【開発日誌 #30】灰冠の都、皮肉な宿屋、検閲される手紙 ── アッシュヘルムへようこそ
2026年4月26日
今後のスケジュール
4月22日〜4月29日(予定) 最終調整・データリセット準備
4月29日(水)19:00 正式サービス開始
こんにちは。
個人開発でブラウザRPG 「灰ふる街の冒険者たち」 を制作している明智です。
正式サービス開始まで、残り2日になりました。
少し前に世界観全体のお話(#12)はしたので、今日はもうちょっと範囲を絞って、プレイヤーが一番長く滞在することになる街——アッシュヘルム——のお話をします。
そう、あなたがスタートする、あの街です。
「アッシュヘルム」って、どこ?
正式名称は 灰冠(はいかん)の都アッシュヘルム。
——というと格好いいんですが、ぶっちゃけて言うと この世界の帝都 です。皇帝(灰帝)が座っている、最大の都市。
つまり君は、ゲーム開始直後にいきなり首都に放り出されます。
「最初の村」ではないです。「最初の城下町」ですらない。最初から、首都です。
ただし——首都とはいえ、灰に覆われた薄暗い街です。空は二百年以上灰色のまま。建物の屋根には灰が積もり、住人は口元を布で覆って歩いている。それでもこの世界で一番の大都市、というのが「灰ふる」の世界の現在地です。
歴史 ── 大災厄の八十年後
アッシュヘルムは、何もないところに突然できた街ではありません。
二百年以上前、世界には別の帝国(旧帝国)があり、そこには別の帝都がありました。それが大災厄で——詳しくは #12で書いたので割愛しますが ——文字通り灰になりました。
それから八十年、生き残った人々が散発的に集落を作り、やがて指導者が現れて、かつての帝都の跡地に新しい街を再建しました。これが灰冠の都アッシュヘルム。新生帝国の首都です。
初代「灰帝」が戴冠したのが終末暦80年頃。今は第四代灰帝の治世。建国から130年余り。
その間、皇帝の権威はじわじわと弱まり、実権は五つの城塞都市の領主たちへ移っていきました。今のアッシュヘルムは、「首都」を名乗っているけれど、その威光はけっこう怪しい ——そのくらいの場所です。
街の音、街の匂い
アッシュヘルムの街を歩くと、こんな音が聞こえます。
市場では商人が声を張り上げている
鍛冶屋の槌音が絶えず響いている
宿屋の竈には火が灯り、湯気が上がっている
灰に覆われた薄暗い街だけれど、人がちゃんと暮らしている街でもある。これが帝都の表向きの顔です。
ただ、施設の説明文をよく読むと、ちょっとひっかかる箇所がいくつかあります。
皮肉な宿屋、検閲される手紙
ゲーム内の施設にはそれぞれ短いフレーバーテキストが添えてあります。これを書くのが楽しすぎる、という話は #22でもしました 。
たとえば宿屋。
▎ 帝国は臣民の健康を管理する。それが支配の効率を高めるからだ。
——いや「帝国臣民は無料で利用できます」って書いておいて、その理由がコレ? と。
たとえば郵便局(伝書院)。
▎ 帝都の伝書は、すべて記録される。差出人が誰であれ、届く。
書状はちゃんと届きます。届くし、記録されます。 帝都経由です。
たとえば銀行。
▎ 金貨は血より雄弁に語る。だが、死人には使えぬ。
預金は安全です。記録されますが。
たとえば鍛冶屋。
▎ 槌の音が止む日は、帝都が落ちる日だ。
鍛冶屋は元気に営業中です。止まったら帝都が落ちるらしいので。
たとえば称号の殿堂。
▎ 栄誉は帳簿に刻まれるが、血の代償までは記されない。
名誉は帳簿に残ります。それ以外は残りません。
これ、「皮肉が効いてて面白い」で済む話ではあるんですが、実は全部、設定上の必然があります。
帝都が君を「管理」する五つの理由
設計書には、新生帝国がアッシュヘルムを通じて臣民を管理する理由が、五つきっちり書かれています。
徴税 ── 五城塞からの上納は常に不足、帝都は税金で回すしかない
徴兵 ── 魔物討伐と防壁維持のための人員確保
疫病管理 ── 灰肺をはじめとする風土病があるので、宿屋の健康管理は公衆衛生でもある
禁制品取り締まり ── 旧帝国の錬金遺物・深淵機関の破片は厳禁
通信監視 ── 城塞間の密約や反乱の兆候を察知するため、郵便は帝都経由
つまり、宿屋が無料なのは慈善ではなく 疫病管理。郵便が記録されるのは便宜ではなく監視。金庫が金の流れを「記録」するのは安全のためではなく 徴税基盤。
帝都の施設は、鉄と血の秩序を回すための装置 として機能しています。
ただ、それでもこの灰色の秩序こそが、辛うじて人々の暮らしを保っている、という現実もある。——というあたりが、書いていて一番気持ちよかった部分です。
街の周りに広がるもの
アッシュヘルムは囲まれて生きています。街を出ればすぐに、こんな場所に行けます。
忘却の丘 ── 街の南東、なだらかな丘陵地帯。旧帝国時代は貴族の別荘地で、果樹園が連なる風光明媚な土地でした。灰に覆われた今は、灰野とスケルトンとレイスの巣窟。新人冒険者が最初に剣を振るう場所 です
忘却の墓所 ── 丘の地下、旧帝国時代の大規模墓所。「帝国第三葬儀区」というそっけない正式名称があるけれど、もう誰も覚えていない。世界樹が枯れて以来、ここの死者は冥府に還れない
アッシュヘルム採掘場(赤錆の窪み) ── 鉱石を掘る坑道。錆と魔物の棲み処
薄闇の回廊 ── 旧帝国の水路跡。地下を魔物が徘徊している
風車の丘(西方) ── 帝都への穀物供給を一手に担う農業拠点。灰に耐える品種改良穀物を作っている
つまり、あなたがこのゲームで最初の数時間プレイする「最初のフィールド」は、全部、帝都アッシュヘルムの周辺地ということになります。冒険者として一歩を踏み出した先に、灰に沈んだ旧帝国の残滓と、灰に適応した新しい魔物が、それぞれ微妙な距離感で広がっている。
ようこそ、アッシュヘルムへ
灰の積もる帝都に、4月29日19:00、最初の冒険者たちが降り立ちます。
宿屋では帝国が君の健康を管理し、郵便は記録され、金庫は預金を「記録」し、鍛冶屋は槌を打ち続けている。
そして街の南東には、灰の中に半ば沈んだ丘がある。
——剣を取る準備、できてますか?
アンケート募集中
引き続きアンケートを継続中です。
今日の23時59分までとなりますので、お手すきの際にご回答いただけますと助かります。
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灰ふる街の冒険者たち 明智
https://haifuru.com
