生活を支える重要なライフラインとして、これまで市政の発展に寄与したところであり、今後におきましても、市民が安心できる安全な水を、安定的に供給していくためには、これまで先人から受け継いだ水源の環境を守り続けていくことが極めて重要であると認識しているところでございます。
企業局といたしましては、水源の集水区域での大規模な掘削による大規模な地形の改変や、水源涵養保安林の伐採における影響についても調査を行うよう求め、水質汚濁により水道水の供給に支障をきたすことが認められる場合には、事業内容の見直しを求めていく必要があると考えているところでございます。

(アヤメ湿原の古環境アーカイブとしての保全に関する質問)
生涯学習部長:
事業予定地周辺には、アヤメ湿原と呼ばれる小さな湿原がございますが、湿原中の地層には、周辺の花粉が堆積し、花粉化石として固着することが知られております。アヤメ湿原におきましては、過去に花粉分析調査が行われた結果、この地域においては、縄文時代創成期における寒冷期の期間が短かったことが判明するなどの、研究成果が認められているところであり、現在の環境が守られることで、将来にわたり、気候変動や環境変化にかかる科学的データの取得対象となりうる、希少な古環境アーカイブとして、学術的価値があるものと認識しております。

(世界遺産の価値保全に関する質問)
教育長:
世界遺産、北海道・北東北の縄文遺跡群の構成遺産である、史跡 大船遺跡、史跡 垣ノ島遺跡につきましては、海岸段丘状の高台に位置しておりますことから、史跡内からは現代的景観が目に入らず、縄文時代を想起させる自然豊かな景観が保たれているところでございます。教育委員会としましては、世界遺産の価値の保全と、次世代への適切な継承は重要な責務であると認識しておりますことから、当該事業が世界遺産の価値や歴史的景観に影響を及ぼすと認められる場合には、事業者や関係機関に対して必要な意見を明確に述べるなど、文化財保護行政を所管する立場から、厳正に対処してまいります。また今後におきましても、関係部局や国・北海道などと連携しながら、世界遺産の価値の保全と次世代への適切な継承に向け、引き続き必要な対応に努めてまいりたいと考えております。

函館市長の答弁

(以上の答弁を踏まえて、最後に函館市長へのまとめの質問が行われました)

函館市議会 公式YouTubeチャンネルより

池亀議員:(以上、)各部局長および教育長に確認した通りでございます。本事業は環境面のみならず、防災、手続き、景観、水道水源、そして世界遺産という、本市の根幹を脅かす全庁的なリスクを抱えております。加えて、先ほど申し上げた通り、事業者は市民の命に関わる土砂災害リスクや、自然破壊の事実を、後から正誤表で追加し、住民説明会をやり直すことも、意見書の提出期限を延長することもしませんでした。このような不誠実な手続きを行う事業者の姿勢そのものが、本市として市民に対する重大な背信行為です。そして何より、所管の民生常任委員会から、極めて厳格な対応を求める提言書が突きつけられているという、非常に重い事実があります。一企業の経済活動のために、市民の命と財産、函館が世界に誇る歴史的自然的財産を危機に晒すことは、断じて許されません。世界遺産を有している本市にとって、この事業が抱える全庁的横断的に対応すべきリスクはもちろんのこと、後出しで計画を修正する業者の不誠実な姿勢、また民生常任委員会から提出された計画の抜本的な見直しなどを求める意見書の内容を踏まえ、今後、市長の意思で、事業の見直しなど、政治的判断を下す考えがあるか、お聞きします。

大泉市長:本市は、世界遺産の縄文遺跡群や、豊かな資源、また函館山からの景観や夜景など、未来に継承していくべき様々な地域資源に恵まれております。今回検討されている風力発電事業につきましては、水資源や景観、夜景への影響のほか、土砂崩落の可能性や、人里へのヒグマの出現など、課題が多いと認識しておりますほか、市民の皆様をはじめ、民生常任委員会、函館市町会連合会、市民団体からも、多くのご意見ご要望を頂いております。
私としても、方法書で示された事業規模では、水源涵養保安林が広範囲で伐採されると想定されるため、水資源や自然環境、生態系、景観などへの影響が及ぶのではないかと強く懸念しているところであります。市民の不安や懸念、不満の声が解消されず、理解が進んでいない状況にある場合、あるいは環境保全や水資源などに重大な影響があると判断される場合は、進めることを受け入れることはできないと考えております。

池亀議員:記者会見では問題が多すぎると、そしてこのまま進めることを受け入れることは難しいと考えている、そのようにご答弁をいただきました。函館市民の代表として、その意思を強く訴えるということを、市長からお聞きしたように思います。期待しています。
どうか日本有数の観光地・函館、北海道唯一の世界遺産のある函館、歴史と異国情緒あふれる函館の街並み、大泉市長にしっかりと決断していただくようお願いして、一つ目の答弁を終わります。


函館市議会において、このように函館市の関連各部局長、教育長、そして函館市長が相次いで答弁を行なったことは、注目すべき出来事でした。議論の素地が、上記の民生常任委員会の「提言書」などを通じて、あらかじめ固められていたことを見てとることができます。

6/12  全会一致での決議へ

さらに驚くべきことに、6月11日には市議会議員全員連名での(仮称)函館寅沢風力発電事業に関する決議案が出され、市議会定例会最終日の6月12日、一般質問がすべて終わったのち、全会一致での決議がなされます。その内容は以下のとおりです。


令和8年 第2回市議会定例会 決議案第1号
(仮称)函館寅沢風力発電事業に関する決議

現在、本市において手続きが進められている「(仮称)函館寅沢風力発電事業」について、市民の間からは、生活環境への影響や水資源の枯渇、さらには本市が誇る貴重な自然・歴史的財産の破壊を危惧する切実な声が多数寄せられている。
本市議会民生常任委員会において、本事業の環境影響評価方法書の記載内容と「函館市再生可能エネルギー発電施設の設置および管理に関するガイドライン」の規定を客観的に対比・検証したところ、水源涵養保安林の保全、下流域における洪水・土砂災害リスク、生態系への影響など、市民生活の安全・安心を根底から脅かす深刻な不備が次々と明らかとなった。本計画は、ガイドラインの根本理念である「地域との共生」から著しく逸脱していると言わざるを得ない。
さらに、短期間のうちに市内外から3万筆を超える撤回要求の署名が集まった事実は、地域住民の抱く危機感と怒りの強さを示す明確な民意である。市民の生命・財産、割譲できない歴史的財産を一企業の経済的利益のために犠牲にすることは、本市の未来に対し重大な禍根を残すものであり、到底容認できるものではない。
よって、函館市議会は、生活者目線に立ち、市民の安全な生活環境と豊かな財産を守り抜くため、次の事項の実現を強く求めるとともに、市長においては、北海道知事へ提出する「市長意見」において、本市議会のこの断固たる決意を全面的に反映し、事業者に対して厳格かつ毅然とした対応をとるよう強く求める。

          記

1 下流域における洪水・土砂災害リスクの再検証と「命の水」の保全
事業実施区域は本市の重要な水源地である亀田川・松倉川の上流域(水源涵養保安林)であり、かつ土砂災害警戒区域に該当している。
大規模な森林改変(保水力の低下)が下流域にもたらす「洪水リスク」の定量的かつ科学的な調査・予測を徹底し、市民の生命に直結する災害リスクへの対策を完全に講じること。また、水源涵養機能の低下などが及ぼす水源の水質への影響を調査・予測し、市民の「命の水」を保全すること。

2 生態系(ヒグマ等の逃避)および騒音・低周波音に関する影響評価の厳格化
大規模な森林改変や騒音により生息域を追われたヒグマが、市街地や住宅街へ流入する「人里への出没・人的被害リスク」について広域的な予測・評価を行うこと。また、巨大工作物による動的景観や、谷状地形における低周波音の反響・増幅がもたらす健康被害への懸念に対し、市民の不安を払拭する詳細な調査を行うこと。

3 「正誤表」による事後修正の是正と手続きの透明性・正当性の確保
縦覧期間終了直前になって「正誤表」を提出し、当初「除外した」と説明していた土砂災害警戒区域や最高ランクの重要自然環境(植生自然度10)の範囲を、事後的に「事業区域に含まれる」と修正した不誠実な対応は、市民の適正な意見形成を妨げる行為である。環境アセスメントの透明性と手続きの正当性を著しく損なうものであり、計画を根底から再検証すること。

4 世界遺産の歴史的景観および縄文文化・古環境アーカイブの完全保全
最大高さ195メートルに達する巨大風車の林立や夜間の航空障害灯の明滅は、世界遺産「史跡大船遺跡・史跡垣ノ島遺跡」が持つ、当時のままの自然を背景とした「歴史的景観の真正性」を著しく阻害するものである。また、事業実施区域周辺の「アヤメ湿原」等は、縄文人が生きた気候や自然環境の記録が未破壊のまま保存されている、北日本において極めて貴重な「古環境アーカイブ(地球のタイムカプセル)」であり、人類共通の財産を破壊から守る厳格な配慮を行うこと。

5 水源涵養保安林解除における「公共性・公益性」の厳格な比較検証とゼロベースの再検討
地球温暖化対策や脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギー事業の推進には一定の公共性・国策としての側面があるものの、それは他地域での展開など別の手法によって代替が可能な公益である。一方で、保安林が有する「市民の命の水を育む水源涵養機能」および「下流域の洪水・土砂災害を防止する機能」は、代替不可能なその土地固有の絶対的な公共利益である。
本事業は、純然たる民間投資ビジネスとしての性格が強く、その事業活動による受益が特定の私企業に帰属するものである。安全性が担保されないまま、森林改変による水資源の枯渇や災害リスクの増大といった深刻な不利益のみを地域住民へ一方的に強いる本計画は、法的に保護された保安林を大規模に解除してまで優先すべき「高い公益性」を担保しているとは到底言い難い。よって、代替地の検討を含め、計画をゼロベースで再検討すること。

6 現行計画の事実上の白紙撤回を含めた抜本的な見直し
以上の通り、現行の方法書および事業計画には致命的な欠陥が存在し、かつ手続き上の正当性にも強い疑義がある。
事業者は、市民の声を真摯に受け止め、現行計画の事実上の白紙撤回を含めた抜本的な見直しを行うこと。


民生常任委員会委員長の小林よしゆき議員は、自身のブログで次のように語っています。

短期間で集まった「3万筆を超える撤回要求の署名」という重い民意が、議会全体を大きく動かす原動力となりました。委員会で積み重ねてきた客観的な論点は全ての会派で共有され、本日、ついに「市議会議員全員が提出者」という、これまでにない最高峰の形での全会一致の議会決議へと結実したのです。

小林議員のブログでも、これまでの経緯について振り返られていますので、ご参照ください(上の画像をクリック)。

一連の経緯を見て言えることは、函館市と函館市議会――そして市民が提出した署名や要望書、陳述書等も後押しし、一丸となって一つの決議を作り上げたということではないかと思われます。

5月1日の「函館の水源と生態系を守る会」の結成からわずか40日余り、手探りで市民活動に取り組んだ私たちにとっても、予想もしていなかった展開でした。

一般質問では質問されなかったけれど、注視し注力してくださった市議会議員の皆さん、そしてここには書き切れなかった多くの方々との連携、協力、相談、アドバイス等により実現した流れです。市民活動としてやらなければならないことを、運良く短期間で、矢継ぎ早に行うことができたこと、前回記したように短期間で3万筆の署名が集められたこと、また市議会の審議会と定例会が、同時期に立て続けに開催されたことなど、一連の動きが理想的に絡み合って進み、様々な幸運にも恵まれたのかと思います。

今度の動向をしっかりと見守り続ける

しかし、これで風力発電事業の計画撤回が直ちに決まったわけではありません。今後の事業者の動向をしっかり見守っていく必要があります。

次の手続きとしては、5/29締切で市民から事業者に提出された意見書に対し、事業者からの回答集が出され、これを踏まえて知事意見がまとめられます。その中で、北海道知事から函館市長への意見照会が行われます。このとき市長からは、上記の「決議」に基づく意見が述べられることになると察されます。その上で、知事は原則的に、市長の意見を尊重して意見書を作成することになります。経済産業省及び環境省は、知事意見を踏まえて事業計画の審査を行い、事業者に対して勧告を行います。

引き続き、この経緯をしっかりと見守っていきます。

(仮称)函館寅沢風力発電 計画地北側から計画地全体〜雁皮山、函館湾方向を望む

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