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【第二話】怪異マニアの仲條先輩は今日もお気楽 第二章:のろわれた定期の怪【連作短編】

第一章:傘と女の怪 第一話(初回)
あらすじ:先輩と後輩の日常と、サークル活動の始まりです。

第二章:のろわれた定期の怪 第一話(前回)
あらすじ:後輩がサークル管理の掲示板の噂を知ります。

第二章:のろわれた定期の怪 第三話(次回)


 心霊スポットに行った翌日。小屋の鍵を持ち帰ってしまった峰城は、仲條から鍵の返却要請を受けて顔を青ざめた。

 急ぎ謝罪の連絡を入れると、午後の授業は一コマだけだと言うので峰城も午後一の授業終わりと同時に小屋に向かった。いつもは足取り重く進む林を駆け抜け、汗だくになりながら到着すると小屋の前には誰もおらず肩透かしをくらう。

 仲條に再度連絡すると「小屋の中にいるよ」と返ってきて、半信半疑で扉を押し開ける。途端に熱気とエアコンの冷風が頬を撫で、視線を部屋の奥に向けると仲條がいるではないか。

 扉を開いたまま呆然としている峰城に気づくと、彼は呑気に「スペアキーあるから、急がなくても大丈夫なのに」と宣ったものだから走ってきた疲労もあって脱力してしまった。

「スペアキーがあるなら先に言ってくれればいいのに……」

 周囲に誰もいないのをいいことに、峰城は当時言えなかった不満を漏らす。
 連絡を受けたときの反省の気持ちと焦燥感を返してほしいところだが、マスターキーを返却しなかったことで事務員に一応注意を受けた、と後から聞いてしまうと罪悪感は拭えず、今までのようにバイトのない日は小屋に来るようになっていた。

 建物自体は古いが冷暖房はあるし、簡素な給湯スペースもある。常備しているお茶やコーヒー、お菓子も飲み食べ自由だし旧式の小型冷蔵庫もある。机もあるから課題をすることもできて、わからなければ不本意ながら先輩である仲條を頼ることもできる。

 帰りたければ仲條がいつも最後に戸締りするので、いつ帰っても問題ない。自由なものだ。それに一人暮らしの家にいるよりも電気代が少しでも浮くのが一番助かる。

 それらの条件をサークル入会時に提示されて峰城も強くは断れなかったため、時々怖い思いをしても今ここにいるわけだが。

 とはいえ、人通りがなく日中でも薄暗い林に行くのは気が重い。もしかしたら木の陰から誰か覗いているのではないか、と嫌な想像が頭をよぎる。そんなときは早々に小屋の中に入ってしまうのが良い。

 足早に小屋の扉を潜ると、一気に涼しい空気が汗を冷やしてくれる。
 中ではお古の会議用テーブルをOの字に繋いだ奥の席で、仲條がノートパソコンを開いていた。顎に手をやり、時折パソコンを操作しては何か考え込んでいるようだった。

「お疲れ様です」

「……ああ、お疲れ様。今日も来てくれたんだね」

 よほど集中していたのか、峰城が声をかけてようやく気づいたらしく顔を上げた。難しそうな顔を崩して笑みを浮かべる。峰城は自分のカップに紅茶を用意すると、彼が座る席の九十度に位置する席に座った。

「何見てるんですか?」

「掲示板だよ。オカルト研究会のね」

 思考に耽って詰めていた息を吐きながら、仲條はパソコンを峰城の方に向ける。質問しようとしていた矢先に答えが出たので、そのままタイムリーな話題に乗った。

「噂には聞いていましたけど、本当にあったんですね」

「利用者や僕以外に見る人は少ないから、知ってる人も少ないかもね。噂で聞いているかもしれないけど、この掲示板は怪異に困った人が相談に来たり、見聞きした噂を書き込むためのものなんだよ」

 心做しか浮ついた声で語る仲條には宝庫に思うだろうが、オカルト収集趣味のない峰城は全く興味がなかった。

 大学の門扉は広く開かれているとはいえ、学生ですら遠巻きにしている林に外部の者は更に踏み込みにくいだろうし、掲示板を使っているとしても少数ではないだろうか。もしかしたら、現在の書き込みは幽霊部員と言われているまだ見ぬメンバーによるものの可能性もある。

「じゃあ、秘密のURLや合言葉も本当なんですか? 祠でやり取りするって聞いたんですけど」

「半分間違いで、半分正解かな」

 桃井から聞いた情報を元に噂の是非を確認しようと質問したものの、中途半端な回答が返ってきて反応に困った。「半分って何だろう」と思いつつ紅茶を口にすると、峰城が聞くまでもなく仲條が話を続けた。

「掲示板自体、秘密にしているつもりはないんだ。でも、中々使う人がいないから知られることもなくて、いつの間にかそんな噂が立ったみたいだね。以前は噂を逆手にとって、『特別感』を出すことで利用者を増やそうとしたこともあったね」

「どの辺りが『特別感』なんですか?」

「秘密のURLと合言葉は既に噂されてたけど、実は祠でやり取りする方法を編み出したのは先輩達でね。そもそも掲示板には秘密のURLも合言葉もなかったんだけど、面白がった先輩が掲示板サイトの設定を合言葉必須に変更してたよ」

「なんでそんな面倒なことを……」

「だって、『祠で秘密の暗号のやり取り』とかロマンじゃないか。先輩達もノリノリだったし」

 そういう仲條もどこか浮ついている。当時楽しんでいた一人なのだろう。
 祠でのやり取りの噂は先輩たちの遊び心が起源だと知り、峰城はまたしても脱力する。彼の自由さはOBの影響が少なからずありそうだ。もしくは、類は友を呼んだのか。頭を抱えんばかりの峰城に気づかないまま、仲條は「でも」と話を続けた。

「定期的に祠を見に行かないといけないし、段々面倒になってきてね。サイトの設定を変更した先輩が卒業するタイミングで、誰でも使えるように掲示板は開放したんだ」

 一時期、秘匿されていた掲示板は今や開放されている。それが彼の言う「半分間違い」なのだろう。

 であれば、もう半分の「正解」は何だろうと峰城が目線で尋ねると、穏やかに微笑む仲條はもったいぶって、しつこいくらいに雰囲気を溜めてから意味ありげに身を乗り出した。

「それはね……」


第二章:のろわれた定期の怪 第三話(次回)
https://note.com/light_clam8523/n/n21dcdf6960a8

第一章 第一話はこちらから↓


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