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未来の話に、私だけいなかった 🔥1

「タイムカプセルを埋めようと思います」
小学6年のある日、学校で先生が言った。

「そこで、みんなには、15年後の自分に
手紙を書いてもらいます」

教室がざわめく。
みんな、隣や前後の先のクラスメイトと
賑やかに話している。

「将来はこうなりたい」
「大人になったらこんな仕事がしたい」
みんな楽しそうだ。

先生も言った。

「15年後、みんなはどんな大人になっているでしょうね」

その言葉に、教室の空気が少しだけ未来へ伸びていった。
みんな、それぞれ未来の話をする。

窓のカーテンが揺れ、風が吹き込んだ。

────

放課後も、友達同士でその話の続きになった。

「みのりちゃんは、どんな大人になりたい?」
そう聞かれた。

「え、私?うーん、そうだなぁ……」
私はその場の雰囲気に合わせて言った。

「保育園の先生とかいいかもね」

笑いながら、特に意味もなく。
ただ、みんなの輪がふわっと明るくなるような、
そんな言い方で。

「そっかぁ、みのりちゃんのお母さん
保育園の先生だもんね」

「そうだねぇ」

私は笑っていたけれど、心の奥では
まったく違うことを考えていた。

“私は26歳かぁ……ずっと先だなぁ。
そこまではたぶんいないな”

暗く沈むとか、泣きたくなるとか、
そういう重たい感情ではなかった。
むしろ、自然な予測に近かった。

「私は看護師になりたいです」と言うような、
「将来は家を継ぎます」と淡々と言うような。

その程度の、普通の"未来予想"。

“私は20歳までには多分いないと思います”

“この感じであと15年も生きるのは、
ちょっと厳しいかも”

そういう“未来予想”。
明日、晴れるかなぁ
そんなノリで、ふわっと浮かんだ、私の未来。

“これからも生きる“
ということは、
“この毎日がずっと続く”
という事なのだろう。

「あ、それなら、それは無理かも」
みたいな、さらっとした諦めだった。

友達と横並びで、ランドセルを揺らして歩く帰り道。
手を振って分かれる坂道。
私の影が長く伸びる。
私は楽しそうに笑っていたと思う。

“みんなは、普通に大人になるんだろうな。
私は26歳までいないだろうけど。”

見上げる青空。緑の木々。
帰り道、ランドセルをカタカタ鳴らしながらごく自然に思っていた。

ただ“そういう未来しか想像できなかった”だけだった。
その未来予想図には、
大人になった私の姿はなかった。

──────────
🫧この形の私

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