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なぜ私だけが与えられなかったのか

◎叶えられなかったのが自分だけだと知った日
【考察】

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これは、大人になった私が
あの頃の出来事を振り返り、読み解く話です。

▷  この話の元になった本編を読む
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あの時、なぜ私だけが許されなかったのか。
どうして私だけがダメで、妹たちはいいのか。

その疑問は、大人になってからも
ずっと心に残り続けた。

子どもを育てるようになっても、
なお理解できなかった。

────

私はある時、思い切って母に聞いたことがある。

「どうして私だけ、ピアノも通信教材も、させてもらえなかったの?」と。

母は言った。

「あなたが小さい頃は、本当にお金がなかったのよ。だからさせてあげられなかった。
妹たちの時は少し余裕ができたから、
させてあげられたの」

そして、いつものように自分の苦労話を続けた。

あの時、私だけが許されなかった。
妹たちはピアノも通信教材も手にしていた。

────

本当にお金だけの問題だったのだろうか。

そうだとしても、
私が泣きながら「やりたい」と願ったあの時、
どうして何も言ってくれなかったのだろう。

「本当はやらせてあげたいんだよ」
「ごめんね、今は難しいんだよ」

――そんな言葉がひとつでもあれば、
私はあんなに自分を責めなかったかもしれない。


そして、
妹たちが手に入れていることを知ったあの日。
悲しさから詰め寄った私に、
なぜ母は寄り添わなかったんだろう。

「ごめんね、あなたに辛い思いをさせたね」と。

そう言ってくれたなら、少しは救われたかもしれない。

────

母は、あの件について、
私に伝えたあと、こう言った。

「親になったあなたなら、
お母さんの気持ちわかるでしょ?」

その言い方は、責めつける感じではない。
怒っているわけでもない。

ただ、

“わかってくれるよね?”
“もう蒸し返さないで”

そんな、やんわりした圧のようなものが
ふわっと乗っていたように感じた。

母にそんなつもりはなかったのかもしれない。

“苦しかった当時を否定されたくない”
“親として間違っていたと思いたくない”

その気持ちから来る
無意識の言葉だったのかもしれない。

恐らく、当時の私の反応には、
妹に対する「羨ましさ」や「嫉妬」以外のものが
含まれていた。

「あの時の自分の気持ちが、
誰にも分かってもらえなかった感覚」

これが、大部分を占めていた、そんな気がする。

────

結局、母の口からは、
『あの時の私の気持ち』に寄り添う言葉は
一度も出てこなかった。
そして、『今の私の気持ち』に寄り添う言葉も、
やっぱり出てこなかった。

今でも、当時の自分や
あの時言われたことを思い出すと、胸が痛む。

私が欲しかったのは、ピアノでも教材でもなかった。

「気持ちを見てもらうこと」だった気がする。

ただ、それがどう歪んで残ったのかは
まだ別の話になる。

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