すぐ始めなかった私の投資は正しかったのか。VIX戦略を10年データで検証
この記事は、以前投稿した「『すぐ始めろ』に従わなかった私が、暴落のたびに買い増せた理由」の検証記事です。前作を読んでいなくても楽しめる内容ですが、合わせて読んでいただけるとより深く理解いただけます。
【試算の前提について】
本シミュレーションはMSCI ACWI(USD)の年次リターンをもとに、月次リターンを均等分割して計算した簡易試算です。
実際には暴落は特定の月に集中して起きるため、VIX発動タイミングの購入単価は本試算と異なります。また為替変動・手数料・税金は考慮していません。
あくまで「4つのパターンの方向性の違い」を比較するための参考値としてご覧ください。正確な月次データによる精密計算は行っていませんが、10年間の大きな流れや各パターンの特徴は十分に読み取れると考えています。
【検証結果】4パターン比較(2016〜2025年・10年間)
前提条件
• 毎月積立:3万円
• 余剰資金:年2回(1月・7月)各30万円
• 年間原資:96万円 / 10年総原資:960万円
• 対象:全世界株式(MSCI ACWI)




検証してわかったこと——数字が語る4つの真実
1. 「すぐ投資」は強い。でも「平均的な人」と同じだった
Aパターン(即投入)の最終資産は1,865万円。リターン率+94.3%。
驚くのは、DパターンがAと全く同じ結果になったことだ。Dは「Aと同じ回数・同じ金額を、平均的なタイミングで投入した」パターン。つまり何も考えずに淡々と積み立て続けた投資家と、余剰資金を即投入した投資家の結果が、10年間でほぼ変わらなかった。
これは「余剰資金の投入タイミングより、市場に居続けること自体が大事」という事実を示している。
2. VIXルールは「負けにくさ」を作るが、最終リターンは劣る
Bパターン(積立+VIX)の最終総資産は1,661万円。Aより約200万円少ない。
ただしドローダウン(精神的きつさ)を見ると、Aの-9.2%に対してBは-6.8%。暴落時の痛みが約3割小さい。
2022年の下落局面。Aは835万円まで資産が落ちた。Bは680万円。どちらもマイナスだが、Bは余剰資金をまだプールに持っていたため、「次の買い場を待てる」という心理的余裕があった。
最終リターンはAに劣るが、暴落時に売らずに済む設計。これがBの本質だ。
3. VIX全額待ちの機会損失は「想像以上」だった
Cパターン(VIX全額待ち)が一番衝撃的な結果だった。
2016年末の資産:0円。2017年末:0円。
2016・2017年の2年間、VIX30を一度も超えなかったため、Cパターンの投資家は現金のまま相場を眺めるだけだった。その間にACWIは+7.9%、+24.0%と2年連続で上昇した。
2017年末時点でAが236万円に対し、Cは0円。この差はその後も形を変えながら最後まで響き続けた。
さらにVIX30超えがなかった2019年・2021年・2023年も、Cパターンは相場をただ眺めるだけだった。——いずれも大きな上昇をそのまま見送った。
「VIXが来るまで待つ」という戦略は、上昇相場が続いた時に静かに、しかし確実に機会損失を積み上げていく。それが今回の検証で最も明確に示された事実だ。
4. ドローダウンが最小だったのはCだった——でも
Cの最大ドローダウンは-4.6%。A・Dの-9.2%の約半分だ。
これは当然で、投資している金額が少ない分、下落の絶対額も小さい。「精神的にラク」なのは事実だが、それはリターンを犠牲にした結果のラクさだ。
では私の実際のパターンは?
私のパターンはB+Cの組み合わせに近い。ただし教科書通りではなく、生活の変化とマクロ読みが重なった結果だ。
2021年12月 40万円を一括投資してスタート。3ヶ月の勉強を終えて市場に入った最初の一手だった。
2022年7月 逆イールドが進み、市場が悲観一色だったあの夏。使用中の積立枠は上限に達していたため、ジュニアNISAを活用して30万円のスポット買いを実行した。子どもの口座を買い増しの場として使った判断だ。それ以外の2022〜2024年は毎月33,333円の積立のみ。シンプルなドルコスト平均法に徹した期間だ。この間にウクライナ戦争、逆イールド、日銀ショックがあった。積立を止めなかったことが全てだった。ちなみに2024年8月の暴落は拾えなかった。
私生活が忙しく、相場から離れていた。
だから、その暴落には気づけなかった。
2024年12月 トランプ大統領の再選で「2025年は荒れる」と読み、妻に相談して投資資金を準備した。一回目の資金準備。
2025年 積立を月10万円に増額。4月のトランプ関税ショックでVIXが60近くまで上昇。スポットで200万円をルールに従い投入した。これがシミュレーションのBパターンに最も近い局面だ。
2025年12月 翌年の中間選挙の荒れ相場予想と地政学リスクの高まりを感じ、二回目の資金準備。
2026年3月 米イラン情勢が緊迫。この局面からVIXに加えて日経VIも併用し始めた。全世界株式に加え、日本株(TOPIX連動インデックス)にも100万円を投入。VIXと日経VIの両方が異常値を示したタイミングだった。残り100万円は全世界株式へ。
シミュレーションと実際の違い
シミュレーションのどのパターンとも完全には一致しない。生活の変化、収入の増減、マクロ読み、家族との相談——現実の投資はそれら全てが絡み合う。
参考までに、同じ元本・同じ期間でAプラン(即投入)との比較を試算してみた。
結果は正直に書く。
私の実績リターンは約40%・年率約8%。Aプランの試算は約49%・年率約9%。差額は約63万円だった。
ショックだった。VIXを待ち、準備をして、暴落時に買い増した。それでも「すぐ投資」に負けた。
ただ、数字だけが全てではないとも思っている。暴落時に「次の買い場がある」という心理的余裕。ルールに従って動けたという実感。そして何より、続けてこられたこと。それは数字には出ない。
それでも、この結果は記録として残しておきたいと思う。
この検証の限界と正直な告白
この検証にはいくつかの重要な前提がある。
ひとつは期間の問題。2016〜2025年は全世界株式にとって比較的恵まれた10年だった。この期間はAが最強になりやすい条件が揃っている。
もうひとつは円安の問題。今回はUSDベースで計算しているが、円建てで計算すると全パターンのリターンがさらに高くなる。一方で今後円安が続く保証はない。
そして最大の問題は「続けられるか」だ。
Aが最高リターンだと数字は示した。でも2022年に資産が835万円まで落ちた時、あなたはAを続けられるだろうか。Cが最低リターンだと数字は示した。2016、2017、2019、2021、2023年。何も買えない5年間を、あなたは耐えられるだろうか。
投資は続けられなければ意味がない。
数字上の正解と、現実で続けられる正解は違う。
どのパターンが正解かは、数字ではなく「あなたが暴落時に続けられるかどうか」で決まる。
あなたはどのパターンなら続けられそうですか?
本記事のシミュレーションはMSCI ACWI(USD)の過去データをもとにした試算です。将来のリターンを保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
プロフィールも是非ご覧ください。
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