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【23】 誰も気づいていない、でも気づかれてもいい | どうしようもなく、どっぷり浸かった恋の話

あの日から数日が経っていた。

連絡も、会う頻度も、前と同じまま。
それが逆に、少しだけおかしかった。

仕事が終わる頃、連絡が来る。
『今日行くやろ?』
『うん』

その日は、みんなで夜景を見に行くことになっていた。
前から決まっていた予定だった。

だんだんとメンバーが集まる。
「はい、これ」
「おーサンキュー」
車に忘れていたタバコを渡した。

誰も、特に気にしていない。
その普通さが、少しだけ怖かった。

大きな車に乗り込むと、いつも通りの空気が流れている。
誰かが話して、誰かが笑う。
何も変わっていないように見えた。

2時間程走って、夜景スポットに着く。
さすがに風が冷たかった。

「めっちゃ綺麗やな」
冬の夜景は、本当に見惚れる景色だった。

海まで続く都会の夜景を、
ただただ、ずっと見ていた。

その横で、少しだけ距離が近い。
触れていないのに、意識だけが残る。

ふとしたタイミングで、目が合いそうになった。
知らないふりをして、何事もなかったように、また視線を戻す。

誰にも気づかれていないはずだった。
何もなかったみたいに、会話の中に戻っていく。

夜景は、何も知らないまま綺麗だった。

帰りの車の中。
2列目の席で、たまたま隣になった。

夜景の余韻のまま、ぼんやり外を見ていた。

山道のカーブで、
肩が少しだけ触れた。

そのまま、
膝にかけた上着の下で、手を探した。
すぐに、手が重なった。

多分、周りは気づいていない。

何も言わずに、
ぎゅっと握った。

ぎゅっと握り返してきた。

何度か繰り返した。

視線だけは変えなかった。

会話は続いている。
いつも通りの空気。

でも、その一点だけが、いつもと違った。


「運転ありがとう」
「楽しかったな」
「また行こ」
そう言って、それぞれが帰っていく。

帰ったら通知が来ていた。
『スリルあったな』
『かなり』
『あの夜景、また行かなな』

気づかれているかどうかなんて、もう、どうでもよくなっていた。

ただ、まだ言葉にはできなかった。


🎵 紫陽花 / 離婚伝説


次回

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