幸せな生活【021】— 第十二次身体調整 —
時間が経つのは早いと思った。 入学した頃より背も伸びたし、体重も少し増えた。 胸囲も、ウエストも、ヒップも、先生が言っていた「順調な発育」に近づいているらしい。
今日は第十二次身体調整の日だった。
調整室へ入ると、白い光が静かに広がっていた。 軍医の方々も穏やかな表情だった。
先生が言う。
「では、始めますね。ゆっくりで大丈夫ですよ」
私はうなずいた。
身長。 体重。 胸囲、ウエスト、ヒップ。 足の大きさ。
軍医の方は優しく微笑んだ。
「順調ですね。本国の方々もきっと喜ばれますよ」
私は胸が温かくなった。
次は姿勢だった。 うつむき加減で歩く。 いつもの通りだ。 上を向いて歩くことはしない。
軍医の方は静かにうなずいた。
「落ち着いた歩き方ですね。綺麗ですよ」
私は誇らしい気持ちになった。
軍医の方が私の指をそっと取る。
「処置痕も綺麗ですね。少し剥がれやすいですが、これで正常ですよ」
私は安心した。 爪が伸びないようにする処置は少し怖かったけれど、先生は「支える人に必要な身だしなみです」と言っていた。
軽く走る。 息がすぐ苦しくなる。 胸が少し痛くなる。
軍医の方は優しく言った。
「無理のない範囲で、よくできていますね」
私はほっとした。
腕を上げる。 足を伸ばす。 力を入れる。
軍医の方は静かにうなずいた。
「筋肉量も問題ありません。とてもしなやかで、綺麗な状態ですよ」
私は安心した。 自分の体が誰かの役に立てるのは嬉しいことだと思った。
すべての項目が終わると、先生がそばへ来た。
「よくできました。これで卒業に向けて安心できますね」
私は嬉しくなった。
調整室を出て、廊下の窓から光が差し込むのを見ながら、家に電話をかけた。
母が出た。
「もしもし?」
声を聞くだけで安心した。
「今日、調整が全部終わったよ。卒業できそうだって先生が言ってた」
母は嬉しそうだった。
「そうなの。よかったわね。あなたなら大丈夫だと思っていたわ」
私は少し照れた。
母は続けた。
「それからね……家族が増えたの」
私は息をのんだ。
「妹ができたのよ」
胸が一気に温かくなった。
「ほんと?すごいね、お母さん」
母は笑った。 いつもの優しい声だった。
「兵隊さんたちのお世話を、お母さんも頑張ったからね。この子も、あなたみたいに“正しい道”を歩めるように、お母さん、一生懸命育てるから」
私は静かにうなずいた。
「私も、お母さんみたいになりたい。だから頑張るね」
母は優しく言った。
「あなたなら、きっと大丈夫よ」
電話を切ったあと、私はしばらく窓の外を見ていた。
光が揺れていた。 風が静かに流れていた。
卒業できるかもしれない。 妹ができた。 お母さんも頑張っている。
なんだか、とても幸せだと思った。
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