上海で絵本との暮らし
海外生活が長くなると、日本の本はすっかりKindleで読むようになった。年に一、二回日本へ帰国する際に、紙の本を上海へ持ち帰ることもあるが、その多くは仕事で使う専門書だ。
昔と比べると、文庫本や小説をKindleで気軽に読めるようになった喜びは大きい。海外に住んでいるからこそ、その便利さを強く実感している。
では、絵本はどうだろうか。
海外で子どもを育て、日本語を身につけてほしいと考える家庭にとって、絵本の存在は少し特別だ。画面で読むこともできるが、親子で同じ本を開き、絵を眺めながら言葉を交わす時間は、紙の絵本だからこそ生まれるものだと思う。
幸い、上海には「上海少年儿童图书馆(长风馆)」がある。子どものためにつくられた大規模な公共図書館で、館内には中国語や英語だけでなく、日本語を含む外国語の絵本や児童書も置かれている。明るく開放的な空間で、本を借りるだけでなく、子ども自身が「図書館へ行きたい」と思える場所になっている。
また、日本人ボランティアによって運営されている「上海ひまわり文庫」もある。海外にいながら日本語の絵本や児童書を借りられることは、日本人家庭にとってとてもありがたい。上海は、海外の都市としては日本語の本に触れられる環境に恵まれている方だと思う。
それでも、日本へ帰国するたびに、スーツケースへ何冊もの絵本を詰め込み、上海へ持ち帰っている。本屋で実際に表紙を眺め、娘の顔を思い浮かべながら絵本を選ぶことも、帰国時の楽しみの一つになった。
そして最近は、「童話館ぶっくくらぶ」という絵本の定期配本サービスを利用している。子どもの成長に合わせて選ばれた絵本が、日本から毎月届く仕組みで、海外発送にも対応している。
このサービスの魅力は、単に毎月絵本が届くことではない。流行している本だけではなく、長く読み継がれてきた作品や、自分では手に取らなかったであろう絵本と出会えることにある。
毎月どんな本が届くのかは、娘にとっても楽しみの一つになっている。親が本を選ぶだけでは、どうしても好みが偏ってしまうが、定期配本によって、親子の読書の幅も少しずつ広がっている。
Kindleによって、海外でも日本の本を自由に読める時代になった。それでも、子どもとの暮らしの中では、紙の絵本が持つ役割はなくならない。
上海の図書館で借りる絵本、日本から持ち帰る絵本、そして毎月届く絵本。それらに囲まれながら、私たちは上海で、日本語と絵本のある暮らしを続けている。
