【25】 関係に名前がつく前に | どうしようもなく、どっぷり浸かった恋の話
その日はフットサルについて行った。
「おつかれー」
「おー久々」
高校時代のサッカー部で、たまに集まっているらしい。
その中に混ざる感じで、連れて行ってくれた。
少しだけ、いつもと違う場所にいる気がした。
コートの中では、思ってたよりちゃんと“遊び”の空気やった。
走ってる姿を見ながら、普段との違いに少しだけ慣れていく。
「ナイスー!」
「それは無理やって!」
声を出して笑っている姿が、いつもと少し違って見える。
休憩に戻ってきた。
「寒ない?」
そう言いながら、コーヒーを渡される。
「ありがと」
自然すぎて、逆に少し困る。
一口だけ飲んで、またすぐに戻って行った。
そのやり取りを見ていた誰かが笑う。
「付き合ってるん?」
「いやいや」
「え、違うん」
笑って返した。
誰も深くは触れない。
また別の話が始まる。
でも、少しだけ心臓がうるさかった。
帰りの車。
「どう?まだ動きいけてたやろ?」
「いけてたいけてた」
さっきまでの騒がしさが嘘みたいに、普通の会話だけが流れる。
汗をかいたからと、そのまま家に行く流れになった。
それももう、珍しくはなかった。
さっきの一言だけが、浮いたまま残っていた。
その話になる。
「さっきさ、付き合ってるん?って言われてたやろ」
「うん」
「なんて言ったん?」
「いやいやって」
少し笑う。
信号で車が止まる。
「まぁ、見えるよな」
同時に手が重なる。
深読みしてしまいそうだった。
離れないまま、また車が走り出す。
考えるのをやめた。
部屋について、シャワーの準備をしながら、ふと言った。
「そういえば、サッカーいつにする?」
「私、磐田行きたい」
「え、ちょっと遠ない?」
隣で普通に笑っている。
「ちょっと待ってて」
部屋で1人になる。
ふと、思う。
——ほんまにこれ、このままでええんかな
携帯を見て、また閉じる。
画面の向こうにある名前を見て、
少しだけ、息が詰まった。
こんなことになるなんて、思ってもなかった。
ちゃんとしてるつもりやったし、そういうことは、自分には無いと思ってた。
なのに。
——そろそろ、ちゃんと考えなあかんよな
髪を拭きながら戻ってきた。
その後もしばらく部屋で過ごした。
何も言わずに過ぎていった。
それが少しだけ、気になった。
🎵 Garden / Sugar Soul feat. Kenji
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