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【30】 ちゃんとしてる人 | どうしようもなく、どっぷり浸かった恋の話

そのあとも、やり取りは続いていた。

彼氏との連絡も、いつも通り。
『今、電話いける?』
少しだけ画面を見たまま止まる。

『うん』
すぐに電話がかかってくる。

「おつかれ」
その声も、いつも通りだった。
「今日仕事どうやった?」
「今日はまだ落ち着いてたかな」

会話は続く。
仕事の話とか、どうでもいい話とか。

ちゃんと返しているはずなのに、
どこかだけズレていた。

「なんかさ」
少しだけ間があく。

「どうしたん?」
優しい声だった。

「…いや、でもやっぱ疲れたなと思って」
思ったことと違うことを言った。

少しだけ沈黙が流れる。

「無理してない?」
その一言に、少しだけ息が詰まる。

「うん、大丈夫」
嘘ではなかった。
でも、本当でもなかった。

「じゃあ」
「うん、また」

電話が切れる。
しばらく、そのまま動けなかった。

視界が、少しだけ滲んだ。

ちゃんとしてる人で、もう長く付き合っていた。
それでも今は、ちゃんとしてる方を選べない自分がいる。

あの人と結婚はないって、思ってる。
いつか終わりが来ることも、全部わかってる。

でも、その“ちゃんとしてる未来”より、
今の方が軽くて、楽で、戻れなかった。


🎵 なんでもないや / RADWIMPS


次回

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