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散らばったご飯 🔥4

「仕事で帰れないから、
お父さんのご飯を作って欲しい」
その日から、私は大嫌いな父のご飯を
作り続けていた。


正確には、食事を用意するのは、
私が仕事から早く帰れた日だけだった。

しかし、私は致命的に料理が雑だった。

考えるのも調べるのも面倒で、
本を見たりレシピを検索したりもしなかった。

父は偏食だった。
好きなものしか食べず、白いご飯はほとんど
口にしない。

その日作ったのは、
みりん味の鯖の蒲焼、ほうれん草のおひたし、味噌汁、そしてご飯だった。

魚は、グリルを洗うのが面倒でフライパンを使った。
フライパンで焼くのは初めてだった。
よく分からない。

焦げたので裏返し、反対側も焦げた。

それをそのまま皿に乗せた。

おひたしは、何度か作ったことがあったので
問題なかった。

味噌汁は、以前作った時に
「溶けてない」と言われた事があった。

大丈夫、それは覚えてるから。

私は、味噌をおたまの上で念入りに溶かした。
そして、万が一溶け残しがあった場合を考えて、
上澄みだけをすくってお椀に注いだ。

お盆に乗せて、父の部屋へ運ぶ。

「ご飯」

そう声をかけると、父は機嫌悪そうにこちらを睨んだ。
私も無言で立ち尽くし、早く受け取ってほしいという気持ちだけが表に出ていた。

父が立ち上がる。
私は苛立って、小さく漏らした。

「早くしてよ」

その瞬間、父の手が当たり、
お盆はひっくり返った。

魚も、ご飯も、味噌汁も、
私の足元に散らばった。

父はそれを一瞥しただけで、何も言わず、
そのままこたつに戻り、テレビを見ようとした。

その瞬間、私の髪の毛が逆立つのを感じた。

「これどうするつもり!?
誰が片付けるのよ!!
人に作ってもらったものが、
あんたのせいでひっくり返ったのに、

なんであんたがテレビ見てるのよ!!」

父は立ち上がり、怒鳴り返した。

私は、絶対に引き下がりたくなかった。

私は父にタックルした。
父も体を返した。

「避けんな!」

私は父の背中を殴った。
父は殴り返さなかったが、私を突き飛ばした。

私は突き飛ばされ、壁に背中を打ち付けられた。


父は文句をいいながら、
またテレビに向き直った。


床に散らばったのは、
ご飯と、皿と、お盆と、私だった。

泣きながら片付けた。
雑巾で床を拭きながら、涙が止まらなかった。

下手なりに一生懸命作ったご飯。
ぐちゃぐちゃの床。
私がいないように動かない父の後ろ姿。

なんだこれ。

なんなんだ、これは。

雑巾で拭きながら、
味噌汁と自分の涙が、床で混ざりあっているのが
ゆらゆらと、歪んで見えた。

──────────
🫧この形の私

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