どうでもいいけど、車は欲しい 🔥1
実家に帰って、1ヶ月が経った。
私は、毎日をただ、遊び、
それ以外は、ぼーっと過ごしていた。
仕事を探すわけでもない。
昼まで眠り、夜中まで遊び歩く。
そんな私に、両親の視線は次第に
冷たくなっていった。
車はない。
お金は減っていく。
「離職票が届かないんだよね」
親にはそう言って誤魔化していた。
けれど、本当は、とっくに届いていた。
実家に戻ってすぐ届いた。
母の怪訝そうな顔。
「まだ来ないんだよね、聞いてみようかな」
そう言いながら、
就職活動を先延ばしにしていた。
ハローワークに通うふりはしていたけれど、
車がないから行くのも面倒だった。
─────
実家に住み始めて2ヶ月。
ついに、母が口を開いた。
「そろそろ働けば?
あんた、いつまで働かずに家にいるつもりなの?」
父は何も言わなかったけれど、
視線が少し怒っているように感じた。
そろそろ、やばいか。
私はようやく重い腰を上げた。
─────
そうは言っても、別に
本気でやりたい仕事があるわけでもない。
正直、どうでもよかった。
どうせ長く続けるつもりもない。
結婚したら、どうせ引っ越すから続けられない。
「ま、とりあえず働けばいいんでしょ」
私は仕事を探し始めた。
楽そうな仕事。
できれば可愛い格好ができる仕事。
あとは、何でもよかった。
休みの希望もなかった。
給料にも執着はなかった。
─────
それから一週間後。
父に聞かれた。
「仕事は決まったか?」
「ハローワークには行ってるけど、なかなかね」
少し間を置いて、私は言った。
「仕事するなら、車買ってもいいよね?」
その言葉に、父は眉間にしわを寄せた。
「何言ってるんだ。車なんて危ない。ダメだろ」
その答えは、予想していなかった。
え、ダメ?
うそでしょ。
「自分で買うよ。
お父さんに買ってもらおうと思ってないよ」
「そんなの、当たり前だろう
車はダメだ」
父は眉間にしわを寄せたまま言った。
─────
一人暮らしの頃から、
決まったお金を残していた。
何かあった時、困るのは嫌だった。
親に頼るという発想は、最初からなかった。
だから、勝手に買って怒られるくらいなら、
一応確認した。
ただ、それだけだった。
なんでよ。
この地域で車なしは無理でしょ。
イラッとした。
けれど、言葉にも表情にも出さなかった。
…出せなかった。
─────
どうしようかな。
どうにかしないと。
私は、腕組みをして考えた。
そうだ。
車がないと通いにくい場所を選べばいい。
そうと決まれば、私はすぐに動いた。
バスに乗り、ハローワークに向かう。
「仕事を探したいんです」
すると、駅から少し離れた接客業を勧められた。
「ここならすぐ働けますよ。
駅から十五分ほど歩きますが、
通えなくはないです。
ただ、休みは土日祝ではなく平日になります」
仕事は何でもいい。
休みもどうでもいい。
「あ、それでお願いします」
即答だった。
考える必要も、悩む必要もなかった。
車が必要になる場所。
私は、ただ、車を買う理由を手に入れたかった。
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面接はすぐに行われ、
その場で採用が決まった。
店内を見学すると、ブレザーのような制服を着た女性スタッフがレジを打っている。
ああ、まぁ、かわいいな。
紺色のプリーツスカート、ベスト。
水色のシャツ。
黒のハイソックス。
学生みたい。
この服が着られるなら、悪くない。
やっと車が、手に入る。
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帰宅して父に伝えた。
「仕事決まったよ。
でも場所的にちょっと不便だから、
やっぱり車がいるかも」
父は言った。
「とりあえず就職してから考えよう」
え、決めてもダメなの。
結局、最初はバス通勤になった。
最寄り駅までは父が送るという。
不自由ではあったけれど、
とりあえず従うことにした。
父の仕事が終わった後に
車を貸してもらうこともあった。
父の休みの日には車を使わせてもらって
友達の家に行くこともあった。
父は、協力してくれている。
そう思えば、不満は飲み込めた。
でも、私はどこかで、
自分のやり方を見つけたいと思っていた。
いつも、父に従うだけでは
もう満足できなかった。
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🫧この形の私

