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心が乾いた日に開きたい一冊~柳田邦男『砂漠でみつけた一冊の絵本』を読んで~

みなさんは最近、絵本を開いたことがあるでしょうか。

「絵本なんて子どもが読むものでしょう」と思っている人にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊があります。柳田邦男さんの『砂漠でみつけた一冊の絵本』です。

柳田さんは、災害や病気など、命に関わる厳しい現場を長く取材してきたノンフィクション作家。そうした過酷な現実を見つめ続けてきた人が、人生の後半にあらためて絵本の力に気づいた。そのことに、私はまず心を動かされました。

砂漠で見つけた「水」のような言葉

本書のいう「砂漠」とは、忙しさや将来への不安、人間関係の疲れのなかで、いつのまにか乾いてしまった私たちの心のことなのでしょう。そんなとき、一冊の絵本が、砂漠で見つけた水のように心を潤してくれることがある。柳田さんは、その実感を静かに語っています。

絵本は文字が少ないぶん、かえって読む人の想像力を大きく働かせます。書かれている以上のものを、自分の経験や感情が補いながら、物語を内側で広げていく。だからこそ、ふと目にした一行が、今の自分の心に驚くほど深く重なる瞬間があるのだと思います。

命を「生」へと託した、一冊の絵本

本書で紹介されている一冊に、『エリカ 奇跡のいのち』があります。第二次世界大戦中、ホロコーストを生き延びた実在の女性をもとにした物語です。

1944年、強制収容所へ向かう貨物列車のわずかな隙間から、母親が赤ん坊のエリカを外へ放り投げ、その命を託す。

自らは死へと向かいながら、わが子を生へと託した母親の覚悟。こうした場面の重みは、難しい議論を超えて、読む者の胸に直接迫ってきます。もし柳田さんのこの本に出会わなければ、私はおそらく、この絵本にも、この命の物語にも出会うことはなかったでしょう。

効率や正解よりも、大切なもの

大学での学びや専門書から得られるものは多いけれど、ときに一冊の絵本のほうが、かえってまっすぐに「命の重み」を伝えてくることがあります。

勉強や進路、人間関係に疲れて、「ちょっと心が乾いているな」と感じるとき。そんなときこそ、難しい本をいったん脇に置いて、自分のために絵本を開いてみる。スマホの画面を眺めているだけでは出会えない想像力や、大切な言葉が、そこにはひそんでいる気がします。

これは、誰かへのおすすめであると同時に、私自身へのメッセージでもあります。

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