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焦った女、手を振る。

甘い話し方の男性は、キスの奥から唐揚げの匂いを漂わせていた。上手いのに入り込めない。なのに、その声だけが遅効性の毒のように耳に残る。マッチングアプリ体験談。

待ち合わせ場所はここのはずだ。
やってくる気配がない。
長く待ってもいいことはない。

「お忙しそうなので、帰ります」と
連絡すると秒で返信が来た。
「すぐ行きます」と。時間を間違えていたそうだ。


彼がやってきた、慌てた様子のスウェット姿だ。
彼のことはピーターパンと呼ぼう。


どうやら昨夜友人たちと飲み歩いたらしい。
それで時間がズレたのだろうか。


ピーターパンは慣れているのか、
ポンポンとテンポよく話題を提供してくれる。
私のような人間にとってありがたい。



やりとり上の私の印象は淡々と
事務的で冷たい感じだったそうだ。
会った印象はそうでもないらしい。
案外鋭い男なのかもしれない。


話し方が甘い。
まだ何もしていないのに事後感がある。
ずっとこのしゃべり方なのだろうか?
常に甘えられているようだ。

彼の職場見学をしてみたい気分になってしまった。


彼の家に着いた。
私たちはソファーに座り身体を寄せ合う。


ピーターパンはキスが上手い。
しかしキスに入り込めない。


匂いだ。深くキスをすると香ってくる。
酒の残りではない。


奥から唐揚げが私に手を降ってきているのだ。
一体居酒屋で何個の唐揚げを食べたのだろうか。


彼は指を私の中に入れてくる。
私はこの行為あまり好きではないが、
じっくりと入れてくるので拒否感はなかった。
ほぐされていく。


ピーターパンはやせ形で肌はしっとりとしている。わらび餅に近い。

細身のわらび餅、矛盾しているがそうなのだ。
彼のそれは細身の身体に似合わず、
割と太くそして長い。


口での奉仕私はわりと褒められる方なのだが、

ピーターパンはさらにアドバイスしてくる。


彼の身体を使った実習が始まった。
私と彼は、生徒と講師になった。



今までとは違ったアプローチなので難しい。

私の動きは包み込み方、
欲望の出口を舌で割り広げるように
舐めたり、吸ったりと口だけで動かしていた。

ピーターパンは手との連携を指南した。



感覚が追い付かない。
手に集中すると口がおろそかになる。
しばらくやって何とか形になったようだ。

私はまたレベルアップしたと思う。


講師の役を降りたピーターパンが
私の中に入ってくる。

大きくて苦しい。「苦しー?」と彼が聞いてきた。

私は必死にうなずく。

苦しむ私をあやす様に、
キスをしぴったりと密着して自分の形を
私に覚えさせているようだ。


私が少し慣れてきたのを見計らって、
ピーターパンは動き出した。


私の内側を突き破ってくる勢いだ。

「壊れるから」と私は言った。

「いいじゃん、壊れよ」と返ってきた。

いやよくない。が言い方が甘くてずるい。



一体どう逃がせばいいのだと、考えをめぐらす。
しかし私にそんな術が思いつくはずがない。
そもそも私は何から逃げようというのだろうか。

私はまだ達したことがない。
本能的に達したくないのかもしれない。


ピーターパンは一回が濃いタイプだ。
フィニッシュが見えない。


彼は穏やかな語り口だが、
アドバイスや強弱など割と支配的だ。

だが不思議と恐怖感はない。
ピーターパンの力量だろうか。


激しいが緩急で嫌にならないような調整が
絶妙である。

私の顔を観察している。
目が合うと彼が微笑んでくる。


私はどのくらい時間が経ったか
わからなくなったところで、
ピーターパンが出ていった。


ベッドの中で話しているとピーターパンは
突然スイッチが落とされたように
眠りに入ってしまった。

私は彼の子供みたいな寝方に驚きつつ、笑った。私に睡魔は襲ってこない。彼の腕にがっちりとホールドされているので、動けない。静かに起きるのを待つことにした。


日が傾いて暗くなり始めたころ、彼は起きた。
バチッと大きく目が開いた。
スイッチが付いたようだ。


そろそろ私は帰ることを告げた。
ピーターパンは泊っていかない私に不満げだ。
仕方がない。帰りたいのだから。


拗ねながらも送っていこうと彼は鏡を見た。
寝癖がついていた。
ピーターパンは
「えーじゃあやめるー」と言っていた。
常に語尾が半音上がっている気がする。


彼は寝癖がついてるから外に出れないらしい。
なんという乙女心だ。
私は寝癖のまま自由気ままに歩ける。
美意識の高さに驚かされた。


扉の前でピーターパンが最後に
濃厚なキスをしてくれた。
酔いしれそうになる。
だがやはりそこに唐揚げもいる。

たっぷりと行ったあと、
「じゃーね。」さっぱりと別れた。


よって私はひとり帰ることとなった。
マイペースな男だ。


今日は私とピーターパンというより、
私とピーターパンと唐揚げの逢瀬だった。


彼の話し方が耳に残っている。
遅効性の毒のようだ。私は焦った。

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▼ 焦った女、マッチングアプリを貪る。— はじめに 


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焦った女 ここまで読んでくださってありがとうございます。 ここで書かせてもらえているのは、 読んでくださる方がいるからです。 チップは、地味に役立つ乾電池代として大事に使います。 シェアしてくださるのも、同じくらい嬉しいです。 誰にも読まれず、私は焦っています。