やっと“普通”になれたと思った日、あの子たちの前 に立った🔥2
やっと、普通の小学生になれたと思った。
友達がいて、
役割があって、
ちゃんと笑えていた。
でも——
その「普通」は、
どこか借り物みたいだった。
私は、いじめられていた。
教室で一人で座っていたあの頃、
まさか自分が、
全校生徒の前に立つなんて思ってもいなかった。
────
小学校5年生の終わり、
学校で生徒会役員の話が出た。
私は深く考えもせず、
友達に「なんだか楽しそう」とだけ言った。
すると、数人の女の子が口をそろえて言った。
「絶対やったほうがいいよ」
「応援するから!」
その流れで、私はクラスの候補者になった。
軽い気持ちで言っただけで、
正直、やる気はほとんどなかった。
ポスターは鉛筆でざっと描き、
色も塗らずに提出した。
演説の原稿も用意せず、
その場で思いついた言葉を口にした。
落ちても別にいい。
そんな気持ちだった。
────
それでも、私は選ばれた。
全校生徒の前に立ち、
自分の名前が書かれたタスキを肩から下げる。
「佐藤みのりです。よろしくお願いします」
胸の奥が、じんわり熱くなった。
いじめられて、
机に一人で座っていたあの日の自分とは、
まるで別人のようだった。
でも——
その中には、あの子たちもいた。
同じ学年に、
私をいじめていた子たち。
何も言わない。
何もなかったみたいに、
普通にそこにいる。
一人は同じ生徒会の役員になり、
もう一人も委員として活動していた。
普通に話し、
普通に笑い、
普通に過ごしている。
その「普通」が、
少し不思議で、
少し怖かった。
────
一年間の生徒会活動は忙しかった。
全校集会の司会、
出し物の準備、
委員会のまとめ。
でも、不思議と苦にはならなかった。
六人しかいない生徒会のメンバーは、
ちゃんと仲間だった。
意見がぶつかっても、誰も責めない。
誰かが困っていれば、自然に手を差し伸べる。
その安心感は、
学校で孤独だった頃にはなかったものだった。
────
この頃、初めて好きな人もできた。
ものすごく足が早くて、
みんなに人気の男の子だった。
バレンタインの日、
思い切って呼び出し、
義祖母にお願いして近くの商店で買った
お菓子を渡した。
結果は片思いだった。
でも、それでよかった。
私にも好きな人ができた。
誰かをかっこいいと思って、
友達とはしゃぐ。
それ自体が、別世界のようだった。
それは、私に小さな自信をくれた。
────
けれど、
あの頃の記憶は、消えていなかった。
教室で一人だった自分も、
何も言えなかった自分も、
ちゃんとそこに残っていた。
だから私は、
少しだけ、胸を張るふりをしていた。
自信があるように振る舞って、
笑顔を作って、
ちゃんとやれている自分を演じた。
それでも、私は
あの日の自分を知っている。
教室で一人だったことも、
誰にも助けを求められなかったことも、
消えたわけじゃない。
やっと普通になれたと思っても、
心のどこかでは、
まだ周りの顔色をうかがっていた。
だから私は、
少しだけ胸を張るふりをしていた。
前を向くために。
──────────
🫧この形の私

