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男性介護への不満と期待

母は、息子ではなく、娘の私に介護をしてもらいたがる。男性による介護は何が違っているのだろう。あくまでも私個人の限られた経験に基づいて考えてみたい。

弟の場合

弟は母と同居している。私とひとつ違いの昭和40年代生まれだ。母が思うように動けなくなったとき、自分から「何をしたらいい?」と聞いていた。母が、洗濯、買い物、庭木の水やりなどを頼んだところ、それ以後は、仕事の傍らに全てを当たり前のようにこなすようになった。家電が故障しそうになれば、すぐに買いに走るフットワークの軽さもある。そして、自分がしてやっていると言い立てたり、見返りを求めるようなことはしない。これだけでも、弟はなかり母の役に立っている。

ただ、弟の場合、それ以上はない。どういうことかというと、弟の方から、母のニーズを察知して動くことは、まず考えられない。例えば、部屋がいくら汚れていても、頼まれなければ掃除をすることはない。母が、普段使っている何かが切れそうになっていても、それを察知して買ってくることは多分ない。母が寝室で咳き込んでいても、飲み物を用意して飲ませてあげることはなさそうだと思う。

母の方からも、弟の処理能力を超えるような頼み事ははじめからしない。しかも几帳面な性格のくせに、頼んだ事柄でさえ7~8割が達成できればよしとしている。洗濯ものの分別や下洗いなどは諦めているし、頼んだ買い物のうち2~3品が欠けていることは当たり前のこととして受け入れている。

そして、弟は、母がどんなに苦しそうにしていても、お笑い番組を見ることは欠かさないし、母が寒がっていても自分が暑ければかまわず冷房の設定温度を下げたりもする。

夫の場合

夫の父は、長い間認知長を患っていた。夫の実家は、歩いて行ける距離にあるが、義母は、自分の手に負えない緊急事態のほかは、全て自分で抱え込んでいたようだった。

夫は、夫なりに父親の認知症を心配していて、物忘れをサポートするためには大切な事柄をホワイトボードに書いたら良いといって、ホワイトボードを実家に取り付け、義母に予定を書き込むようにと言ってきかせたり、息子たちの顔を忘れないようにという趣旨だったか、孫の顔を見て和んで欲しいという意味だったのか忘れてしまったが、私たち家族の写真を義父の食卓の定位置から見えるように据え付けたりしていた。

それから、夫は何冊も認知症関連の書籍を読破した。そこで得た知識をもとに、「認知症になって記憶力が失われても、楽しかったとか悲しかったということは記憶できるようだから、なるべく楽しい雰囲気で過ごさせてあげれば、おだやかに過ごしやすい。」などとよく語っていた。夫は、義父のために、まだ保育園児だった娘を実家に連れて行って義父に会わせたり、義父の好きな果物を買って行ったり、「マイクロバブル洗浄機」なるもので義父の眼鏡をピカピカにしたりしていた。そして義母に認知症の書籍を読むようにと勧めていた。

義母は、義父の認知症が進んで徘徊が始まったとき、義父が迷子にならないようにと一緒に付いて歩き回り、行き先に困って、ときどき我が家に義父を連れて立ち寄っていた。義父は我が家に来ても、自分の息子のことさえ認識しているのかあやしい状態で、見当違いなことを言っていた。義母は、ワンオペ介護に疲れ果てて忍耐の限界に達しており、義父が見当違いなことを言うたびに、きつい言葉を返していた。義母は明らかに休息を必要としていた。夫はその義母に対して、そんなきつい言い方をするからお父さんがそうなるんだ、認知症には優しく接しないといけないんだ、とか、お父さんが可哀そうだとか言っていた。

女性は男性介護の何が不満なのか。

私の少ない経験とはいえ、多くの女性が目にし、不満に感じていることは似たり寄ったりではいだろうか。男性たちは良かれと思ってやっているのに。

これを微細に言語化してしまうことは簡単なのだが、一言で雑に言ってしまえば「私たちのやっていることとは違いすぎる。」ということだろう。何がと言えば、誰が主人公なのかということかもしれない。男性介護は、介護者が主人公になりがちで、介護を受ける側が置き去りにされやすいのだと思う。

男性介護への期待

同じ男性から見ると、弟や夫の例は、どんな風に見えるのだろう。よくやっていると賞賛するのだろうか。同じ例が、娘や妻による介護だとしたら、どうだろう。そして、もし男性自身が倒れたときに、このような介護を受けることになったとしたら、「人の世話になるんだから、それで上等だ」と割り切るのだろうか。

ともあれ、男性による介護は珍しくはなくなった。その中には、私など足元にも及ばないような方々もいる。男性が介護を担うことが当たり前になれば、男性たちの介護技術はより洗練されていくはずだ。男性は、女性よりも筋力が強く、体力もある。家庭内の介護に男性の力は必要だ。そもそも介護の手が多いことに越したことはない。そして、男性たちは、相手に入れ込み過ぎず、相手に振り回されず、自分のことも大切にしながら介護をすることが得意なのではないかと思う。

まずは弟に、夫に、もっと手を貸してほしいと声をかけようと思う。彼らのすることが少し的外れでも、あきらめないで、次はこうしてほしいと伝えよう。男の力も必要なのだから。

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