【前負荷・後負荷×フィジカル】循環器アセスメントを“使える知識”に——心不全を例に現場で役立つ完全版(国試対策つき)
はじめに
「前負荷・後負荷は習ったけど、病室で何を見て、どう判断して、何をする?」——実習や夜勤でつまずきやすいポイントです。本記事は、フィジカルアセスメント(見て・触れて・聞いて)を中心に、前負荷・後負荷・収縮力を“使える知識”へ落とし込む実践版。看護師国家試験で狙われる要点もまとめ、ベッドサイドで迷わない型を作ります。
先に結論
前負荷=心臓に戻る量(うっ血サイン:JVD/浮腫/湿性ラ音/体重増)。
後負荷=押し出す抵抗(高血圧/四肢冷感/CRT延長/駆出性雑音)。
血圧の本質:BP ≒ CO × SVR、CO = HR × SV、SVは前負荷・収縮力・後負荷で決まる。
→ 所見(前/後負荷/収縮力)をセットで読み、介入→再評価のループを回す。
1. 公式を“臨床語”に翻訳する
BP(血圧) ≒ CO(心拍出量) × SVR(末梢血管抵抗)
CO = HR(心拍数) × SV(1回拍出量)
SVの3要素:前負荷(充満)・収縮力(ポンプ力)・後負荷(抵抗)
MAP(平均動脈圧) ≒ DBP + 1/3(SBP-DBP)
ショック指数(SI) = HR / SBP(≥0.9で循環不全を疑う目安)
覚え方:前負荷=“バケツの水”/後負荷=“蛇口の固さ”/収縮力=“腕力”。
2. フィジカルで読む「前負荷・後負荷・収縮力」
2-1 前負荷(充満)のフィジカル
高いサイン
頸静脈怒張(JVD):仰臥位30–45°、頸静脈の拍動高。
浮腫:足背・下腿・仙骨部の圧痕(+1〜+4)。
肺うっ血:下肺野からの湿性ラ音、起座呼吸、夜間呼吸困難。
体重増・尿量減・SpO₂低下。
低いサイン
皮膚乾燥、口渇、起立性低血圧、尿量減、脈弱い。
よくある原因
高い:輸液/塩分過多、腎機能低下、弁逆流(MR/TR)。
低い:出血/脱水/利尿過多、発熱、末梢拡張。
2-2 後負荷(抵抗)のフィジカル
高いサイン
収縮期高血圧、四肢冷感、CRT>2秒、蒼白。
大動脈弁狭窄なら駆出性収縮期雑音(右第2肋間 胸骨右縁)。
低いサイン
末梢血管拡張(温かい皮膚、紅潮)、広い脈圧、血圧低下(敗血症など)。
よくある原因
高い:交感神経亢進、疼痛/寒冷、高血圧、弁狭窄。
低い:敗血症性ショック、アナフィラキシー、麻酔。
2-3 収縮力(ポンプ力)のフィジカル
低下サイン
脈圧狭小・微弱脈、尿量<0.5 mL/kg/h、意識低下。
四肢冷感+湿潤、努力呼吸、疲労感。
心音S3(左心不全)を聴取することあり。
3. ベッドサイド“90秒→5分→30分”評価プロトコル
① 最初の90秒(安全確保&致死的見逃しゼロ)
意識・呼吸様式・SpO₂・皮膚色/冷感・CRTを一望。
SBP/HRでSIを計算(≥0.9で赤信号)。
体位:呼吸苦があればファーラー位へ。
② 次の5分(循環動態の仮説立て)
頸静脈・浮腫・肺音→前負荷評価。
血圧・末梢冷感・CRT・雑音→後負荷評価。
脈の性状・尿量・意識→収縮力評価。
仮説:「前負荷↑?」「後負荷↑?」「収縮力↓?」を1行メモで。
③ 30分サイクル(介入→再評価)
介入(体位/酸素/補液or利尿/薬剤見守り)→同じ指標で再評価。
記録はSBARで簡潔に。
4. 介入の考え方(原理→ケア)
前負荷が高い(肺うっ血系)
体位:ファーラー位・下肢下垂 → 静脈還流↓。
酸素投与(指示下)、不安の緩和。
I/O・毎日体重、塩分/水分指導。
薬剤の観察:利尿薬、**硝酸薬(静脈拡張=前負荷↓)**の効果/副作用。
前負荷が低い(低容量系)
補液の安全見守り(指示下)、起立性低血圧の転倒予防。
発熱・下痢など喪失源の是正支援。
後負荷が高い(抵抗↑)
血圧連続評価、頭痛/胸痛/息切れの聴取。
血管拡張薬(ACEi/ARB/ニトロプルシド等)の効果と過度降圧に注意。
末梢冷感・CRTの変化を繰り返し確認。
後負荷が低い(血管拡張)
ショック所見(意識/皮膚/尿量)を密に監視。
昇圧薬(ノルアドレナリン等)使用時の安全管理(指示下)。
感染源コントロール・保温・補液見守り。
収縮力が低い(ポンプ不全)
労作制限・酸素化の確保。
尿量/意識のトレンド監視。
強心薬や機械的補助が入る場合のライン・安全管理。
5. ケースで練習(SBARつき)
ケースA:前負荷↑(肺うっ血)
状況:夜間、起座呼吸。SpO₂ 90%(室内気)。下肺野湿性ラ音。JVD+、下腿+2浮腫、体重+1.8kg/2日。
解釈:前負荷過多 → 肺うっ血。
ケア:ファーラー位、O₂開始、I/O・体重管理、利尿薬/硝酸薬の効果観察。
SBAR
S:起座呼吸+SpO₂ 90%、湿性ラ音。
B:心不全既往、ここ2日で体重+1.8kg。
A:前負荷過多が示唆。
R:O₂投与と利尿/硝酸薬調整の指示確認を希望。
ケースB:後負荷↑(高血圧+末梢冷感)
状況:SBP 190、HR 92。手足冷たい、CRT 3秒。駆出性雑音。
解釈:後負荷上昇(弁狭窄疑いあり)。
ケア:血圧・症状モニタ、血管拡張薬の効果/副作用観察、転倒予防。
SBAR
S:高血圧持続+四肢冷感、CRT延長。
B:高血圧歴。雑音あり。
A:後負荷↑で心負担。
R:降圧/拡張薬の導入可否、評価間隔の指示確認。
ケースC:収縮力↓(低拍出)
状況:SBP 92、HR 116(SI=1.26)。尿量 0.3 mL/kg/h、意識ぼんやり、皮膚冷湿。
解釈:低拍出(収縮力低下)を疑う。
ケア:酸素化、保温、尿量・意識の逐次評価。昇圧/強心薬・補液の方針は指示下で。
SBAR
S:血圧低下+頻脈、SI高値。
B:心機能低下の既往。
A:収縮力低下示唆。
R:昇圧/強心薬や補液指示の確認、採血/画像の追加評価希望。
6. 観察チェックリスト(そのまま使える)
意識(清明/傾眠/せん妄)
呼吸(RR・努力呼吸・起座/起坐呼吸)
SpO₂(O₂有無)
血圧/脈拍(SI=HR/SBPも)
皮膚(色・温度・湿潤・CRT)
頸静脈(30–45°でJVD)
浮腫(部位/+1–+4/左右差)
肺音(乾性/湿性・左右差・範囲)
心音(雑音/S3)
I/O・体重(増減幅)
尿量(mL/kg/h)
疼痛・ストレス・寒冷(後負荷に影響)
7. 国家試験ここが出る(暗記5点)
前負荷↑のサイン:JVD、浮腫、湿性ラ音、体重増。
後負荷↑のサイン:高血圧、四肢冷感、CRT延長、弁狭窄の雑音。
公式:BP ≒ CO × SVR、CO = HR × SV、MAP ≒ DBP + 1/3PP。
SI≥0.9は循環不全を疑う。
SVの3要素:前負荷・収縮力・後負荷。
8. よくある落とし穴(現場の処方箋)
数字だけで判断:症状とフィジカルのトレンドとセットで。
“前負荷↑=とりあえず利尿”:低容量だったら悪化。脱水兆候を見てから。
“後負荷=血圧だけ”:弁疾患や疼痛/寒冷も評価。
介入後に再評価しない:同じ指標で必ず見直す。
9. 1分“覚えカード”
前負荷=量:JVD/浮腫/湿性ラ音/体重↑
後負荷=抵抗:SBP↑/冷感/CRT延長/雑音
収縮力=ポンプ:脈弱・尿量↓・意識↓
BP ≒ CO×SVR、CO=HR×SV、MAP式、SI
介入→同じ指標で再評価!
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まとめ
フィジカルを前負荷・後負荷・収縮力にひも付けて読むと、**「記録する」から「循環を読む」**へ一段上がります。
仮説(前/後/収縮)→介入→再評価の型を、今日の当直から回していきましょう。
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