「いい人でした」で採用すると失敗する(後編)――『雇わない経営』の教科書
「いい人でした」で採用すると失敗する(後編)
――『雇わない経営』の教科書
前回、たどり着いたのは、こんな結論でした。
見るべきは、感じの良さでは、ない。 「この人は、人に与えられる人か」――その一点。
では、それを、どうやって見抜けばいいのでしょう。
印象ではなく、「過去の行動」を聞く
人の本当の姿は、言葉よりも、行動に、あらわれます。
面接で「あなたは、人に親切ですか」と聞いても、あまり意味がありません。 たいていの人は、「はい」と答えるからです。
そうではなく、過去の、具体的な行動を、たずねるのです。
「これまで、見返りを期待せずに、誰かのために動いたことは、ありますか」
この問いには、つくろった答えが、効きません。
与える人は、エピソードを、自然と語りはじめます。 それも、たいていは、何でもないことのように。
一方で、奪う人は、ここで言葉に詰まったり、 「相手に、こう感謝された」と、見返りの話に、すり替えたりします。
感じの良さの奥にある、その人の“ふだん”が、静かに、顔を出すのです。
たった一つの問い
むずかしい質問は、いりません。
面接で、たった一つ、これを胸に置いておく。
「この人は、ここで働く誰かに、感謝と応援を、送れる人だろうか」
その目で、相手の話を聞く。 過去の行動を、たずねる。
すると、「いい人そう」という、ぼんやりした印象の霧が晴れて、 その人の、本当の輪郭が、見えてきます。
「いい人かどうか」では、ありません。 「与える人かどうか」。
問いを変えるだけで、見えてくるものが、まるで変わるのです。
与える人を迎えると、器が変わる
以前、「人が辞めない会社には、いい器がある」という話をしました。
じつは、その器を育てるのは、与える人たちです。
与える人が一人、また一人と増えていくと、 助け合いが当たり前になり、居場所が生まれ、感謝と応援が、めぐりはじめます。
採用とは、穴を埋めることでは、ありません。
会社という器に、感謝と応援を、送れる人を、迎え入れること。
そう考えた瞬間から、面接は、見極めの場ではなく、 これから一緒に、感謝と信頼を送り合う仲間と、出会う場に、変わっていきます。
この連載で、お渡ししたいもの
この連載は、『雇わない経営』の教科書です。
採用のテクニックを、お伝えしたいわけではありません。
人を印象や好き嫌いで選ぶのではなく、
「ここで活きる人か」
「感謝と信頼を送り合える仲間か」
そんな視点を持つための、小さなものさしをお渡ししたいのです。
これからも、その考え方を、ひとつずつ、やさしい言葉でお話ししていきます。
最後に、ひとつだけ。
もし、これまでに
「いい人だと思ったのに」
と、肩を落とした経験があったとしても。
それは、人を見る目がなかったということではありません。
ただ、見る場所が、少しだけ違っていただけです。
人は、見ようとするところしか見えません。
だからこそ、
「この人は、誰に、何を与えてきただろう」
そんな問いを持つだけで、見える景色は変わります。
採用は、人を選ぶことではありません。
一緒に未来をつくる仲間と出会うことです。
その出会いが、感謝と信頼の循環を生み、やがて会社という器を育てていくのだと思います。
言葉ひとつで、未来は動きはじめます。
その一歩を、ここから、一緒にいきましょう。
